落合陽一教授のハイスピード講演まとめ
過日某所で落合陽一くんの筑波大学教授就任祝賀会が開催された。門下生の小澤知夏さんのお誘いで参加させていただいた。Nehan.AI がハイスピードで進むスピーチ部分を、文脈に基づいて誤字脱字を修正し、読みやすく精緻に文字起こし・整理したのでシェアします。
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⭐︎時間あったら校正します
落合氏独特の語り口や専門用語(デジタルネイチャー、民藝、計算機自然など)を補完し、学術的な背景が伝わるように構成しています。
Chapterタイトルは客観的なものです。
落合陽一 教授就任祝賀会・所信表明
1. 開会の辞と謝辞
皆様、本日はお集まりいただき大変ありがとうございます。この度、教授に就任いたしました落合と申します。よろしくお願いします。
見渡す限り、高校生の頃からの旧知の間柄の方々から、今まさに共同研究をされている方々まで、本当に幅広い人々に支えられてきたんだなというのを、今日改めて噛み締めております。なお、今回の祝賀会の進行はすべて、うちの研究室の学生さんが行ってくれております。まずは彼らに大きな感謝を伝えたいと思います。ありがとうございます。
私は今日のプログラムの内容を全く存じ上げておらず、この後何が展開されるかも分かっておりませんが、一昨日に「どうやら12分くらい喋ればいいらしい」ということだけ把握しました(笑)。皆様への感謝とともに、我々がこの11年間、「デジタルネイチャー(計算機自然)」という枠組みで一体何をやってきたのかというお話を、私からさせていただきたいと思います。
2. 筑波大学と「二つの血筋」の結節点
今日この場には、学部の担任の先生やサークルの先生、指導教官だった先生など、私の大学以降のあらゆる人的関係が集結しています。
私が所属する「図書館情報メディア系」という組織は、学術的に非常に面白い背景を持っています。日本の文化や博物館、研究の歴史は万博の影響を強く受けています。かつて湯島聖堂に博覧会事務局(太政官博覧会事務局)があり、そこから博物館機能が分かっていきました。
そこには二つの大きな流れがあります。
図書・アーカイブの流れ: 帝国図書館から、かつての図書館情報大学へと続く歴史。
メディアアート・万博の流れ: 上野の博物館から、実験工房、そして1970年大阪万博を経て、筑波大学の「総合造形(ビデオアートなど)」へと続く歴史。
2002年に図書館情報大学と筑波大学が統合され、私がその1期生として入学したのが「図書館情報メディア創生学類」です。つまり、「メディアアートの万博的系譜」と「図書館情報の歴史的系譜」が合体した場所に、今の私のセンター(デジタルネイチャー開発研究センター)があります。私は40年ぶりに万博という文化の結節点に帰ってきたような、非常に味わい深い縁を感じています。
3. 研究の軌跡:VRから物理世界へ
研究室を始めた当初、私の大きなテーマは「音響浮揚(音で物を浮かせる)」や「触覚の提示」、あるいは「物質を変形させる」といったことでした。一言で言えば、「バーチャルリアリティをいかに物理世界に実装するか」という探究です。
3DプリンターやAR/VRが普及する中で、私はあえて「物理空間そのもの」にコンピュータの情報をどう染み出させるかを研究してきました。レーザーを用いた触覚や、収束超音波によるハプティックスなど、物理と情報を波動によって繋ぎ直す仕事です。
27歳で研究室を持ち、「あと38年研究を続ける」と考えたとき、安易に「コンピュータビジョン」や「LLM(大規模言語モデル)」といった既存の看板は掲げませんでした。最終的には、コンピュータが自然の中に融合し、道具がその場で作られ、形あるものとないものが即座に切り替わる、新しい「自然(Digital Nature)」に行き着くはずだと確信していたからです。
4. デジタルネイチャーと「脱・人間中心主義」
2015年に『魔法の世紀』、2018年に『デジタルネイチャー』を著しましたが、私の根底にあるのは「物質中心」から「計算機中心」への自然観の転換です。
人工物の重量: 2020年以降、地球上の人工物の総重量はバイオマスの総量を上回ったという論文があります。もはや我々は、コンピュータに接続された「新しい自然」の中に生きています。
東洋的思想との親和性: 人間中心主義を超え、あらゆるものがエージェント化し、物理と情報が融和していく世界。これは西洋的な二元論よりも、東洋的な「ヌルヌルとした融和」の感覚に近いものです。
2025年大阪・関西万博では「null(ヌル)」というパビリオンを作っています。これは人類がホモ・サピエンス的な身体性を手放した先に何があるかという問いです。「さようならホモ・サピエンス、こんにちは計算機自然」という、70年万博とは対照的なメッセージを込めています。
5. 展望:マタギドライブと「醸す」テクノロジー
これからの数年は、「マタギドライブ」(※2026年刊行予定)という概念を軸に据えています。
これまでのHCI(ヒューマン・コンピュータ・インタラクション)は「使いやすい道具を作る」ことでした。しかしこれからは、AIが勝手に進化し続ける環境の中で、人間がどう「兆し」を読み、環境から必要なものを「採取」していくかというフェーズに入ります。
私は寺田寅彦を愛していますが、彼は「日本には固有の雨の降り方があり、それに名前をつけて文化としてきた」と説きました。科学技術と文化的な形を合わせて考えることが重要です。
テクノロジーをただ使うのではなく、人と人の関係をデジタルで「醸す(発酵させる)」。そんな「おかしみ」のある世界を作っていきたい。来年の横浜での展示「テトラヌル(tetra-null)」でも、自動研究と発酵をテーマに、人間がポケーっと庭にいるような、そんなポスト・ホモサピエンスの景色を提示したいと思っています。
結び
ラボの中に引きこもるのではなく、これからはワイルドな知性を発揮して、ラボの外へと飛び出していきたい。本日できた皆様との接点をフル活用させていただき、学生とともに皆様の現場へ「不思議な研究」を携えて突撃するかもしれません。その時は、何卒よろしくお願いいたします。
これからもますます頑張って、楽しく色々なものを作っていきたいと思います。本日は本当にありがとうございました。
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