Let's image unknown creatures part 1〜地球外生命体を考えてみよう〜
いきなりですが、皆さんは宇宙人がいると思いますか。
「宇宙は広いんだから、どこかにはいるだろう」
「夢があるとは思うが、きっといないだろう」
きっと、色々な考えがあるかと思います。また、宇宙人がいると考える人であっても、知的生命体であるか否かや、どんな見た目なのかは、かなり人によって変わるかと思います。昔ながらのタコのようなイメージ、或いはバクテリアのようなイメージなど、本当に様々な意見があることと思います。宇宙人に関しては余りにも未知な領域であるため、幾らでも想像力が働きます。是非、皆さんの考えを伺ってみたいものです。
ところで、お前はどうなんだという声が聞こえてきそうなので、私の意見も述べておきます。科学を学ぶものとして答えるのなら、宇宙人が存在するともしないとも答えられません。なぜなら、宇宙人の存在を証明することは、現時点でできないからです。ただし、一個人としては宇宙人の存在を割と信じていて、自分が死ぬまでに地球外生命体の発見がなされて欲しいと思っています。勿論、その生命は知的生命体であるとは限りませんし、ひょっとしたら地球の生命とは全く違った形態をとっているかもしれません。尤も、知的生命体の定義や生命の定義がはっきりとしない以上、そもそも何を以って地球外生命体とするのかの問題もあるわけですが……。いずれにせよ、地球上にも極限環境で生き延びられるバクテリアやアーキア(注 1 )のようなものもいるので、多少環境が厳しい惑星であっても生物は存在し得ると考えられます。そのため、個人的に宇宙のどこかの惑星には生命が存在すると考えています。それに、これだけの Space があって宇宙人がいないというのも、勿体ないですしね(注 2)。
さて、地球外生命体がいると考えるだけで夢は膨らみますが、ちょっと物足りないと思いませんか。どうせなら、想像力を振り絞って、いるとすればこんな生物だろうという予測までした方が楽しいと思います。幸い、現代では天文学における観測技術も発達し、地球から遠く離れた天体であっても物質構成や大気組成など多くの情報が予測できるようになってきました。このような情報は生命のあり方を考える上で非常に有益なものであり、利用しない手はありません。そこで、地球上では絶対にあり得ないが、宇宙ではありそうな生物を考えてみたいと思います。 SF のような話になりますが、軽い頭の体操と思って、少しだけお付き合い下さい。
最初は、メタンの海に住む生物を考えてみます(注 3 )。タイタンという天体は土星の衛星の 1 つで、衛星では珍しくちゃんとした大気を持ちます。大気組成としては主成分を窒素とし、酸素が存在しないことを除いて、地球とよく似た大気を持つことが知られています。さて、このタイタンですが意外にも地球に似た側面を持ちます。大気があるため当然風は吹きますし、雨も降ります。また、地表には山もあります。これだけでも何となく地球に似ているように感じますが、更にタイタンには海もあります。ただし、地球よりも気温は低いので水の海ではなく、メタンを初めとした炭化水素類からできている海です(注 4 )。とは言っても、地下には液体の水もあるらしく、液体の水と液体のメタンが同時に存在する不思議な天体です。この話を聞くと、タイタンには地球上の生物と似た生命がいるのではないかと考える方もいるかもしれません。何せ水があるのですから、地下の水中に細胞のようなものができそうな気もします。しかし、細胞膜を形成しているのはリン脂質という油脂ですので、タイタン上に果たしてリン脂質の代わりをする物質があるのかというとちょっと疑問を覚えます。そこで、一旦地下の水から離れて、メタンの海に何かしらの生物がいると考えてみましょう。例えば、ビニルが細胞膜の役割を果たすと考えれば、メタンの海でも細胞は形成できます。実際、シアン化ビニルという物質を使えば、液体メタンの中で細胞膜と同様の役割を果たすことが確認されています(注 5 )。これで、内部に液体メタンを持つ細胞が出来上がりです。次はどのようにエネルギーを得ているのかという問題ですが、タイタン上に存在するアセチレンという物質を使えば解決します。アセチレンは水素と反応し安定なメタンを生成するので、そこでエネルギーが発生します。つまり、アセチレンからエネルギーを作り出し、副産物であるメタンはそのまま海に流してしまえば良いわけです。これで細胞と細胞内でエネルギーを作り出す仕組みが完成するわけです。従って、もしタイタンに生命がいるとすれば、メタンの海をゆらゆらと漂う、ビニルの膜を持ったバクテリアのような生物と考えられます。そんな生物が生まれるかどうかはさておき、何とも面白そうな生物だと思いませんか。
お次は、巨大なガス惑星に浮かぶ生物を考えてみます。ここまで行くと論理立てて説明するのさえ難しくなってきますが、木星や土星のような巨大ガス惑星に生物がいるならばという仮定で考えてみます。木星や土星は地球と異なる巨大なガス惑星であり、大気組成としてはほとんどが水素です。ただし、これらの惑星にもアセチレンなどの炭化水素が存在するため、エネルギーの点ではタイタンと同じく何とかなりそうです。さて、巨大ガス惑星という名の通り、このような天体には地球のような地面が存在しません。そのため、このような天体に住む生物は大気の中を漂っていなければならないのです。幸い、巨大ガス惑星は表層の大気圧は低く、また流体であることから浮力が働くと考えられます。天体の質量が大きい分重力の作用は大きくなりますが、質量を小さくするなどの工夫をすれば中心部に引き寄せられることもないのではないでしょうか。これらのことから、体の密度を小さくし重力の影響を少なくしつつ、体積を大きくして浮力の影響を大きくさせられれば、大気中に浮かぶ生物ができあがります(注 6 )。従って、仮に巨大ガス惑星に生物が存在するとしたら、エチゼンクラゲのような大きさで、見た目もクラゲに似た生物が大気の中を気ままに漂っていそうです。クラゲ好きの私からすれば、こんな生物は是非見てみたいところです。
他にも色々と考えられるのですが、今度で取り敢えず最後にさせて頂きます。最後は、見た目が岩石のようなケイ素化合物主体の生物です。地球上に住む生物はどんなに原始的と言われる生物であっても、体が必ず炭素化合物(有機化合物)で構成されています。遺伝情報を司る DNA も、体を直接作るタンパク質も、細胞膜を形成するリン脂質も全て炭素が骨格になっています。さて、そんな炭素骨格の生物を覆してみようというのがケイ素骨格を持つ生物というわけです。周期表が好きな方ならご存知と思いますが、炭素とケイ素は同族元素であるため、多少似た側面を持っています。例えば、炭素に水素原子が 4 つ結合するとメタンができあがりますが、ケイ素に水素原子が 4 つ結合するとシランという物質ができあがります。勿論、ケイ素化合物は炭素化合物に比べて多くの化合物は形成できないため、複雑な生物はできないと考えられます。更に言えば、ケイ素は地球の地面の下にも沢山ありますが、酸素との反応生が高いため、二酸化ケイ素などの酸化物ができやすいという性質があります。ケイ素の酸化物では、とても生命は生まれないでしょう。しかし、もうちょっとだけ無理をして、かに座 55 番星eのように高温でケイ素がそれなりにあると考えられている天体を考えてみましょう。こうした天体では先ず地球上のような生命が生まれることはなく、変わり種の生物になると思われます。そう、シランを始めとしたケイ素化合物を骨格にする生物です。仮にケイ素骨格を持つ生物であれば、見た目はまさに鉱物のような外見になると考えられます。今一ピンとこない方は、地球上の鉱物が二酸化ケイ素に富むことを考えて頂ければ分かりやすいかと思います。かなり無理のある考え方ではありますが、高温の天体に生命が存在するとすれば、ケイ素骨格を持ち岩石のような見た目を持つ生物が存在するかもしれません。ひ弱な人間に比べて、非常に頑丈そうな生物ですね。
本当にありそうな生物から余り現実的でない生物まで 3 種類の宇宙人を考えて見ましたが、どうだったでしょうか。そんな生物はいないだろう、という突っ込みがありそうですね。勿論、実際に学術的な分野で宇宙人を探そうとする場合は、やはりハビタブルゾーンという地球とよく似た環境になり得る天体を探すのが普通です(注 7 )。なぜ地球によく似た天体を探すのかと言えば、単に私たちは地球型の生命しか知らないからです。液体の水や酸素があり、炭素骨格を持つ生物を考える方が現実的と言えるでしょう。しかし、この宇宙は広いのですから、妄想を膨らませてみても良いと思います。液体の水ではなく、液体メタンを使う生物がいても不思議ではないのです。何も地球上の生物が普遍的なものとは限らないのですから。ちなみに、宇宙の生命を考えるという研究は既にかなり現実的な分野になってきていて、 astro biology (宇宙生物学)という学問ができているほどです。もし地球外生命体を発見することができて、なおかつその生命体が地球上では考えられない生物であったとしたら、きっと「生命とは何か?」という問いの一部には答えてくれるでしょう。生命を地球上の生物から考えるのは当たり前のことですが、宇宙の生命から考えることができたら、もっと深い生命観を得られるのではないでしょうか。そんな想いから、私としてはこの分野の研究が進んで欲しいと思います(注 8 )。
今回のような妄想混じりの記事を最後まで読んで頂き、本当に有り難うございます。皆さんが地球外生命体についてどのような考えを持っているのかも、是非伺いたいところです。次回は地球上の未知な世界に目を向け、 Let's image unknown creatures part 2〜深海生物を考えてみよう〜 というお題で、深海について考えてみようと思います。深海もまた過酷な環境ですから、地上では考えられない生物が既に沢山発見されています。そんな深海生物について、ちょっと想像力を膨らませてみます。きっと今回のように妄想の垂れ流しにはならないと思いますので、是非読んで頂けると嬉しいです。
注釈
注 1:バクテリアは真正細菌、アーキアは古細菌と言ったりもします。バクテリアもアーキアも原核生物という括りで、細胞内に多様な細胞内小器官を持たない、核がないなどの特徴があります。ただし、バクテリアよりもアーキアの方が我々真核生物に近く、進化論的にはアーキアから真核生物が派生したと考えられます。また、バクテリアではヒトに感染症を引き起こす種が多いですが、アーキアではそのような種がまだ確認されていないという特徴があります。バクテリアにも、アーキアにも高温に耐え得る種や、放射線に耐え得る種などが存在し、ヒトから見れば極限環境とも言える場所でも生存できます。ちなみに、菌という名前がつくとカビやキノコを思い浮かべる方もいるかもしれませんが、これらは真核生物の菌類、つまり真菌という分類になり、全くの別物です。真菌は、植物よりも動物に近い存在です。このようなことがあるため、個人的にバクテリアもアーキアも英語で表現しています。
注 2 :英語で言う space は普段使う「場所」という意味もありますが、同時に「宇宙」という意味もあります。敢えて space という表現を使っているのは、二重の意味にかけるためです。ちなみに、この表現、あの映画を見た方なら見覚えがあるのではないでしょうか。
注 3 :タイタンの情報は、全てナショナルジオグラフィックに掲載されている情報に依拠します。(参考文献 1 )
注 4 :飽和炭化水素類にはメタン、エタン、プロパン、ブタン、ペンタンなどがあります。プロパンはプロパンガスという名称で知っている方も多いと思いますが、ブタンはガスコンロのガスに使われていたりします。メタンやエタンは飽和炭化水素類の中でも特に沸点が高く、地球上では通常気体です。しかし、タイタンは気温が低いため、沸点に達することなく液体として存在することができます。
注 5 :シアン化ビニルの実験結果は、ナショナルジオグラフィックに掲載されている情報に依拠します。(参考文献 2 )
注 6 :質量を小さくするためには、大きさを制限するか、単位体積当たりの質量(密度)を小さくするしかありません。しかし、浮力は体積に比例して大きくなるため、大きさを制限するのは不利になります。そこで、密度を小さくし、体を大きくするという発想になるわけです。
注 7 :主星が太陽ほどの質量と仮定した場合、ハビタブルゾーンは主星から約 1 AU(1億5000万 km )ほど離れた領域になります。これほどの距離であれば、液体の水が存在するほどの気温が保てる(厳密には温室効果もあって、現在の気温になっていますが)ことから、生命が存在できる天体と予測できるわけです。なぜ液体の水にこだわるかと言えば、地球上の生物が液体の水を利用して代謝を行なっているからです。代謝を行う際には溶媒、つまりアミノ酸や糖を溶解させることのできる液体が必要になります。我々は水を溶媒として代謝を行うことから、液体の水が存在する天体を生命が存在し得る場所と考えるわけです。尤も、既に述べたように液体のメタンを溶媒に使う生物がいても良いわけですから、実際はハビタブルゾーンに拘ることもないのかもしれません。なお、主星の質量が大きくなればなるほどハビタブルゾーンとなる距離も変化しますので、注意して下さい。
注 8 :自然科学の分野でも、生命科学は地球上の生物しか扱えないことから、物理学や化学などの宇宙であればどこでも成立する法則を考える分野から普遍的な学問でないと言われる場合もあります。この意見に対してとやかく言う気はありませんが、現代生命科学が地球上の生物しか扱えないという点は最もな主張です。そこで、想像もつかない地球外生命体に出会えたりすれば、生命科学という分野の視野が広がるだろうなとは思います。生命とは何か、という問いかけに対する答えを模索しようとする場合、現状では地球上の生命から普遍的な部分を抽出しなければなりません。しかし、その普遍的な定義がひょっとしたら宇宙では成り立たないこともあるかもしれません。その答えを知るためにも、地球外生命体のあり方を是非知りたいと思うわけです。
参考文献
1:ナショナルジオグラフィック 「まるで地球、衛星タイタンの驚くべき写真」(2017/1/17)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/011600013/?P=1
2 :ナショナルジオグラフィック 「土星の衛星タイタンに「ビニル製」生命の可能性」(2017/8/1)
https://natgeo.nikkeibp.co.jp/atcl/news/17/080100293/?P=1
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