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【第52話】道営野塚野営場──タープの影が遠い日

北へ続く道 ─ 自作キャンピングカーで旅する日々

静かに続いていく──
旅の空気と、光と温度で紡ぐ日々の記録。

【第52話/タープの影が遠い日】

窓ぎわ──扇風機の残熱

熱だけが先に起きていて、こちらの体を引っぱる。
外はまだ静かで、光だけがもう強い。


昨晩も「道営野塚野営場」に車を置いた。
7時17分に目が開く。
扇風機は早朝から回しっぱなしなのに、
空気がぬるい。
温度計は車内30℃。

窓の向こうは雲が多めで、
それでも日が差している。
タープは張ったまま無事で、
後方には温泉施設だったらしい廃墟が
影を落としている。
もう、外も暑い。

道営野塚野営場の朝

みゅうちゃんの朝ご飯を先に出す。
こちらはコーヒーを淹れて、
トーストと豆乳ゼリー。
家庭用エアコンはすでに動いていて、
カーテンの内側だけ空気が落ち着いている。

ルーティンが一周したところで、
YouTubeを流す。
画面の音は小さく、
車内の冷気だけがはっきりしている。


草の匂い──刈払機の音

11時すぎ、
外から草刈り機の乾いた音が入ってくる。
広範囲ではないらしく、
車は動かさずに済んだ。
音が遠のくころ、
地面の匂いだけが残った。

地元の方が草刈り

12時58分。
卵入りの「うまかっちゃん」と冷奴、
昨晩の残りご飯もつける。
熱い麺をすすりながら、
外の眩しさが窓ガラスの向こうで揺れている。


除湿の境界──カーテンの内側

13時37分、試しにタープ下へ出てみる。
風はあるのに、ただ暑い。
写真にすると涼しそうな影なのに、
体は正直で、数分で車へ戻る。

タープ下をすぐに撤収!

シャワーを浴びる前、
後方の居住空間と
キッチン側のカーテンを開け放つと、
後方の室温が30℃まで戻ってしまった。
エアコンは「除湿」の設定のまま。
冷房に振れば下げられるけれど、
今日は電力の気配も気になる。

シャワーのあと、
カーテンを締めて空間を小さくする。
しばらくして26.7℃。
落ち着くのはこの区画だけで、
キッチン付近は38.8℃の表示。
外気温は37.2℃と出ているけれど、
直射日光が当たっている端末の数字だろう、
と頭では思う。
それでも、日なたの体感は近い。

北海道でもこの気温^^;

コンプレッサーが動くと
350〜400Wあたりを行ったり来たりして、
車の中に「いま頑張ってる」という音が増える。
広い空間をそのまま冷やすより、
カーテン一本で境界を作るほうが手っ取り早い。


送信ボタン──白い日差し

16時25分。
お客さんへのメルマガを作って予約を入れる。
送信を確定したあと、
トイレへ行こうと外に出ると、
まだ日差しがまっすぐ刺さる。
タープ下へ向かう気分にならず、
そのまま車へ戻る。

16時25分、まだ日差しが強い

ベッドに寝転ぶと、
みゅうちゃんも一緒に来る。
冷えた空気のいちばん奥へ、
ふたりで沈む。


水平線の帯──赤の瞬間

18時21分、外へ出ると風が変わっている。
気温も少し下がり、
皮膚に当たる感じが軽い。
サッポロクラシックとチェアを持って
タープ下へ移動する。

サッポロクラシックで乾杯♪

太陽は雲に隠れたり出たりして、
影が地面の上で位置を変える。
タープの布がときどき鳴って、
そのたびに風の強さが分かる。

19時2分、水平線の少し上に
オレンジ色の帯が見える。
19時8分、太陽がふっと顔を出す。
19時13分、赤が濃くなる。
19時21分、沈む。

夕日

ポールを少し短くして、
タープを低くする。
布の角度が変わるだけで、
空の見え方も変わる。

車へ戻り、晩ご飯。
味付きの鶏肉ともやし、
しめじを炒めて、
醤油とみりんを少し。
鍋肌の音が車内に広がって、
食卓だけが小さな熱源になる。

外気温はまだ27℃あたり。
窓を網戸にして、
マックスファンを少し強めに回すと、
風が通っていく。
明日の天気予報は雨マークが消えて曇りだけ、
最高気温は28℃。
風はやや強めらしい。

高い場所で寛ぐみゅうちゃん

あとがき

この日は、外に出られる時間が
はっきり分かれていた。
日中はタープの影ですら熱を含んでいて、
車内のカーテンの内側だけが
別の温度で息をしていた。

草刈り機の音が近づいて遠のき、
送信ボタンを押す指先だけが乾いていく。
冷たい空気に体を戻すたび、
窓の外の眩しさが一段強く見えた。

夕方に風が変わって、
タープ下がやっと「居場所」になる。
サッポロクラシックの缶が手の中で温まり、
水平線の上に色の帯ができて、
赤が一度だけ濃くなる。
みゅうちゃんは車内の
いちばん落ち着く場所を知っていて、
こちらが寝転ぶと同じ方向を向く。

温度計の数字、カーテンの開け閉め、
ファンの強さ。
今日を動かしていたのは、
そういう小さな操作ばかりだった。
道営野塚野営場の地面の匂いと、
廃墟の影と、低くしたタープの角度。
その全部が、きょうのまま、
ここに置いてある。


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