保証のない音楽を。/UNISON SQUARE GARDEN 22周年
2026年7月24日は、UNISON SQUARE GARDENの結成22周年。になるはずだった日。
類稀なる演奏スキルで日本の音楽史に名を刻んだそのスリーピースロックバンドは、7月15日のワンマンライブ「Sentimental Period」をもって「ドラム鈴木貴雄の脱退・ベース田淵智也の(一部を除いた)活動休止・バンドの現体制終了と活動休止」という、まさに大きな区切りを迎えることになった。
これは、そんなバンドに惚れ込んだひとりのファンが綴る、過去の記録を残すための、私の今を刻むための、そしていつかの未来で復活した時に思いを馳せるための独り言です。
過去:田淵智也という男
2019年冬。とあるサークルさんからご依頼いただき、私がUNISON SQUARE GARDENとどういう流れで出会い、どういう過程でファンになったのか……という文を寄稿する機会がありました。過去編はそれを土台にしつつ、付け足したり脱線したりしながら書いていこうと思います。
最初の接点は2012年の夏。アニメオタクくんをしていた当時の私は、ほとんど全ての深夜アニメをテレビで見ていました。高校2年生にして将来が危ぶまれる感じもありますが、ともかくアニメ漬けの中で、映画『TIGER & BUNNY -The Beginning-』のCMに出会います。
同年9月22日に公開されたその映画の主題歌は、
UNISON SQUARE GARDENが歌う『リニアブルーを聴きながら』です。
漠然と「いい曲だなぁ」と感じた私は、曲を聞くためだけにCMをスキップせずに見ていました。ただ、当時はあくまで「タイバニという作品の曲」であり、曲とアーティストを紐付ける習慣や発想がなかったです。
そこから1年が経ち、ますます立派なアニメオタクくんになっていた私は、視聴している全てのアニメの主題歌CDをTSUTAYAでレンタルするようになっていました。成長とは恐ろしいものですね。小田急線沿いのTSUTAYA、本当にありがとう。
しかし唯一、常に在庫切れでレンタルできなかったのが、2013年秋に放送された『夜桜四重奏~ハナノウタ~』のOP主題歌でした。毎週のように在庫検索をしていたおかけで、「UNISON SQUARE GARDEN」という、TOEIC410点マンには長すぎたはずのその名前を覚えることになります。
そしてアニメ放送が終わった2014年1月、ついに在庫を見つけてCD音源を聴くことに。そこで初めて、Bメロ前にある
I shall remember I wanna do, I shall remember
というメロディラインと、戸松遥さんが2012年にリリースしていた名曲『Q&Aリサイタル!』の
Someday I really really send it, precious for you!
というメロディラインが少し似ていることに気付きました。
どういうこと?と思って色々と調べると、どうやら共通点としては「作詞作曲:田淵智也」というものがある。つまりこの田淵智也なる男がキーらしい。
さらに調べる。なるほど田淵さんはUNISON SQUARE GARDENのベーシストであり作詞作曲を担当しているのね。あ、ほかにも色々な人に楽曲提供しているのね。ふーん……って、豊崎愛生さんの『letter writer』も!?俺にとって最も大切な曲である、豊崎愛生さんの『letter writer』も!?
ただ、その時点では「作詞作曲」という概念があまりわかっておらず、「よくわかんねぇけど多分これは何かが起きているぞ……」という程度でした。
しかしここで終わりではありません。そのわずか4ヶ月後のことです。
アニメ『魔法科高校の劣等生』の主題歌『Rising Hope』でLiSAにハマった私は、大学生になって使える時間とお金が増えたのをいいことに、TSUTAYAで LiSAの全CDを借りました。アニソン以外も!借りられる!だって大学生だから!
全体をざっと聴く中で私は、「LiSAの曲の中で好きなのがいくつかあるなぁ」「そういえば、これらの作詞作曲は誰なんだろう」と思い立ちます。結果がこれ。
・『妄想コントローラー』作詞:LiSA/作曲:田淵智也
・『confidence driver』作詞:LiSA/作曲:田淵智也
・『ジェットロケット』作詞:田淵智也/作曲:田淵智也
・『ROCK-mode』作詞:LiSA、田淵智也/作曲:田淵智也
・『now and future』作詞:LiSA/作曲:田淵智也
・『best day, best way』作詞:田淵智也/作曲:田淵智也
・『say my nameの片思い』作詞:LiSA、田淵智也/作曲:田淵智也
・『Rising Hope』作詞:LiSA、田淵智也/作曲:田淵智也
ぜ〜〜〜〜〜〜〜んぶ田淵智也!過不足なく全部!!
例の『Q&Aリサイタル!』と『letter writer』の人!UNISON SQUARE GARDENの人!!
という流れで、一気に私の中で「田淵智也」の存在感が大きくなってきた(というか、大きかったことに気付かされた)のでした。
過去:2015.7.24
その後USGの全アルバムをTSUTAYAで買い(なお中古)(若造や、TSUTAYAでは中古CDを1枚200円とかで売っていた時代があってのう……)、何やねんこれ全部ええやんとなり、晴れてUSGにハマることになった私ですが、ライブの抽選は全て外れてしまっていました。当時のUSGはファンクラブが無かったから、倍率も凄く高かったのかもしれない。
そんな私が初めてUSGのライブに参加したのは2015年7月24日のこと。そう。バンドの結成11周年当日に開催された日本武道館でのワンマンライブ、"fun time 724" でした。
(チケット代5400円て。時代ィ!)
その日は午前中にバイト、午後にライブというスケジュール。
友達(これは大学時代の唯一の友達のことを指します)が当ててくれたそのチケットを握りしめ、ることなく家を出た私は、あろうことか家の鍵も忘れ、そして親はすでに出社していて家には不在。当然のように鍵はかかっています。詰ん……でない!東京に行けば一人暮らしの兄がいるじゃないか!
ということで、電車を乗り継ぎ兄の元へ行き、実家の鍵を受け取り、家に戻り、今度こそチケットと鍵を握りしめ、武道館に向かいました。これこそ「超天変地異みたいな狂騒」ってワケよ。慣れたくはないが。
そして南西スタンドの一番上の席へ。ライブ開始!最もステージから遠い席から見た景色は圧巻で、今でも鮮明に覚えています。
それまで参加してきたアニソン系のライブとは世界が違うというか、カルチャーショックを受けた感じがしました。
後にそれはUSG特有のものである、ということを知るわけですが、とにかく観客がバラバラで、一体感という概念が存在しなかった。ひとりひとりが好きなノリ方をしているし、飛ぶ人もいれば、クラップする人も
いれば、目を閉じて静かに聴く人もいる。そしてその中心には、職人のように演奏と歌を届ける3人がいる。
これが本当の音楽なんだ、これが本当のライブなんだ。汗だくになりながら、そう理解させられました。
曲が好きなのは元々わかっていて、ライブのパフォーマンスやオーディエンスのスタイルも自分の価値観にマッチしていた。それだけでもエラいことではあるんですが、その以上に私の胸に響いたのは田淵さんのMCでした。
11年間、君が好きなロックバンドは、たくさんの人に愛される曲も、世の中が求める曲も書いてこなかったし、これからもそういうものを書こうとして音楽をやることはないと思います。
なので、例えば君が、親や友達に勧めるとか、それ自体めちゃくちゃ嬉しいことなんだけれども、だいたいの確率でロクなことにならないと思うので期待しないでほしいです。これは僕が保証します。
だけど、君が好きなロックバンドは、他の誰がなんと言おうと、絶対にカッコいいから自信持っていいよ。これも僕が保証します。
付いてきてほしいとか思ってないので、これからも、君は好きな音楽で、気が向いたときに、我々のライブに遊びに来てくれれば嬉しいと思う。
今日は楽しかった!
この距離感や突き放し具合が、それまで私が応援してきた人たちとは全く異なっていて、だけどそれが心地よいもので。この言葉を聞いた時に、私の中での価値観がガラリと変わりました。こういうのもアリなんだ、俺はこういうのが好きだったんだ、と。
ライブ後すぐに(ではない)(実際はクレジットカードの限度額がリセットされるのを待った)(金欠ムーブ)、ファンクラブ「UNICITY」に会員登録しました。
それ以降はツアーのどこかしらに必ず参加したり、対バンやフェスにも行ってみたり、CD(新品だよ)を買ったり、ラジオを聞いたり、インタビューを読んだりと、UNISON SQUARE GARDEN漬けの日々を送るようになります。
(これを機に、これまで参加してきたライブをまとめて書いておきたい……という気持ちだけ置いておく……)
過去と現在:2026.7.15
そして2026年7月15日、幕張メッセ国際展示場。UNISON SQUARE GARDEN LIVE 2026「Sentimental Period」が開催されました。
4月27日の報せから3ヶ月が経ち、その事実を受け止めながらも、ライブがどんな雰囲気になるのかは想像することは全くできないまま、当日を迎えました。
スリーピースバンドで、メンバーの入れ替えが全く無いまま22年。なかなか稀有な事例だと思う。奇跡だとすら思う。その奇跡に出会えたことを嬉しく思っているし、奇跡は永遠ではないことを残酷だと恨んでもいる。
悔しいなぁ。けど、受け止めて生きていくしかないもんなぁ。それが彼らの音楽に魅せられた私ができる唯一のことなんだろうな。
UNISON SQUARE GARDENは、斎藤宏介と田淵智也と鈴木貴雄の3人はいいバンドだった。かっこよかった。あと3ヶ月、その存在を噛み締めます。
15時過ぎに京葉線に乗るとバンドのグッズを身につけた人がたくさんいました。やっぱデカい会場でやるだけあるなぁ、とか、なんかみんな緊張してるように見えるなぁ、とか、そういうことを思ったのを覚えています。
海浜幕張駅に降り立ち、幕張メッセに着いてからそれはさらに色濃くなって、当然なんだけど明らかに普段とは違う雰囲気が会場を支配していました。

そんな中で始まったラストライブ。公演から約2週間が経ちましたが、今この胸にある感情としては、当日に書いたものからあまり変化はありません。
「終わり」であることを随所から感じられたのはもちろんとして、私としてはそれ以上に、「これで終わりではない」ことを繰り返し伝えてくれたセットリストだったと受け取っています。
もしかしたら私の願いが補正をかけ、そういう歌詞を敏感に拾い上げていただけなのかもしれないけど、公演後の田淵さんのインスタ投稿を見る限りそんなにズレてはいないような気もする。そうであってほしい。
なのでまぁ、わりとカラッとした気分ではあります。
私の人格形成に深く関わり、私の人生を華やかに彩ってくれた、世界で唯一かつ最高のバンドだったし、今夜その歴史に区切りがついたのも事実ではありますが、私の人生は続くことも事実で、彼らの人生が続くことも事実で。生きてりゃどっかで会えるだろというのも現実にしたいもんですなぁ。生きないとねぇ。
(中略)
ありがとう、この3人のUNISON SQUARE GARDEN!そしてまた会える日まで、互いに健康で生きましょう。
さすがはラストライブで、色々な媒体がレポート記事を掲載していました。でも、どれもあんまりしっくり来なかったんですよね。ライターさんの腕が悪いということを言いたいのではなく、私にとってのUSGは私だけのものなのだと。
他の方がどれだけ丁寧に言葉を紡いだとしても、それは揺るがないものだと分かったし、私の中だけにあるその美しさを信じることができた。そんなことを最後に実感できたのはとても嬉しかったです。あぁ、俺はちゃんとバンドに向き合ってこられたんだな、ずっとそうなりたかった「俺とUNISON SQUARE GARDEN」という1対1の関係になれたんだな、と思えたというかね。
だからまぁ、最後に「アンコール!」と叫んだ人のことも、「貴雄の事務所に斎藤と田淵も移籍してほしい」と願う人のことも、ウンウンそれが君にとってのUSGだよねと凪いだ気持ちで放っておくことができています。私はそうはしないけど、それもまた世界の一部なんだよ。だから世界は楽しいんだよ。
「多様性を認めよう」とかそういう聞き飽きた話ではなくて、本当の音楽ってそういうもんだろ、というのをUSGに教えてもらったから。11年前のあの日、バラバラで、一体感というものが存在しなくて、でもそれぞれがそれぞれに最高の踊りをしている景色を見て学んだから。
ああ それでもふぞろいに出揃った 心ステンドグラスはキレイだろう?
ってワケよ。
現在:生活とUSG
話は少し変わり。そんな私にも家族がいます。妻と、2歳になった息子。
妻は元々バンドの名前と代表曲は知っている程度だったのですが、何度か一緒にライブに行くうちに、サブスクで聴くようになりました。大抵は女性ボーカルの曲ばかり聴いているものの、USGだけは例外で好きみたいです。
2歳になった息子は、昼寝の時にUSGの曲を流さないと寝てくれないほど。まぁ……今より小さかった頃にあまりに寝てくれず、親の精神安定のためにUSGの曲を子守唄がわりに流していたのがキッカケではあるのですが。
その影響で、息子は色々な曲を覚えています。というか覚えてしまいました。以下、覚えた順に。
・ぷーぱっち:『シュガーソングとビターステップ』のこと。イントロのドラムをボイスパーカッションのように口ずさんでいたら、そういう名前がつきました。昼寝前の定番曲であり、バンドの代名詞であり、Spotifyの代名詞です。「ぷーぱっちして」と要求し、バンドのポスターを見たら「ぷーぱっち、おなじ」と言い、Spotifyのアイコンを見たら「あ、ぷーぱっちだ」と言います。さすがは大ヒット曲だぜ。
・ひっとーよ:『Invisible Sensation』のこと。サビ中の「咲き誇れ美しい人よ」の部分から。息子が一番よく歌うのはこの曲かもしれない。「ひっとーよ、のまま、せんせーしょ!たなまま、むーみね、めっそーれ!」みたいな感じ。
・じゃじゃじゃーん:『シャンデリア・ワルツ』のこと。イントロ冒頭のギターから。Bメロのコーラス「あっあーあ」と、サビ頭の「あーろーぐーばっ」は歌います。
・ぷるぷる:『春が来てぼくら』のこと。イントロ冒頭のストリングスから。歌いはしないけど好きみたい。ちなみに「まばたきの数だけ写真になれ」という歌詞が子育て中の親に刺さりすぎる。
・じてんしゃ、おー:『センチメンタルピリオド』のこと。Aメロの「自転車に飛び乗って空を探したけど」の「自転車」「ど」から。そこから取るんだ。
・どどどど:『君の瞳に恋してない』のこと。イントロ冒頭の演奏から。Dメロの「じしんがーはやってー」だけ歌います。
・お、ば、べ、し、し、せ、なーなーなー:『桜のあと (all quartets lead to the?)』の冒頭「All quartets lead, lead to...? Say la, la-la, la-la, la」をおもむろに歌うときがある。
かつて、偶然の気づきが重なってひとりでたどり着き、ひとりで好きになったバンドを、今はこうして家族みんなで楽しめていることがとても幸せだなと思います。
子育てテーマソングこと『春が来てぼくら』以外にも、人生のテーマソングになっている曲はいくつかあります。今はこの辺りかなぁ。
諸問題、解明のチケットは、誠心誠意
全昼夜 信念を鳴らせ
未来:きっと、再来年頃
「保証」。これが今の私にとっては大事な概念で。
11年間、君が好きなロックバンドは、たくさんの人に愛される曲も、世の中が求める曲も書いてこなかったし、これからもそういうものを書こうとして音楽をやることはないと思います。
なので、例えば君が、親や友達に勧めるとか、それ自体めちゃくちゃ嬉しいことなんだけれども、だいたいの確率でロクなことにならないと思うので期待しないでほしいです。これは僕が保証します。
だけど、君が好きなロックバンドは、他の誰がなんと言おうと、絶対にカッコいいから自信持っていいよ。これも僕が保証します。
付いてきてほしいとか思ってないので、これからも、君は好きな音楽で、気が向いたときに、我々のライブに遊びに来てくれれば嬉しいと思う。
今日は楽しかった!
解散じゃないのでまあ生きてれば会えるでしょう。
数年後かもしんないし1ヶ月後かもしんないんですが、保証はございません。
キーワードは死なないことです。
ちょっと信じてみてはくれませんか 保証がないのは本当だけど 僕の手握っていいから
保証はないんだよ。全ては終わるし、なくなるし、人はいつか死ぬ。そういう割り切りと突き放し方が心地いいからこそ、私は保証のない音楽を信じてみたい。そう思っています。
間違いなく私はUNISON SQUARE GARDENのファンなんだけど、たぶん私はUNISON SQUARE GARDENを応援していません。勝手に受け取って、勝手に楽しんで、勝手に信じているだけ。それが気持ちいいんだよな、辞められないんだよな。頼むから、お願いだから辞めさせないでくれよな。
だからきっと、また、再来年頃にすれ違うとしましょう。UNISON SQUARE GARDENが歩んだ22年間に、心からの祝福を。
