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【第66話】暑寒海浜キャンプ場──タープの影と、きゅうりの冷たさ

北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々

静かに続いていく──
旅の空気と、光と温度で紡ぐ日々の記録。

【第66話/タープの影と、きゅうりの冷たさ】

暑寒海浜キャンプ場──温度計の針が先に起きる

薄い雲が海の上に広がっているのに、光だけは遠慮なく入ってくる。
今日の空気は、何かを始める前から体にまとわりつく。


昨晩も増毛町の「暑寒海浜キャンプ場」にお世話になる。7時26分に起床。みゅうちゃんが先に動き出して、顔の近くまで来た。

窓の外は、曇りのはずの空に青が混じっている。海のほうは白っぽく、砂利の地面はもう乾き気味。車内と外気の温度計は、どちらも「今日は長くなるぞ」と言いたげな位置を指していた。

みゅうちゃんの朝ご飯を用意して、器が軽く鳴る音を聞く。外の空気は湿りが少なくて、日が差すぶんだけ熱が増す。コーヒーを淹れ、トーストと豆乳ゼリーを並べる。口に入れたあと、風が通れば救われるのにと思う。

暑寒海浜キャンプ場の朝

食後はいつもの流れを片づけて、YouTubeを流す。しばらくすると、180SXの方が出発すると挨拶に来た。
30分ほど立ち話。車の話を少し、道の話を少し。8時40分、東へ向けて出発していった。砂利を踏むタイヤの音が遠ざかる。

出発前に来てくださいました

外に出たついでにタープの高さを少し上げる。影の位置がわずかに変わって、そこだけ温度が下がった気がする。給排水タンクの水を入れ替え、2Lペットボトルにも水を足す。最後に、シャワー用の10Lポリタンクを持って炊事場へ。

タープの高さを少し上げました

ちょうど地元のキャンパーさんがいて、軽く声をかける。
「ブログやってるよね?」と言われて、一瞬、頭の中の配線がつながり直る。ここに来る前に、ひとりが苦手で、暑寒海浜キャンプ場に誰かいないか探したら、たまたま自分の記録が引っかかったらしい。
「一人じゃないなら行ける」——その理由で、この海辺に向かったと聞いた。

ふたりで少し話しているうちに、その人は今日撤収すると言い、自家栽培のきゅうりと、きゅうりの漬物を手渡してくれた。ひんやりした重みが、掌に残る。

地元のキャンパーさんからいただきました


車へ戻り、シャワー用ポリタンクは近くの大きな石の上に置いた。石の冷たさが、水の温度を少しだけ守ってくれそうだった。


七輪の角──白くなる炭の縁

12時近く。タープ下に「火消し壷になる七輪」を持ち出す。先日Amazonで買った尾上製作所(ONOE)のやつだ。

底に着火剤の「文化たきつけ」を2カケラ。両側に「オガ備長炭」を1本ずつ置き、その上に2本重ねる。火をつけて、15分ほど放っておく。

炭の一部が白くなってきた。白いところを上に向けて、豚串を網にのせる。串物はいつも、木のほうが先に焼けて折れそうになる。今日は、その気配が出ない。

セイコーマートの豚串

頃合いを見て冷蔵庫からサッポロクラシック。缶の冷たさが指先に気持ちいい。豚串は塩コショウだけで、焦げの輪郭がはっきりしていく。肉だけが焼けて、串が残る。その違いが、妙にうれしい。

サッポロクラシックと豚串

豚串5本と缶は、いつの間にかなくなっていた。

網を少し焼いてから、七輪に蓋をして火消し壺へ切り替える。しばらく静かに置く。タープの下は影のまま、外はじわじわ熱い。

蓋をすると火消し壺に

食器を洗いに炊事場へ行くと、さっきのキャンパーさんはもう片づけ終えていた。きゅうりのお礼に、ステッカーと「八女茶」を渡す。
すると今度は、自家栽培のミニトマトと、ししとうまで増えた。持ち帰る袋が少し重くなる。物が増えるというより、今日の手触りが増える感じ。


蓋の内側──常温に戻る時間

14時53分。蓋をしてからちょうど2時間。七輪を開けて、炭の様子を見る。
本体も炭も、ほぼ常温。鎮火した炭は次に回せそうな顔をしている。

尾上製作所(ONOE)の「火消しつぼになる七輪HS-250」。火を起こして、焼いて、蓋をして終わる。炭が散らからないのが助かる。

リンクも貼っておく。
https://amzn.to/4f0l84u

そのままタープ下でのんびりする。風が止むと、空気がもわっと戻ってくる。けれど少しでも吹けば、海辺らしい冷えが混ざる。

タープ下でのんびり

汗をかいたぶん、今日は温泉に行かずシャワーにする。ポリタンクの水を使って、車内の小さな空間で体の熱だけを落とす。終わると、肌が軽くなる。

16時を過ぎ、メルマガを作って予約まで流す。ノートPCのキーを叩く音が、外の波の間に挟まる。


メロンの断面──雨雲レーダーの点々

17時55分。昼に豚串をやったので、夜は冷奴とイカの塩辛、さっき増えたミニトマト。冷たい皿が増えると、夕方の熱が少しだけ引く。

食べ終わるころ、正(まさ)さんが到着した。5月31日に「湯の沢水辺公園」で会って以来。

正さんと再会

正さんが持ってきたメロンを半分に切る。果肉の色が一気に視界を占める。ウィスキーを少し垂らして、スプーンで掬う。甘さが舌に残り、アルコールの輪郭がそのあとを追う。

メロンにウィスキー

食べ終えるころ、ぽつぽつと雨が来た。雨雲レーダーを見ると、そこそこ降りそうな雲が上を通る。
外で飲みながら話すつもりだったのに、雨が先に結論を出した。急いで撤収して、それぞれの我が家へ戻る。

21時。雨は止んでいるのに、外気温は24℃ほど。車内もまだ熱を持っている。冷房を入れる。ソーラーは今日のうちにほぼ満充電近くまで戻っている。
ただ、明日と明後日は日中雨の予報。充電は読めない。冷房を使うなら、サブバッテリーの残量も、目に見えて減っていくだろう。


あとがき

海辺のキャンプ場は、空が曇っていても油断できない。光が入る角度ひとつで、タープの下と外の境目がくっきり分かれる。

今日のいちばん冷たかったものは、炊事場で受け取ったきゅうりだった。袋越しの水気と、掌に伝わる重さ。誰かが畑で育てたものが、こうして旅のテーブルに混ざる。

豚串の焼け方も、炭の白くなる速度も、蓋を閉めてから常温に戻る時間も、ぜんぶ「この気温」でしか起きない。道具がうまく働く日があって、うまく働かない日もある。今日は蓋の内側が静かで、次に回せる炭が残った。

夕方にメロンの断面が現れて、雨雲レーダーの点々がそれを追いかける。外で話す予定は流れたけれど、車の中の冷房の音が、最後の余熱を押し出していく。

暑寒海浜キャンプ場は、まだ同じ場所にあって、風が止むと空気が戻ってくる。明日の空も、いまのところは雲の側が強い。


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