【保存版】スタートアップの人事制度の作り方
※※最後まで読んだ方へ「自走型組織のための、シンプルな評価制度テンプレート」を無料配布※※スタートアップの経営者に、最初にお伝えしたいことがあります。
人事制度は、後回しにしていい仕事ではありません。
「まずは事業を軌道に乗せるのが先」
「人事制度は、社員が増えてから考えればいい」
「今はそんなことに時間を使っている場合ではない」
この考え方は、よくわかります。
スタートアップの経営者にとって、事業の成長が最優先であることは、間違いありません。
でも、私が数十社のスタートアップを支援してきて、確信していることがあります。
事業の成長を支えるのは、人です。
そして、人が力を発揮できるかどうかを決めるのは、人事制度です。
評価の基準が曖昧なまま社員が増えると、「なぜあの人が昇格したのか」「なぜ自分は評価されないのか」という不満が、静かに、しかし確実に蓄積していきます。
報酬のルールが不透明なまま組織が拡大すると、社員同士の情報交換で「自分だけ損している」という疑念が生まれ、信頼が崩壊します。
そして、信頼が崩壊した組織では、どんなに優秀な人材を採用しても、定着しません。
事業の成長と、人事制度の整備は、前後の関係ではなく、同時に走らせるべきものです。
むしろ、社員が10名、20名、30名の、全員の顔が見える規模のうちにこそ、人事制度に真剣に取り組むべきです。
なぜなら、この時期に作った制度が、50名、100名、300名になった時の組織の土台になるからです。

土台がない建物は、大きくなればなるほど、傾きます。
そして、傾いた建物を、後から直すのは、新しく建てるよりも、はるかに難しい。
だからこそ、今、人事制度に真剣に向き合ってほしい。
今日は、その具体的な方法を、すべてお伝えします。
◆よくある相談と、共通する失敗
「人事制度を作りたいけれど、何から手をつければいいかわかりません」
「他社の評価シートを参考に、自分たちで作ってみました」
「大企業の制度を、うちに合うようにカスタマイズしています」
スタートアップの経営者・人事責任者の方から、本当によくいただくご相談です。
人事コンサルタントとして、5,000人を超える面接、数十社の組織支援、4名から100名超への垂直立ち上げを経験してきました。
その経験から、断言できることがあります。
スタートアップの人事制度は、"順序"を間違えた瞬間に、ほぼ確実に、失敗します。
そして、多くのスタートアップが、その順序を、正反対にしてしまっています。
以前も、スタートアップの人事制度について記事を書きました。
多くの方に読んでいただき、反響もいただきました。
今回は、その内容をさらに深く掘り下げ、私が顧問先で実際に行っている人事制度設計の全工程を、保存版としてお届けします。
これ一本で、スタートアップの人事制度設計の全体像が見渡せる記事を目指しました。
ぜひ、保存して、必要な時に読み返してください。

◆スタートアップが犯す、三つの典型的な失敗
まず、何度でもお伝えしたい、典型的な失敗パターンを、改めて整理します。
一つ目、大企業の制度を、そのままコピーする。
成功している会社の制度を真似れば、うまくいくような気がする。
でも、その制度は、その会社の文化、フェーズ、社員の顔ぶれに合わせて設計されたもの。
自社の生き物に、他社の服を着せても、絶対に合いません。
大企業の制度は、数百名、数千名の規模を前提に設計されています。
等級が10段階以上あり、評価項目が30個並び、報酬テーブルが何ページにもわたる。
これを30名のスタートアップに導入したらどうなるか。
管理コストが膨大になり、経営者も社員も制度に振り回される。
そして「こんなはずじゃなかった」と半年後に作り直す羽目になります。
二つ目、評価シートから、作り始めてしまう。
評価シートは、人事制度の"最終アウトプット"です。
そこから作り始めるのは、家を建てる時に、まず蛇口を選ぶようなもの。
土台も間取りも構造もないのに、蛇口だけあっても意味がありません。
「どの項目で評価するか」を決める前に、「この会社はどんな組織になりたいのか」を決めなければならない。
評価シートの項目は、「なりたい組織」から逆算されるべきものです。
逆算の起点がないまま作った評価シートは、必ず、現場で「これ、何のためにやっているんですか?」と聞かれることになります。
三つ目、人事制度を作った経験がないのに、自社製で作ってしまう。
「うちの会社に、一番詳しいのは、自分たちだ」
「外部に頼むのは、コストがもったいない」
「見よう見まねで、なんとかなるだろう」
こう考えて、自分たちだけで、制度を作り始める。
数ヶ月後、必ずこう気づきます。
「作ったけれど、現場で運用できない」
「経営の意図と、社員の受け取り方がズレている」
そして、また作り直す。このループにはまっていきます。
制度を作ることと、制度を機能させることは、まったく別のスキルです。
自社のことに詳しいのは経営者ですが、制度設計のプロフェッショナルではない。
料理が好きな人が、自分でレストランの厨房を設計しようとするようなもの。
料理の腕と、厨房設計の腕は、別の専門性です。
この三つの失敗に共通しているのは、"順序"を間違えていることです。
◆人事制度設計の全体像:6つのフェーズ
ここから、私が顧問先で実際に行っている、人事制度設計の全工程を、お伝えします。
人事制度の設計は、大きく6つのフェーズで進みます。
フェーズ1:経営ビジョン・人事ポリシーの確認
フェーズ2:現行制度の整理と分析
フェーズ3:市場分析
フェーズ4:新人事制度の基本方針
フェーズ5:等級設計・評価基準設計
フェーズ6:報酬設計
この順番を、絶対に守ってください。

※※最後まで読んだ方へ「自走型組織のための、シンプルな評価制度テンプレート」を無料配布※※
多くのスタートアップが、フェーズ5やフェーズ6から始めてしまいます。 「等級を決めたい」「給与テーブルを作りたい」「評価シートを整えたい」
でも、フェーズ1〜3を飛ばして作った制度は、砂上の楼閣です。
なぜなら、等級の根拠も、評価項目の根拠も、報酬の根拠も、すべてフェーズ1〜3で作られるからです。
根拠なき制度は、社員に「なぜこうなっているんですか?」と聞かれた時、経営者が答えられません。
答えられない制度を、社員は信じません。
それでは、一つずつ、詳しく解説していきます。
◆フェーズ1:経営ビジョン・人事ポリシーの確認
すべての出発点は、ここです。
このフェーズは、人事制度設計全体の"北極星"を作る作業です。 ここで作った文書に、この後のすべてのフェーズが、紐づいていきます。
このフェーズでやることは、三つあります。
1️⃣経営ビジョンと経営計画の言語化。
「御社は、3年後、5年後、どんな組織になりたいのか」 「どんな文化を大切にしたいのか」 「どんな社員が活躍する組織でありたいのか」 「逆に、どんな組織には、絶対になりたくないのか」
経営者と経営陣が、自分の言葉で、徹底的に言語化する。
数時間、数日、時には数週間かけて、経営者の中の"漠然としたイメージ"を、"明確な言葉"にしていきます。
ここで私が活用しているのが、7Sフレームワークです。
戦略(Strategy):事業の方向性と成長戦略
組織構造(Structure):組織図、階層、権限移譲の状態
システム(Systems):評価、報酬、情報共有の仕組み
価値観(Shared Values):全社で共有すべき価値観
スキル(Skills):組織として保有すべき能力
人材(Staff):現在の人材構成と将来必要な人材像
スタイル(Style):経営者のマネジメントスタイル、組織の意思決定の傾向
この7つの視点から、組織の現在地と目指す姿を整理すると、経営者の頭の中が、構造的に見えてきます。
経営者は、頭の中に、たくさんの想いを持っています。 でも、それを言葉にして外に出す時、「何から話せばいいかわからない」となることが非常に多い。
7Sフレームワークは、「この7つの箱を埋めてください」と伝えるだけで、経営者の頭の中が整理されていきます。
2️⃣人事ポリシーフレームワークの策定。
「私たちは、どんな人を評価するのか」 「私たちは、どんな行動を大切にするのか」 「私たちは、どんな振る舞いは受け入れないのか」 「私たちは、社員にどんな成長を期待するのか」
これを、経営者の言葉で、明文化する。
ここで最も重要なのは、ありきたりの言葉にしないこと。
「挑戦を大切にします」「誠実さを重視します」「チームワークを大切にします」
こうした言葉は、どの会社にも当てはまります。 でも、それでは社員の心に届きません。
なぜなら、「挑戦」の意味が、会社によってまったく違うからです。
あるスタートアップでは、「挑戦」とは「売上目標の120%を狙うこと」。 別のスタートアップでは、「挑戦」とは「失敗してもいいから新しい手法を試すこと」。 また別のスタートアップでは、「挑戦」とは「社内の誰もやりたがらない仕事に手を挙げること」。
同じ「挑戦」でも、具体的な意味が全然違う。
だからこそ、その会社独自の言葉を、生み出すことが重要です。
「うちの"挑戦"とは、具体的に、こういう行動のこと」 「うちの"誠実さ"とは、こういう場面で、こう振る舞うこと」 「うちの"チームワーク"とは、こういう時に、こう動くこと」
このレベルまで落とし込んで、初めて、人事ポリシーは機能します。
ここで言語化に苦労する経営者が非常に多いのですが、苦労すること自体が重要です。 簡単に出てきた言葉は、浅い言葉です。 苦労して絞り出した言葉にこそ、経営者の本気が宿ります。
3️⃣これらを一つの文書にまとめること。
7Sの整理結果と、人事ポリシーを、一つの文書にまとめます。
この文書が、この後のすべてのフェーズの"北極星"になります。 等級を設計する時も、評価基準を作る時も、報酬を決める時も、必ずこの文書に立ち返る。
「この等級構造は、北極星と一致しているか?」 「この評価基準は、北極星に書いたポリシーを反映しているか?」 「この報酬レンジは、北極星で定めた方針に沿っているか?」
この文書がない状態で先に進むと、設計のたびに「これでいいんだっけ?」と迷い、堂々巡りに陥ります。
フェーズ1は、地味で、時間がかかります。 でも、ここに時間をかけた会社と、かけなかった会社では、フェーズ2以降のスピードと品質に、圧倒的な差が出ます。
◆フェーズ2:現行制度の整理と分析
フェーズ1で目指す姿が明確になったら、次は、現状の把握です。
目指す姿(フェーズ1)と、現状(フェーズ2)のギャップが、人事制度で埋めるべき課題になります。
このフェーズでやることは、三つです。
1️⃣人材戦略パフォーマンス診断。
「今、組織の中で、何がうまくいっていて、何がうまくいっていないのか」
「社員のパフォーマンスに、どんな傾向があるのか」
「離職の傾向は?誰が辞めているのか?優秀な人が辞めているのか?」
「エンゲージメントの傾向は、どうなっているのか」
「部門間の連携は、うまくいっているのか」
現状を、データと肌感の両方で、把握します。
データだけでは見えないものがあります。
数字の上では離職率は低くても、優秀な人だけが辞めていることもある。
エンゲージメントスコアは高くても、特定の部門だけ不満が蓄積していることもある。
だから、データと、現場の肌感を、両方使います。
2️⃣現行の評価制度の骨子を整理する。
今ある評価の仕組み(あるなら)を、すべて棚卸しする。
「何を評価しているか」
「誰が評価しているか」
「どのタイミングで評価しているか」
「評価結果を、どう報酬に反映しているか」
「評価のフィードバックは、行われているか」
「社員は、評価基準を理解しているか」
スタートアップの場合、「制度がない」ことも多い。
その場合は、「制度がない状態で、実際にはどう評価・判断されているか」を言語化します。
「社長の感覚で昇給を決めている」
「目立つ人が評価されて、地味に貢献している人は見えていない」
「評価の基準が社長の頭の中にしかなく、社員からは見えない」
こうした暗黙のルールや、経営者の頭の中の基準を、表に出す作業です。
この作業は、経営者にとって、少し痛い作業になることもあります。
「自分の評価の仕方が、実はこんなに曖昧だったのか」と気づくからです。
でも、この気づきがあるからこそ、「だから制度を作らなければならない」という覚悟が生まれます。
3️⃣ロールモデルインタビュー。
これが、フェーズ2で最も重要な作業です。
社内で「この人は本当に優秀だ」と認められている社員に、インタビューをする。
「日々の仕事で、何を大切にしていますか?」
「お客様に対して、どんなことを意識していますか?」
「困難な場面で、どう判断しますか?」
「チームで仕事をする時、何を心がけていますか?」
「入社してから最も成長したと感じる瞬間は?」
「この会社で働き続けている理由は?」
ここから出てくる行動特性が、後の評価基準設計(フェーズ5)の土台になります。
優秀な社員の"暗黙知"を、"形式知"に変換する作業です。
以前の記事(「コンピテンシー評価の効果を3倍にする方法」)でもお伝えしましたが、「あの人は特別だから真似できない」と思われている行動は、実は「誰でもやろうと思えばできる、具体的な行動の積み重ね」であることがほとんどです。
才能ではなく、行動。
センスではなく、習慣。
特別な力ではなく、意識的な選択の繰り返し。
これを言語化することで、一人の優秀な社員の力を、組織全体の力に変えることができます。
インタビューする社員は、2〜3名で十分です。
でも、この2〜3名のインタビューが、評価基準の質を、劇的に変えます。
◆フェーズ3:市場分析
フェーズ3は、外に目を向けるフェーズです。
フェーズ1で「目指す姿」を描き、フェーズ2で「現状」を把握しました。
フェーズ3では、「市場」を知ります。
自社だけを見ていると、基準が偏ります。
市場を見ることで、自社の立ち位置が明確になり、制度設計の判断材料が揃います。
1️⃣競合調査。
同業界・同業種の会社が、どんな条件で、どんな求人を出しているか。
「うちの報酬水準は、市場と比べてどうなのか」
「競合はどんな等級制度を使っているのか」
「競合はどんなスキルや経験を求めているのか」
「競合の福利厚生は、どんな内容か」
ここは、そんなに難しく考える必要はありません。
同業界×同業種の求人を、最低でも5社程度見てみる。
それだけで、市場の水準が見えてきます。
転職サイトで、同職種の求人を検索し、年収レンジ、求めるスキル、福利厚生を比較する。
「うちのエンジニアの給与は、市場の中央値より15%低い」
「競合は、リモートワーク手当を出している会社が多い」
「この職種は、市場で取り合いになっていて、報酬を上げないと採用できない」
こうした情報が、報酬設計(フェーズ6)の根拠になります。
感覚ではなく、データに基づいた報酬設計をするために、必ずやってください。
2️⃣エンプロイージャーニーとEX(従業員体験)を見通す。
「社員がこの会社に入社してから、退職するまで、どんな体験をするのか」
採用→入社→オンボーディング→評価→成長→昇格→異動→退職。
この一連の流れを、社員の目線で設計する。
人事制度は、この流れの中の「評価」や「報酬」だけではありません。
社員が「この会社で働いてよかった」と感じるかどうかは、すべてのタッチポイントの総合体験で決まります。
例えば、入社初日のオンボーディングが雑だと、社員は「この会社、大丈夫かな」と不安を感じます。
評価面談が年に一度しかなく、フィードバックもなければ、「自分は見られていない」と感じます。
一つひとつのタッチポイントを、社員の目線で見直す。
この視点を持つことで、人事制度は「制度」ではなく「体験」として設計できるようになります。
◆フェーズ4:新人事制度の基本方針
フェーズ1〜3で、目指す姿、現状、市場が明確になりました。
フェーズ4では、これらを統合して、新しい人事制度の基本方針を決めます。
ここは、「設計の設計図」を作るフェーズです。
実際の等級や評価基準を作る前に、「どういう方針で設計するか」を固めます。
1️⃣人事ポリシーの正式策定。
フェーズ1で作った草案を、フェーズ2・3の分析結果を踏まえて、ブラッシュアップする。
「市場の水準を踏まえた上で、うちはこういう方針で行く」
「ロールモデルインタビューの結果を反映して、こういう行動を評価する」
「現状の暗黙の基準を、このように明文化する」
現実と理想のバランスを取りながら、最終的な人事ポリシーを固めます。
ここでよくある失敗は、理想だけで人事ポリシーを書いてしまうこと。
「全員がリーダーシップを発揮する組織」と書いても、現状がそうなっていなければ、社員は白けます。
現状を認めた上で、「ここから、こういう方向に進んでいく」という文脈を持たせることが重要です。
2️⃣キャリアパスの検討。
「この会社で、社員はどう成長していくのか」
「どんなキャリアの道筋があるのか」
「マネジメントコース以外に、専門職コースは必要か」
「どの等級から、マネジメントと専門職の分岐が生まれるか」
社員に見せられるキャリアパスがない会社は、優秀な人材に「この先が見えない」と思われ、離職に繋がります。
特にスタートアップでは、「マネジメントをやりたくないけれど、専門性を深めたい」というエンジニアや専門職の社員が多い。
マネジメントコースしかないと、「昇格=管理職になること」という一択になり、専門職の社員が行き場を失います。
3️⃣等級制度の基本方針を決める。
「グレードは何を対象にするか」
職能(能力)ベースにするのか、職務(仕事)ベースにするのか、役割ベースにするのか。
職能ベース:「何ができるか」で等級が決まる。日本の大企業に多い。
職務ベース:「どんな仕事をしているか」で等級が決まる。外資系に多い。
役割ベース:「どんな役割を担っているか」で等級が決まる。
スタートアップの場合、私は、役割ベースをお勧めすることが多いです。
なぜなら、スタートアップは一人が複数の役割をこなすことが多く、「この職務だけ」と限定する制度は、実態に合わないからです。
「営業もやるし、カスタマーサクセスもやるし、採用面接にも出る」
こうした社員が多いスタートアップでは、「職務」で縛るより、「役割」で括った方が、現実に即した等級設計ができます。
4️⃣プロジェクトにアサインする従業員の選定。
人事制度の設計は、経営者と人事だけでやるべきではありません。
現場のキーパーソンを、プロジェクトメンバーに加える。
各部門から1名ずつ、現場をよく知っていて、チームからの信頼が厚い人を選ぶ。
これによって、三つのメリットがあります。
一つ、「現場の実態に合わない制度」が生まれるリスクを減らせます。
二つ、プロジェクトに参加した社員が、制度の"伝道者"になってくれます。
三つ、「上が勝手に決めた制度」ではなく「自分たちも一緒に作った制度」という当事者意識が生まれます。
この三つ目が、実は最も重要です。
制度の内容がどんなに良くても、「自分たちの声が反映されていない」と社員が感じたら、制度は受け入れられません。
◆フェーズ5:等級設計・評価基準設計
ここから、具体的な制度設計に入ります。
フェーズ4で「設計の設計図」ができたので、いよいよ、実物を作っていきます。
まず、等級設計。
1️⃣職種・役職の取り扱いを決める。
営業、エンジニア、コーポレートなど、職種ごとに等級を分けるのか、統一するのか。
スタートアップの初期フェーズでは、職種ごとに分けすぎないことをお勧めします。
人数が少ないうちから細かく分けると、運用が煩雑になります。
「営業は5段階、エンジニアは6段階、コーポレートは4段階」
こういう設計をすると、管理が複雑になるだけでなく、部門間の比較が難しくなり、社員から「なぜ営業とエンジニアで等級の数が違うのか」という疑問が出てきます。
最初は全職種共通の等級を作り、組織が大きくなって職種ごとの専門性が明確になってきたら、分岐させる。
この段階的なアプローチが、スタートアップには適しています。
2️⃣等級の階層数を設計する。
私の経験では、スタートアップであれば、最初は4〜6段階で十分です。
少なすぎると、昇格の実感が得られない。
「入社してから辞めるまで、ずっと同じ等級」では、社員の成長意欲が湧きません。
多すぎると、等級間の違いが曖昧になり、社員も評価者も混乱します。
「等級3と等級4の違いが、よくわからない」という状態になると、等級自体の意味が失われます。
4〜6段階なら、各等級の違いを明確に定義でき、社員も「次の等級に上がるために、何をすればいいか」がわかります。
3️⃣等級定義の方針決定と詳細設計。
各等級で「どんなレベルの人がいるべきか」を定義する。
ここでも、ありきたりの言葉ではなく、自社独自の言葉で定義することが重要です。
汎用的な例:
「等級3:チームの中核として、自律的に業務を遂行する」
自社独自の例:
「等級3:担当クライアント3社以上を自走で運用し、四半期のリテンション率95%以上を維持。後輩への案件の引き継ぎを、マニュアルなしでできる」
後者の方が、圧倒的に明確です。
社員は「自分が今、等級3に該当するかどうか」を、自分で判断できます。
こういった定義を、フェーズ2のロールモデルインタビューの結果を使いながら、具体的に書いていきます。
「あのロールモデル社員が日常的にやっている行動」が、等級定義の素材になるんです。
4️⃣昇降格基準。
「何をすれば昇格できるのか」「どうなると降格になるのか」
ここが曖昧だと、社員は「何を頑張ればいいのか」がわかりません。
昇格基準は、可能な限り、定量と定性の両方で定義してください。
定量:「直近2期連続でA評価以上」
定性:「上位等級の行動を、すでに日常的に実践していること」
降格基準も、明文化しておくことが重要です。
使わないことが理想ですが、基準がないと、パフォーマンスが著しく低い社員への対応ができなくなります。
※※最後まで読んだ方へ「自走型組織のための、シンプルな評価制度テンプレート」を無料配布※※次に、評価基準設計。
1️⃣評価期間を決める。
半期(6ヶ月)が一般的ですが、スタートアップの場合、四半期(3ヶ月)での評価を取り入れることもあります。
事業の変化が速いスタートアップでは、6ヶ月前に立てた目標が、3ヶ月後にはもう意味をなさないこともある。
フェーズに合わせて、評価期間を柔軟に設計してください。
ただし、四半期評価には注意点があります。
評価の頻度が上がると、評価者(管理職)の負荷も上がります。
管理職が評価業務に追われて、本来のマネジメントができなくなる本末転倒が起きないように、評価プロセスはできるだけシンプルに設計することが大切です。
2️⃣評価項目の基礎設計。
以前の記事(「評価基準を細かくしすぎる会社の末路」)でもお伝えしましたが、評価項目は、多くても5つ程度。
5つなら、社員は何が大切かをすぐに覚えられる。
5つなら、評価者は負荷なく評価をつけられる。
5つなら、面談で一つひとつを丁寧に対話できる。
センターピンの考え方が、ここでも重要です。
本当に大切な3つ、5つに集中すれば、社員は自然と他の項目も満たしていきます。
3️⃣マネジメント手法・評価フレームの決定。
MBO(目標管理制度)にするのか、OKRにするのか、360度評価を取り入れるのか。
MBO:個人ごとに具体的な目標を設定し、達成度で評価する。シンプルで運用しやすい。
OKR:会社の目標と個人の目標を紐づけ、チャレンジングな目標設定を促す。Googleやメルカリが採用。
360度評価:上司だけでなく、同僚や部下からもフィードバックを受ける。多角的な評価が可能。
スタートアップの場合、最初はMBOをベースにして、組織が成熟してきたらOKRや360度を部分的に導入する、というステップが現実的です。
いきなりOKRを導入しても、「目標管理そのもの」に慣れていない組織では、混乱するだけです。
まずMBOで「目標を立てて、評価する」という基本動作を組織に根付かせてから、次のステップに進む。
4️⃣評価の構成比率。
業績評価、プロセス評価、スキル(能力)評価の割合を決める。
「結果だけ見るのか」「プロセスも評価するのか」「能力の成長も加味するのか」
これは、フェーズ1で策定した人事ポリシーから逆算して決めます。
「挑戦を評価する」会社なら、プロセス評価の比重を高くする。
結果が出なくても、挑戦したプロセスを評価することで、社員は安心して挑戦できます。
「成果で報いる」会社なら、業績評価の比重を高くする。
ただし、業績評価100%にすると、短期的な成果主義に陥り、中長期的な取り組みが軽視されるリスクがあります。
私のお勧めは、業績:プロセス:スキル = 4:3:3 か 5:3:2 あたりからスタートすること。
ここも、運用しながらチューニングしていく前提で、最初は大まかに決めて構いません。
5️⃣目標設定管理の設計。
会社目標→チーム目標→個人目標の紐づけ方を設計する。
個人の目標が、チームや会社の目標とどう繋がっているのかが見える状態を作る。
これが見えないと、社員は「自分の仕事が、会社にどう貢献しているのか」がわかりません。
「自分の目標を達成することが、チームの目標達成に繋がり、それが会社の目標達成に繋がる」
このラインが見える状態を作ることで、社員の仕事に「意味」が生まれます。
6️⃣評価プロセスと評価者の決定。
「誰が、いつ、どんなプロセスで、評価をつけるのか」
一次評価→二次評価→最終調整の流れを設計し、評価者間の目線合わせの仕組みも、この段階で組み込みます。
「一次評価は直属の上司、二次評価は部門長、最終調整は経営陣」
こうしたプロセスを明確にしておくことで、「誰が自分を評価しているのか」が社員に見える状態を作ります。
7️⃣懸念事項の洗い出し。
ここは、見落としがちですが、非常に重要です。
「この評価制度を導入した時、社員からどんな反発が出るか」
「管理職は、この制度を運用できるか」
「現行の給与体系とのギャップで、不利益を被る社員はいないか」
想定される懸念事項を、事前に洗い出し、対策を準備しておく。
制度導入後に「想定外」が発生すると、制度全体への信頼が揺らぎます。
「想定外をゼロにする」のは不可能ですが、「想定できることは全部想定しておく」ことはできます。
◆フェーズ6:報酬設計
最後のフェーズです。
多くのスタートアップが、ここから始めてしまいます。
でも、フェーズ1〜5を経てから、ここに来ることが、極めて重要です。
なぜなら、報酬は、等級と評価の「結果」だからです。
「どの等級の人に、どれくらい払うか」は、等級が決まっていなければ決められない。
「どの評価の人に、どれだけ昇給するか」は、評価基準が決まっていなければ決められない。
報酬設計を最後に持ってくるのは、この論理的な順序に従っています。
1️⃣報酬水準・報酬レンジの設計。
フェーズ3の競合調査で把握した市場水準を踏まえて、自社の報酬レンジを設計します。
「市場の上位25%に位置する報酬水準を目指す」のか、「市場の中央値に合わせて、その他の福利厚生や成長機会で差別化する」のか。
ここは、経営の方針と予算で決まります。
報酬だけで勝負しようとすると、資金力のある大企業には勝てません。
スタートアップが勝てるのは、「成長機会」「裁量」「カルチャー」「ストックオプション」といった、お金以外の価値です。
報酬水準は「市場で戦える最低ライン」を確保しつつ、それ以外の魅力で差別化する。
この考え方が、スタートアップの報酬設計の基本です。
2️⃣給与体系・給与テーブルの設計。
等級ごとの給与レンジ、昇降給のロジック、レンジテーブルを設計する。
ここで注意すべきは、等級と給与の紐づけを明確にすること。
「等級が上がったら、給与はこう変わる」
「同じ等級の中で、評価が良ければ、こう上がる」
「同じ等級の中で、評価が低ければ、こうなる」
これが社員に見える状態にしておく。
「なぜ自分の給与がこの金額なのか」を、社員が理解できる状態を作ることが、報酬への納得感の源泉です。
3️⃣手当の検討と設計。
住宅手当、通勤手当、資格手当、リモートワーク手当など。
スタートアップの場合、手当を複雑にしすぎないことが重要です。
手当の種類が増えると、管理コストが増える。
「あの手当はもらえるのに、この手当はもらえない」という不公平感の温床になる。
手当の条件を変更するたびに、全社への説明コストがかかる。
最初は、本当に必要な手当だけに絞る。
そして、組織が大きくなる中で、必要に応じて追加していく。
4️⃣移行時の扱い。
既存の給与体系から、新しい体系に移行する時、社員の給与が下がるケースが出る可能性があります。
ここで必要なのが、激変緩和措置です。
「新制度では等級が下がるけれど、給与は一定期間(例えば12ヶ月)据え置く」
「段階的に新制度の水準に近づけていく(例えば6ヶ月ごとに調整)」
移行時に社員の信頼を失うと、制度全体への信頼が崩壊します。
「前の方が良かった」
「新制度になって、損した」
こうした感情が社内に広がると、どんなに良い制度も、機能しなくなります。
ここは、丁寧に、慎重に、設計してください。
5️⃣賞与・インセンティブの設計。
固定賞与にするのか、業績連動にするのか。
個人成果に紐づけるのか、チーム成果に紐づけるのか、全社業績に紐づけるのか。
ここも、人事ポリシーから逆算です。
「チームワークを重視する」会社なら、チーム業績連動の賞与が適しています。
「個人の成果を正当に報いる」会社なら、個人業績連動のインセンティブが適しています。
私のお勧めは、全社業績連動と個人評価を組み合わせるハイブリッド型。
「会社が成長すれば、みんなの報酬が上がる」という構造を作りつつ、個人の貢献度で差をつける。
6️⃣ストックオプションの設計(必要な会社のみ)
スタートアップならではの報酬要素です。
ストックオプションは、「この会社の未来に賭ける」というメッセージになります。
付与基準、ベスティング期間、対象者の選定を、等級制度と連動させて設計します。
「等級4以上の社員に、入社時にストックオプションを付与する」
「等級が上がるごとに、追加付与を行う」
こうした設計にすることで、ストックオプションが「特別なご褒美」ではなく、「等級制度と連動した報酬体系の一部」として位置づけられます。

※※最後まで読んだ方へ「自走型組織のための、シンプルな評価制度テンプレート」を無料配布※※◆最初から細かく作りすぎない:フェーズ別の制度設計
ここで、非常に重要なことをお伝えします。
スタートアップの人事制度で、最も多い失敗は、最初から細かすぎる制度を作ってしまうことです。
これは、何度でも繰り返しお伝えしたい。
細かすぎると、運用が煩雑になる。
細かすぎると、事業環境が変わった時に、制度を更新する作業が膨大になる。
細かすぎると、社員がルールに縛られて、スタートアップの強みである「柔軟さ」が失われる。
人事制度は、組織のフェーズに合わせて、段階的に精度を上げていくものです。
50名を超えた時。
部門間の連携が複雑になり、「暗黙の了解」では回らなくなる。
ここで、等級定義の見直しと、評価プロセスの明文化を行う。
100名を超えた時。
経営者が全社員の顔を覚えられなくなる。
ここで、中間管理職の育成と、評価者研修の導入を行う。
150名を超えた時。
職種ごとの専門性が明確になり、キャリアパスの分岐が必要になる。
ここで、職種別の等級設計と、報酬レンジの見直しを行う。
最初から完璧な制度を作ろうとしないでください。
最初は、骨太で、シンプルで、運用しやすい制度を作る。
そして、組織の成長に合わせて、制度も成長させていく。
制度を「一度作ったら終わり」と思わないでください。
制度は、組織と一緒に、成長していくものです。
これが、スタートアップの人事制度設計の、最も大切な原則です。
◆自社独自の言葉を、生み出す
ここで、フェーズ1〜6を通じて、最も注意していただきたいことを、改めてお伝えします。
ありきたりの言葉で制度を作らないでください。
「主体性」「チャレンジ精神」「チームワーク」「誠実さ」
これらの言葉は、どの会社の人事制度にも並んでいます。
でも、社員の心には届きません。
「主体性」とは、具体的に、御社では、どんな行動を指すのか。
「チャレンジ精神」とは、御社の社員が、明日、何をすることなのか。
ここまで翻訳して、初めて、制度は"生きた言葉"になります。
その会社独自の言葉を、生み出すこと。
これは、外部のテンプレートでは絶対にできません。
経営者が、自分の言葉で、悩みながら、絞り出す作業です。
そして、この作業を伴走してくれるプロがいると、成果物のクオリティが、桁違いに変わります。
一人で考えていると、堂々巡りに陥ります。
「これでいいのだろうか」「他の言い方はないだろうか」と迷い続ける。
伴走者がいると、「その言葉、御社らしくないですね」「さっきおっしゃった、あの表現の方が、御社の文化を表していますよ」と、外からの視点でフィードバックをもらえる。
この伴走の有無が、制度の質を、決定的に分けます。

◆"生きた制度"にするために、忘れてはいけないこと
制度を設計しただけでは、まだ半分です。
どんなに美しく設計された制度も、運用が伴わなければ、"死んだ制度"になります。
設計した制度を、"生きた制度"にするためには、三つのことが必要です。
1️⃣評価者研修を必ず行う。
以前の記事(「評価制度は、評価者研修で9割決まる」)でもお伝えしましたが、評価制度の成否は、評価者の力量で9割決まります。
目標設定の方法。
ハロー効果、中心化傾向、直近効果などの認知バイアスの理解。
フィードバックの仕方。
面談の進め方。
これらを、評価者に体系的に教える。
そして、1度やれば終わりではなく、定期的にチューニングを行う。
半期に一度、評価者同士で集まり、目線合わせをする。
この継続的なチューニングが、制度を「生き続ける」ものにします。
2️⃣社員に「なぜこの制度なのか」を丁寧に伝える。
制度の内容を説明するだけでは、社員は納得しません。
「なぜ、この評価基準なのか」→「フェーズ1で言語化した人事ポリシーに基づいています」
「なぜ、この等級構造なのか」→「ロールモデルインタビューの結果を反映しています」
「なぜ、この報酬レンジなのか」→「競合調査の結果を踏まえて設計しています」
すべての"なぜ"を、経営者の言葉で、社員に伝える。
ここを省くと、社員は「また上が勝手に決めたルール」として、制度をシラケた目で見ます。
フェーズ4でプロジェクトに参加した社員が、ここで"伝道者"として機能します。
「自分たちも一緒に作った制度だ」と語ってくれる社員がいることで、制度の浸透スピードが、まったく変わります。
3️⃣早くから評価システムを導入する。
社員が"どういう行動が評価されるのか"を、日々、目で見て理解できる状態を作る。
経営者の頭の中の基準が、社員全員の日常に、"見える形"で存在するようになる。
紙やスプレッドシートでの評価管理は、30名を超えると限界が来ます。
評価の記録が分散し、過去の評価との比較ができず、評価者の負荷が膨大になる。
早いフェーズから評価システムを入れておくことで、制度の運用がスムーズになり、社員の評価に対する透明性も高まります。
これが、文化を組織に根付かせる、最も効果的な方法です。
◆スタートアップ経営者・人事責任者の方への、最後の三つの問い
最後に、三つだけ、問いを残します。
御社の人事制度は、"なりたい組織"の言語化から、始まっていますか?
御社の人事ポリシーは、ありきたりの言葉ではなく、御社独自の言葉で書かれていますか?
御社の人事制度は、最初から細かく作りすぎず、フェーズに合わせて成長させる設計になっていますか?
この三つに、自信を持って答えられないなら、一度、立ち止まって、フェーズ1から見直してみてください。
人事制度は、スタートアップの未来を、静かに、しかし確実に、決めていく設計図です。
正しい順序で、経営者の言葉で、シンプルに、そして段階的に。
この原則を守れば、御社の人事制度は、必ず、"生きた制度"になります。
◆"SAIKA(サイカ)"のご紹介
この想いを形にするために、当社ベーシックコアでは、評価制度システムを開発しました。
名前は、"SAIKA(サイカ)"です。
コンセプトは、"才能をひらき、組織を強くする"。
社員一人ひとりの中に眠っている才能を、正しく評価し、育て、開花させる。
そして、その一人ひとりの才能が組み合わさって、組織そのものが強くなる。
2026年10月まで、10社限定で、SAIKAの無償提供を行っています。すでに6社が決定しています。残り4社です。
スタートアップの経営者に、本気で人事制度と向き合ってほしい。
その最初の一歩を、私たちが支援します。
◆最後まで読んでくださった方への、特別プレゼント
ここまで読んでくださり、本当にありがとうございます。
この記事でお伝えした「順序」を、そのまま実践できるテンプレートをご用意しました。
「自走型組織のための、シンプルな評価制度テンプレート」
中身は、三つのシートです。
一つ、組織SWOT。事業ではなく「人と組織」に絞って、自社の強みと弱みを言葉にするシート。フェーズ2の現状分析に当たります。
二つ、骨子を決める10の質問。なぜ今作るのか、誰を評価したいのか、何を評価するのか。私が顧問先で実際に使っている質問です。フェーズ1と4に当たります。
三つ、評価シート見本。30名規模の会社向けに、成果と行動の2軸だけに絞った見本です。フェーズ5の最終アウトプットに当たります。
すべてGoogleスプレッドシートで、コピーしてすぐ書き込めます。
経営陣2〜3名で、合計3〜4時間あれば一周できる設計にしています。
受け取りは、下記ページからどうぞ。
フォーム送信後、すぐにメールでお届けします。
▼テンプレートの受け取りはこちら
評価表から作って、しっくりこなかった方。
幹部に任せたいのに、結局自分が決めている方。
まずこの三つのシートを、幹部の方と一緒に埋めてみてください。
ここまでお読みいただき、ありがとうございました。
◆ここから、本当に伝えたいこと
このようなお悩みはありませんか?
評価制度を作ったものの、うまく運用できていない
評価にばらつきがあり、公平性に課題を感じている
社員の成長につながる人事制度を構築したい
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