副業の確定申告を頼みに来て、料金表を見て帰った人の話
これは税金の話ではなく、あなたと会計事務所が、お互いに口に出さないまま別れていく話です
「売上300万円以下だと、経費がつけられないらしい」。これを誰かから聞いて、会計事務所に駆け込んだ人へ
担当者にこう言われませんでしたか
「開業届と、青色申告承認申請書を出しておきましょう。ご自身で提出しますか、弊社に任せて頂けますか」
出した。安心した。で、終わっていたら、この記事はあなたのための話です
先に名乗っておきます。会計事務所の中の人、無資格の職員です。だから、あなたの申告がどうなるかは、私が決める側ではありません。書くのは、届出を出して安心した人が翌年の2月中旬から3月15日までに何を言われるかと、そのとき料金表の向こう側で何が起きているか。その形だけです
届出を出して、安心した人の翌年
会社員のAさん。週末にハンドメイドの雑貨をネットで売り始めた。1年目の売上は180万円見込み。材料と機材とカメラを揃えたので、経費は260万円。差し引き80万円の赤字見込み
知り合いの個人事業主に、こう聞いた。「その赤字、給料と相殺できて税金が戻ってくるよ」
それで11月に会計事務所に行った。担当者は言った。「じゃあ開業届と青色申告の申請を出しておきましょう。青色なら赤字を給与と通算できますし、最大65万円の控除もありますから」
Aさんは出した。レシートは全部、スマホで撮って残した。2月20日、意気揚々と確定申告の依頼に来た
担当者の顔が曇る。「Aさん、帳簿は……」
「帳簿? レシートは全部あります」
「レシートじゃなくて、取引を記録した帳簿です。それがないと、これは事業所得じゃなくて、雑所得になります」
雑所得になると、こうなります
・赤字を給与所得と相殺できない
・翌年に赤字を繰り越せない
・青色の控除も使えない
Aさんが期待していた還付は、ゼロ
Aさんは言った。「開業届と青色の申請、出しましたよね?」
担当者は言った。「出しましたね。でも、それはいわゆる席を取る手続きで、席に座れるかは別なんです」
Aさんは食い下がった。「じゃあ来年から帳簿をつけます。今回は帳簿と申告、お願いできますか」
担当者は、料金表を出した。Aさんは、その数字を見て「考えます」と言った。それきり、来ていない
赤字1年目に申告の報酬を払えと言われたら、誰でも『考えます』と言う。売上をゼロから作った立派な人を、責める気はない
300万円の話は、数行で済む
2022年に国税庁が通達を変えました。最初の案が「副業で売上300万円以下は原則、雑所得」。これが噂の元です。批判が殺到して、最終的には帳簿をつけて保存していれば300万円以下でも概ね事業所得、帳簿がなければ雑所得、に落ち着いた。細かい要件は他にもあるが、大筋はこれです
つまり壁は300万円じゃない。壁は、帳簿です。雑所得でも経費は引けます。引けないのは赤字のほうで、副業1年目の赤字は、たいてい消える
この手の話は、noteで検索すれば同じ解説が10本は出てきます。私が書きたいのは、その先です
会計事務所は、あなたの申告をやりたがらない
ここからが、一番書きたかったことです
会計事務所は、売上300万円以下の副業の申告を、あまりやりたがりません。事業所得か雑所得かの判断も、たいていしない。届出を出すところまでは付き合う。その先は「また改めて」になる
理由は単純で、合わないからです。担当者は月に20社の試算表を見ている。そこに、レシートの束を帳簿に起こすところから始まる年一の仕事が入ってくる。相談に乗るのも、帳簿を作るのも、申告書を書くのも、全部時間がかかる。だから当然、有償です
で、料金を出す。Aさんは「高い」と言って離れる
Aさんの気持ちは分かる。売上180万円で赤字の年に、申告の報酬が5〜10万円。丸ごと持ち出しです。来年うまくいって利益が100万円出たとしても、儲けの5〜10%が消える。間違いなく必要経費ではあるが、痛い
でも会計事務所の側から見ると、レシートの束を帳簿にして申告書まで仕上げて5万円ならば、破格です。世間の相場は、記帳から任せれば年に十数万から数十万、申告書だけでも数万円。アドバイス? 勿論別料金です
担当者の時間で計算したら、5万円は赤字の仕事です
だから担当者は、料金表を出すときに少し申し訳ない顔をする。高いと言われるのが分かっているからです。そしてAさんが「考えます」と言ったとき、内心ほっとしている。断られたほうが、楽だからです
どちらも間違っていない。副業の規模と、会計事務所の値段が、合っていないだけ。合っていないのに、どちらもそれを口に出さない。事務所は「また改めて」と言い、Aさんは「考えます」と言う。ここで、すれ違いが完成する
そして、Aさんは帳簿をつけないまま、翌年もレシートを撮り続ける。破格の会計事務所を探しながら
私は、あなたの申告を判断できません
ここで、はっきり書いておきます。私は税理士ではありません。個別の相談には乗れませんし、指導も案内もできません
「私の、これこれこういう場合は事業所得ですか」「この支出は、事業関連性があると思うので経費で落ちますか」と聞かれても、答えられない立場です。この記事でできるのは、すれ違いの形をあなたが知ることまでです
また、そもそもメインの本業があるならば、副業規定はよく確認した方がよいです
会社に黙って申告しても、基本的に住民税ですぐバレます
本当のことを言うと、税務署に行ったほうがいい
売上300万円以下の副業なら、会計事務所に頼むより、本業の給与など、主な収入が分かる資料を持って、税務署に予約を取って相談に行くほうが、あなたのためになる
会計事務所の中の人が言うのも変な話ですが、そう思います
税務署の相談は、無料です。帳簿のつけ方も、事業所得になるかどうかも、聞けば答えてくれる。会計事務所が「合わない」と思っている仕事を、税務署は仕事として受けている。合っている場所に行くのが、一番早い
ただ、税務署で聞けるのは、帳簿のつけ方と所得の区分まで。あなたの商売の中身の相談は、別の話。厳密には手間がかかる
それでも内容相談も含めて、会計事務所に頼むなら、聞き方を変えてください。「開業届を出したら事業所得になりますか」ではなく、こうです
「私の事業は、内容と規模と資料を整えれば、事業所得と判断される条件を満たしていますか。足りないなら、何が足りませんか。それを揃えたら、申告報酬はいくらで受けてもらえますか」
先に値段まで聞く。そこで出てきた数字が「高い」と感じたら、それは会計事務所が悪いのでも、あなたが悪いのでもない。需要と供給が合っていないというだけです。ちょっと苦労はするかもしれないが、税務署に行けばいい
聞き方には、他にも順番があります。何を先に聞いて、何を後に回すか。担当者が言葉に詰まる質問はどれか。その中身は、こちらに書きました
もう一度言います。この記事は、個別の相談を受けるものではありません。あなたの申告がどうなるかは、是非税務署か、あなたが選んだ会計事務所の担当者に聞いてください
今は確定申告も様々なツールが出てきて、案外簡単にはなりつつあります
例えば、通帳やカード明細と連携する会計ソフトや、そもそも直感的に仕訳が打てる会計ソフト、そして一番オススメなのがレシートを取り込めるスキャナーを買い、AIに入力してもらうことですね
まぁ、ここで該当の商品書くのは今日の主軸とズレるので、また別の機会に書きます
大丈夫です、自身で検索すればある程度わかりますから
それでも心配だという反応があれば、これはツールの話なので、わかりやすく整理して書かせてもらいます
あくまで、こちらはあなたの味方なので
