PMO二倉の反省 ~丸投げが引き起こしたクレーム~
前回上げたこの記事が人気がなかったので関連する内容を物語形式でもう一回取り上げてみました。
背景
狭間(はざま)
プロジェクトマネージャー。事なかれ主義で、よく板挟みになるが、本人はその理由に気づいていない。珠洲さん(すずさん)
中途入社の前職はIT系ではない。明るく前向きで向上心は強いが、時折空気を読まずにズバッと正論を言ってしまい、周囲をヒヤヒヤさせる。二倉(ふたくら)
経験豊富なプロジェクトマネージャー。冷静で理論的だが、仕事以外の会話が少なく、コミュニケーション不足が目立つ。
この物語の舞台は、IT業界における中規模企業。その生業はクラウドサービスやソフトウェア開発を中心に、官公庁や大手企業向けのプロジェクトを手掛けている。近年では世の流れに追従するようにAI技術の導入にも力を入れろとのお達しが出回り業務効率化や品質向上を目指している。
そのとある会社の中で起こったどこでも起こりそうな話。

起 (Introduction)
狭間の社用スマホに振動が走る。画面には、先週何事もなく要件定義の打ち合わせを終えた顧客の名前が表示されていた。「なんだろう?」瞬時にこれからの会話をシミュレーションしようとしたが、特に思い当たることは浮かんでこない。
顧客:
「先ほどメールで頂いた要件定義書なのですが、確認したい点がいくつかあるのですが。」
狭間は内心、顔が強ばるのを感じた。確か要件定義の作業は珠洲さんに依頼したはずだが…今となっては、そのことが頭をよぎる。顧客からいくつかの指摘を受け、乱雑にメモを取る。
狭間:
「すぐに確認して、改めてご連絡いたします。」
電話を切った後、狭間は深く息をついた。電話口ですぐに説明もできず、折り返すと答えるのが精一杯だった。「一緒に打合せにも出ていたにも関わらず、不甲斐ないな…」今更だが、珠洲さんにお願いして作ってもらった要件定義を見直し、問題を突き止めなければならない。
承 (Development)
狭間は珠洲さんのデスクに向かって歩きながら、心の中で何度も電話の内容を反芻していた。「どこが問題だったんだ?」 思い出す限りでは、確かに要件定義に大きな誤りはなかったはずだ。それでも顧客が指摘してきた点が引っかかる。
狭間
「珠洲さん、少し話があるんだけど。」
珠洲さん
「はい、どうしました?」
狭間はデスクに座りながら、少しの沈黙を置いた後、話し始めた。先ほどの電話で顧客が指摘した内容について簡単に説明し、珠洲さんに自分の見解を求める。
狭間
「顧客から、先週提出した要件定義に関して確認したい点がいくつかあるって言われたんだ。具体的には、〇〇の部分が曖昧だって。」
珠洲さん
「そうでしたか…。実際、あの部分は私が最終確認して提出したものなので、間違いないと思っていましたが…。」
狭間は少し顔をしかめた。確かに、要件定義書は珠洲さんが作成し、自分も打ち合わせに同席した。しかし、忙しさにかまけて、資料を細かく確認する時間がなかったことが頭をよぎる。「自分がちゃんとチェックしておけばよかったな」と感じる。
狭間
「確かに、打ち合わせには同席したけど、実際に提出した資料を詳細にレビューする時間がなかったんだ。他のプロジェクトも抱えていて、少し後回しにしてしまった…」
珠洲さん
「…あ、なるほど、そうだったんですね。でも、私も不明点は狭間さんに確認しながら進めていましたので、もし何か問題があればその時に…」
狭間はその言葉を聞き、少し自分にプレッシャーを感じる。「確かに、彼女が確認していた点についても、僕がきちんと確認すべきだった。」珠洲さんは表面上しっかりしているものの、経験不足から見逃してしまう部分もある。それが今回の問題に繋がっているのかもしれない。
狭間
「うん、わかった。これからすぐに確認して、顧客に伝えるべきところを洗い出そう。」
転 (Twist)
狭間と珠洲さんが要件定義書を見直していると、どうしても結論が出なかった。お互いの解釈に違いがあり、結局は「こうじゃないか?」と予測を立てながら進んでいた。しかし、どこかで答えが見つからないことに不安を感じていた。
そのとき、二倉が部屋に入ってきた。
二倉
「お二人とも、少しお疲れのようですね。」
狭間と珠洲さんは、二倉が入ってきたことにほっとした様子で振り返る。
狭間
「実は、顧客から指摘された要件定義の内容について、珠洲さんと一緒に確認してるんですが…」
珠洲さん
「指摘された部分を調べているんですが、どこが違うのか、結局まだはっきりしなくて。」
二倉は静かに資料を眺め、少し考えてから言った。
二倉
「なるほど。確かに、こういう問題が発生することは予想できたかもしれませんね。」
狭間
「え?」
二倉
「顧客が求めていることが、少し曖昧な部分が多かったのは確かです。しかし、それをあらかじめしっかりと確認しておかず、進めてしまった点が問題だったと思います。」
狭間と珠洲さんは顔を見合わせ、二倉の言葉に少し驚いた様子を見せる。
二倉
「それに、最終的な確認をお二人が『後でやろう』と思い込んでしまった点も、結果的には誤解を招いてしまいましたね。お二人が焦る気持ちは理解できますが、確認の重要性を少し見落としてしまったかもしれません。」
珠洲さん
「確かに、私も途中で確認不足だった点がありました。おっしゃる通りです。」
狭間
「僕も…。ただ、あのときは、他のプロジェクトが重なっていて…。つい、珠洲さんに任せきりにしてしまったんです。」
二倉
「お二人が丸投げしてしまったわけではないと思いますが、結果的に双方の認識にズレが生じてしまった部分はありますね。ただ、最終確認をしっかりと行うことができれば、問題は未然に防げたかもしれません。」
狭間と珠洲さんは少し黙り込む。二倉の指摘は優しくも的確だった。
二倉
「しかし、今からでも遅くはありません。顧客としっかり確認を取り、要件を明確にすることが最優先です。焦らずに、しっかりと進めましょう。」
狭間は深く頷き、珠洲さんも力強く言った。
狭間
「よし、すぐに顧客に電話をかけてみます。」
珠洲さん
「私もサポートします。」
二倉
「それで良いと思います。お二人の協力があれば、必ず解決できます。焦らずに、一歩一歩進んでいきましょう。」

解説パート (Reflection)
情報整理とコミュニケーションの重要性
要件定義書を作成する際の情報整理が不十分だった
珠洲さんと狭間の認識のズレが生じた原因
ツールの活用
自動化されたチェックリストやフォーマットを使用することで、効率よく情報整理できる
AIツールを使って要件の整合性をチェックする選択肢も有効
人とツールのバランス
ツールを使いながらも最終的には人間の判断とコミュニケーションが重要
適切なツールと人的リソースをバランスよく活用することが問題の防止につながる

結 (Conclusion)
狭間は顧客からのクレームも無事に解決し、事態が収束したことに安堵していた。しかし、心の中で次の仕事に手をつけるための準備を始める。忙しさに追われ、安堵も束の間だ。
狭間
「(なんとか終わった…)」
珠洲さんは机に手をつき、反省の表情を浮かべながら言う。
珠洲さん
「狭間さん、すみません…私がちゃんと確認していなかったせいで、こうなってしまいました。」
狭間
「いや、珠洲さんが悪いわけじゃない。焦ってたし、俺も見ておくべきだった。」
珠洲さんは少し気を落としているが、心の中で自分の実力不足を感じていた。これからの成長に向けて、もっと努力しなければと強く思っていた。
珠洲さん
「でも、もっとしっかりと確認しておくべきだったなと反省してます。」
狭間
「(忙しすぎてそこまで考える余裕なかったな…)次はもっとしっかりやろう。」

エピローグ (Epilogue)
デスクに座り、書類を眺めながら考える。狭間さんと珠洲さんがどうにか問題を収めてくれたことにホッとしつつ、心の中では反省が湧いてきた。
(狭間さんなら大丈夫だろう。これまでもやってきたし。)
でも、その思い込みが問題だった。
忙しさにかまけて進捗を確認しなかった。狭間さんに任せっきりにしてしまったことを後悔する。
(忙しいのは分かっていたけれど、それが言い訳にはならない。もっとこまめにサポートすべきだった。)
次からは、もっと自分がしっかり管理しようと決意する。
(狭間さんに頼るだけじゃなく、僕ももっと動かないと。進捗の確認やサポートを怠らないようにしよう。)
