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3話 一人分しかない洗濯物

その話の後のご飯は、どんな味だったのかさえ思い出されへんかった。

食事の後片付けが済んだら、自分の部屋に入った。

なんで、悠貴は何も話してくれへんのやろ。
でも、ここでとやかく言うのも、逆効果な気がする。

でも、誰かに話を聞いてほしい。

私は娘の未映子に電話した。

「あ、お母ちゃん。どないしたん?」

相変わらず能天気な声が聞こえる。

「あんな、悠貴帰ってきてるねんけど…」

「ふーん、ほんで?」

「それでな、会社やめたらしいねん。」

「えーっ、ほんまにー?あそこ給料ええのにな。」

未映子は、案外驚いてはいないような口ぶりだった。

「それで、離婚もしたらしい。」

「へぇー。それはビックリやね。」

未映子はこれにはちょっと驚いたみたいな口調やった。

「なんでやめたん?」

「それが、まだ教えてくれへんねん。」

「そうなんや。」

「それで、そこでずっと暮らすん?」

「わからん、まだなにもわからん。」

私が答えると、

「もうすぐ夏休みやし、私も家に帰ろうかな?」

やっぱり能天気な答えが返ってきた。

お風呂から出て、また自室に戻ったら電話がかかってきた。

スマホの画面を見ると、はるみさんからやった。

「もしもし。」

ちょっと慌てて電話を取った。

「あ、お義母さん。さっきお義姉さんからお電話いただいて連絡したほうがいいかな、と。」

「ああ、そうなんや。どないしたん?悠貴会社やめたんやて?」

「はい。それも突然。」

はるみさんは言った。

「なんでやめたか聞いた?」

私が尋ねる。

「急に辞めることにした、って言って、理由も何も言ってくれなくて…」

「そうなんや…ごめんな。」

「いいえ、お義母さんが謝ることじゃないです。でも、あんまり急なことだから、私もちょっと腹が立ってしまって。」

「そらそうやわ。」

「私はパートに出かける前だったからそのまま出かけたけど、帰ってきたら、もっとちゃんと話をしようと思っていたのに、悠貴さん、勝手に離婚届を書いておいて出ていったんです。」

「あー、そうなんや。」

これは完全に悠貴が悪い。

でも、このはるみさんの話し方を聞いていたら、もしかしたら別れずに済むのかもしれへん、と頭の中に希望が浮かんだ。

「だから、お金のことも心配だし。
とりあえず私も今のパートをもう少し増やしてもらって、フルタイムに変えてもらおうと思って、今までお店で店長にお話してたんです。」

はるみさんが言った。

「ごめんね。これは悠貴が悪いわ。私もなんでやめたか聞いても教えてもらわれへんかってん。」

「悠貴さん、今帰ってるんですよね?こちらの予定が落ち着いたら、私も大阪に行きます。」

はるみさんは言った。

「わぁ、来てほしいわぁ。

健斗とかなちゃんに会いたかってん。

はるみさんともお話ししたかってん。」

私は言った。

「私も、大阪好きだから、また行きたかったんです。」

「今年も一緒にユニバ行けたらええな。」

少しだけ電話の向こうで、はるみさんが笑った気がした。

私もつられて笑った。 さっきまで重たかった胸の中に、小さな灯がともったような気がした。

#小説 #創作 #親子 #熟成下書き


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