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『人生がときめく片づけの魔法』〜読者を魔法にかける秘密を紐解いてみた

この本は、ある種の魔法かもしれない。

私は先日、近藤麻理恵さん著『人生がときめく片づけの魔法』の読書感想文を書きました。

疑ってかかった私が、本に書かれたやり方で実際に片付けるまでをとりあげたのですが…

なぜ、この本で片づけることができるのか

という疑問が、ムクムクと湧き上がってきたわけです、はい。

ということで、もう一度、本を開いてみることにしました。

『人生がときめく片づけの魔法』

言わずと知れた、大ベストセラー本。

この本のタイトルをご存じでなくても、「こんまりメソッド」と聞けば「あぁ、あのことね」と思い当たる方が多いのではと思います。


「なぜ、この本で片づけることができるのか」を考えたとき、一番最初に思ったこと。

それは…

この本、上手いな。

先日も少し触れましたが、『人生がときめく片づけの魔法』には、やわらかいタイトルとは裏腹に、強い言葉が並んでいます

特に、冒頭の部分で顕著です。

本書の「はじめに」は、こんな一文で始まります。

この本は、「一度片づけたら、絶対に元に戻らない方法」を書いた本です。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

強いですよね。「絶対に元に戻らない」と断言しています。


「はじめに」では、その後も要所要所で強い言葉が使われています。

さて、そんな私ですが、じつをいうと、お客様のリピーター率はゼロ%です。
(中略)
つまり、自分でスッキリ片づいた状態の部屋を維持できるようになってしまうため、リピートしてレッスンを受ける必要がない、ということです。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

「リピーター率はゼロ%」というパワーワードが使われています。

さらに読み進めていくと、

つまり、「片づけはマインドが九割」なのです

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

でも、私は自信を持って、断言したいと思います。
「誰にでも、片づいた部屋を維持することは可能です」と

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

「片づけはマインドが九割」「自信を持って、断言」という言葉も出てきます。

要するに、この本は冒頭のインパクトが非常に強いのです。

そして、第1章では、ちまたでよく聞く片づけの話が、次々と切り捨てられていきます

第1章の見出しの一部を抜き出しただけでも、それが分かります。

・「一気に片づけるとリバウンドする」にだまされないで!

・「毎日少しずつの片づけ習慣」では一生片づかない

・収納が得意な人ほど、モノをためる人になる

・性格別に片づけ法を変えても意味はない

・片づけは祭りであって、毎日するものではない

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

「えっ…いままで見聞きしてきたアレもダメで、これもダメなんだ」と、自分のなかの常識がひっくり返ります。

常識がひっくり返ると、何が起こるのかというと…

心に少し、揺らぎが生まれるのです。

本来なら入らないようなものが入り込む、スキマが生まれる」といってもいいかもしれません。

そして、揺らいだ心に畳みかけてくるのが、第1章を締めくくるこちらの文章。

清らかな空気が流れる静かな空間で、あったかいハーブティーをカップに注ぎながら、今日一日を振り返る至福の時間。まわりを見渡すと、壁には海外で買ったお気に入りの絵がかかっていて、部屋の隅にはかわいいお花が生けてあります。
(中略)

そんな暮らしを私もしてみたい。
そう思いませんか。

だいじょうぶ。正しい片づけ方を身につければ、誰だってできるのです。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

締めくくりに書かれているのは、理想の未来像と、「あなたにもできる」という励ましです。

どうやら、私が知っている片づけの方法は、軒並みNGらしい。

でも、この本に書いてあるやり方だったら、私が望んでいる未来を実現できるかもしれない…。

第1章は、読者の心をそんな方向に動かしそうな構成になっています。


「はじめに」から「第1章」までの流れをまとめると、以下のようになります。

冒頭で強烈なインパクトを残す
これまでの常識を否定する
理想の未来像を示す
末尾に、読者の背中を押す言葉を添える

あれ、これって…

怪しげなセールスレターの流れに近くない…?😱
(だから私、はじめて読んだときに疲れたのかな…)

でも、この本は、片づけの本なんですよね。

つまり、「売れること」や「最後まで読まれること」がゴールではないわけですよ。

この本のゴールは「読者が実際に片づけて、新たな人生を歩みはじめること」ともいえるわけです。
(少なくとも私が同様の本を書いたとしたら、「売れた」「最後まで読まれた」だけでは悲しいです…)

つまり、実際に読者に、片づけてもらわなければいけません

そして、読者の行動を促すことを念頭におくと、上手く設計されている本といえそうです。

『人生がときめく片づけの魔法』は、ここではおわりません。

全体でみると、第1章までは前置きで、本編は第2章からです。

本編のなかで私が特に「いいな」と思ったのは、第3章

第2章は「捨てる」方法の概要、第3章が「捨てる」方法の詳細(収納の話も一部あり)という印象ですが、第3章の内容が非常に具体的です。

たとえば、「服」に分類される色々なもの(トップス、ボトムス、靴下、服飾小物など)をどの順番でみていくのかが、事細かに記載されています。

つまり、書かれたとおりに取り組めば、モノが減っていく構成になっているのです。

そして、「捨てるのがもったいない服は、部屋着にしてもいいのかな?」など、モノを減らす過程で生まれる疑問にも、1つ1つ回答が書かれています。

本のなかで手順を細かく示し、疑問にも丁寧に答えていくと、どうなるかというと…

片づけをする過程で、読者が何度も、本の該当ページを読むことになるのです。

私も、片づける前に1回読み、片づける途中で3~5回は本に戻り、片づけたあとに念のためもう1回読み…と、5回以上は読みました。

読む回数が増えればその分理解が深まり、本に書かれたやり方を忠実に再現することにつながります。

そして、片づける過程で頭の中にチラつくのが、「はじめに」にでてきた「絶対に元に戻らない」「リピート率はゼロ%」といった、パワーワード。

他の人は全員できているのに、私だけ片づけに失敗してリバウンドするのはちょっと…

という、一種の強迫観念が、頭のなかでジワジワと広がっていきます。

この強迫観念も、「分からなくなったら、また該当のページを読もう」という心理に、一役買っているのかもしれません。


そして、第3章がおわりに近づくころ、再び強い言葉があらわれます。

片づけをしてモノを減らしつづけていると、あるとき、自分の適正量に気づく瞬間が訪れます。これは感覚ではっきりとわかります。
(中略)
私はこれを「適正量のカチッとポイント」と呼んでいます。不思議なことに、このカチッとポイント、一回通過すると、その後は絶対にモノが増えなくなります。だから、絶対にリバウンドしないのです。

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

…「えっ、カチッとポイント、あったっけ?

第3章を参照しながら一通りの片づけを終えたあと、読者は自分にそう問いかけることになります。

「カチッとポイント、あったわ」という場合は、「片づけ成功」のお墨つきを得ることができます。

一方で、「カチッとポイント、なかったな…」という場合は、まだモノを減らせるサイン。

後者だった場合は、「どこか、十分に片づけられていないモノはあったかな…」と再び自分のモノを振り返り、カチッとポイントがおとずれるまで片づけをつづけることになります。

こちらもまた、本に書かれたやり方の再現につながります。


「カチッとポイント」までモノを減らしたあと、第4章でとりあげられるテーマは、「残したモノを、どう収納するか」。

こちらも、一度ですべてを覚えることは難しいので、モノを収納する過程で、本の該当ページを何度も読むことになります。

そして、収納の面でも、本に書かれたやり方が再現されていきます。


最後の第5章に出てくるのは、片づけをおえた読者へのねぎらいと、片づけをしようか迷っている読者への励まし。

たとえば、以下のような見出しがならびます(一部抜粋しています)。

・部屋を片づけると、なぜかやりたいことが見つかる

・「片づけの魔法」で生きていく自信が生まれた

・「片づけると運気が上がる」は本当か?

・ときめくモノに囲まれた生活を送ると幸せになれる

近藤麻理恵『人生がときめく片づけの魔法』より

内容としては、過去に片づけに成功した方々の体験談が多くとりあげられています。

いわば、「お客様の声」のような感じですね(あれ、またちょっと怪しい雰囲気が…)。


全体をとおしてみると、読み物としては好みが分かれそうですが、実際の片づけで参照する指南書としては、きわめて優秀である印象です。

「魔法」「ときめき」といった単語や、ご自身やクライアントの経験則を根拠にした、断定的な表現。

それらは、万人受けはしないかもしれません。

しかし、「実際に片づけたい」と思う読者に対しては、とても丁寧に寄り添っている本といえそうです。

そして、その寄り添いが、実際に片づける際の挫折を減らし、片づけを成功に導いているのだと思います。

「いや~今回は実に楽しかったなぁ」と、本を閉じる私。

本の表紙をあらためてながめると、あることに気がつきました

あれ?
タイトルの一部だけ、文字の色が違う

そして、黒でない文字をならべてみると…

「きけ」

…え?

(片づけの魔法)効け」という願い

それとも、

(この本に書かれている内容を)聞け」という脅し

表紙にまで、仕掛けがあるとは。

片づけの魔法、(想像以上に)おそるべし

おわりに、「この本で片づけをしてみようかな」と思っている方へ、ちょっとしたアドバイス。

この本で片づけを成功させるために最も大切なことはおそらく、「アレンジをしないこと」です。

本書を読むかぎり、「モノ別に」「正しい順番で」「一気に、短期に、完璧に片づける」ことがポイントのようなので…

たとえば、「ちょっとぐらいなら…」と一部のモノを場所別に片づけたり、片づけの順番を入れ替えたりすると、本に書かれているほどの効果は出ないかもしれません。

「物は試し…」と、徹底的にだまされてみるのが、オススメです。

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