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震えるぞハート!燃え尽きるほどヒート!(物理学誕生⑥高校基礎)

これの続編です。

§1 フックの法則のフックさん
 イマイチ印象の薄い物理学者といえば、「フックの法則」の発見者である、ロバート・フック(1635-1703)である。「フックの法則」は山ほどある業績の中のひとつに過ぎないのだが、、フックの紹介はやはりここから始めるべきだろう。
 もし「フックの法則」が学生諸君に知的感動を与えることが少ないとしたら、おそらく次のようなことが要因になっている。まず第一に、それが「ばね」という人工物の性質を表している法則なので、「落体の法則」や「万有引力の法則」などに比べると、自然現象を解明しているという満足感に欠けるということ。そして第二に、そもそも「伸び」についても「縮み」についても「フックの法則」に従うばねなど身の回りどころか物理準備室にもなかなか存在せず、もちろん作れないことはないのだが、それでも「伸び」や「縮み」が小さい範囲内でしか「フックの法則」を成り立たせるのは難しい。と言うか、ここまでくると、フックが「本当にばねの性質を見つけた」のか、フックが思うような「ばねをつくることも可能」なのかの区別が曖昧になるという、下手をすると本末転倒な事態になっている。
 ここで断言しておくが、上に書いたような議論は「フックの法則」の本質的評価という点では、完全に的外れなのである。順番に説明していこう。まず、物理の勉強として大切なのは、人工物としての水平ばね振り子ではない。そうではなく、単振動の理解が大切なのである。水平ばね振り子は、そのために最も便利な、具体例に過ぎない。そして単振動は、波動現象全般に付随する、極めて普遍的な自然現象である。と、いうことは、「伸び」でも「縮み」でも正確に「フックの法則」に従うばねが存在するのかどうかは、本当に大切なことではない。波動を伝播させている媒質に「復元力」がはたらいていることが重要なのである。
 さらに言えば、ケプラーは万有引力の関数形を推測したが、それは間違いだった。対してフックの法則は、まがりなりにも正しかった。そしてそれは、万有引力の正しい定式化よりも以前の発見である。何が言いたいのかというと、実は、人類が正しく「力」を式で書いたのは「フックの法則」が最初なのである。その意義の大きさは計り知れない。

§2 ボイルの優れたパートナーだったフックさん
 そもそもフックは「ボイルの法則」で有名なロバート・ボイル(1627-1691)の優秀な助手であり、「ボイルの法則」の発見に大いに貢献したというか、そもそも「ボイルの法則」を初めて数式で表したのは、数学的能力においてボイルよりも勝っていたフックだとも言われているくらいなのだ。
 また、フックは初めて生物の細胞を観察し、それを「小部屋」という意味で「cell」と名付けた。この名称は現代でもそのまま使われている。それどころか、フックの手による精巧なスケッチは現代の生物の教材にもよく掲載されている。歴史的な意味合いで掲載しているという部分もあるだろうが、フックのスケッチが超絶に見事だということも関係しているだろう。この全方位的な才能はガリレオ・ガリレイにも似ており、また歴史家の中にはフックを「イギリスのレオナルド」と評した者もいる。

§3 ニュートンに消された? フックさん
 当時の科学者は文通によって意見を交換することが多かったが、実はフックからニュートンに宛てた手紙の中で、「プリンキピア」を書くための決定的なヒントになったと思われるものが残っている。それは「惑星の円運動を、慣性運動としての直線運動と、向心力による進行方向の変化の重ね合わせとして解析すれば良いのではないか」というアドバイスである。
 晩年のフックは様々な論争に首を突っ込み、とくにプリンキピアに対して自分の貢献を主張して、ニュートンとの仲は非常に険悪になった。これについては、まあ、どっちもどっちである。フックが提案した方法でニュートンが成功したのが事実である一方、フックは、その方法を自分で実行できるほどの数学的天才ではなかったのだから。

 ただし、ニュートンを怒らせてしまったのはフックにとって本当に気の毒なことだった。何しろ世間から史上最高の天才だと言われている人間に悪口を言われまくるのである。しかもニュートンはこういうことに関しては信じられないほど性格が悪くて、フックの肖像画が残っていなかったり、フックの研究成果が彼の死後長い間過小評価されていたのは、ニュートンがあの手この手で悪さをしたせいだともいわれている。

【参考文献・インスパイア元】 本記事を書くにあたり、以下の書籍を参考にしつつ、私の独自解釈と妄想を加えています。どちらも物理好きなら痺れる名著なので、ぜひ読んでみてください。

●サイモン・シン『ビッグバン宇宙論』(新潮文庫)
●山本義隆『磁力と重力の発見』(日本評論社)

続編はこちら!

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