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実践するドラッカー 実践編 第14話:プロフェッショナルが育つ組織を作る①(全4話)

事例4-1 [チーム編]~社員は会社のためにある?会社が社員のためにある?

山と自然に囲まれた地方都市(人口25万)で、
高級家具の販売と修理から始まった会社があります。
やがて店舗プロデュースの仕事が増え、社員も少しずつ増えていきました。

案件はある。仕事も忙しい。
それなのに、会社は数億円規模のところで伸び悩みます。

「なぜだろう」

D社長はそう思いながらも、社員に向かってこう言い続けていました。
「もっと頑張れ」

■将棋のコマのような存在

しかし叱れば叱るほど、会社の空気は重くなります。
社員は萎縮し、定着もしません。

そのころのD社長にとって、社員とはいわば
「働くコマ」のような存在でした。

会社の目標を実現するために、動いてもらう存在。
そのために、職人にもマネジャーにも真剣に向き合ってきました。

決してぞんざいに扱ってきたわけではありません。
むしろ、自分自身に対して無理をさせていたのかもしれません。

しかし、成長したと思ったら振出しに戻る、という状況に焦りも感じていました。
その意識が、知らず知らずのうちに言葉や態度に表れていたのでしょう。

■ドラッカーの一番短いメッセージ

そんなとき、D社長は実践するドラッカー チーム編の講座に参加します。

そこで聞いた、ある言葉に衝撃を受けました。

聞け、話すな。

『実践するドラッカー チーム編』第6章 チームを活性化させる~コミュニケーションと会議運営
正しい問いを発する p.186
(経営者の条件 p.15)

この言葉は、単に「相手の話をよく聞きなさい」という意味ではありません。
ドラッカーは、コミュニケーションの原理原則は
まず「正しい問いを発すること」にあると述べています。

相手に語らせるための問いを持つこと。
その問いを通じて、相手の考えや状況を理解すること。

つまり、経営者の仕事は「話すこと」ではなく、
問いを発し、相手の話を聞くことなのです。

その瞬間、D社長は椅子から転げ落ちそうになったと言います。
ふと見ると、周囲の参加者がD社長を見ています。
知らず知らず「あぁ~」と声まで出していたようです。

D社長の頭の中には・・
それまでの自分の姿が一気に浮かんできたからです。

社員の話を聞くよりも、自分の考えを説明していた。
問いかけるよりも、指示を出していた。

■問題は自分にあった

そのとき、ある社員の顔が浮かびました。

以前、会社を辞めていったスタッフです。

能力がなかったわけではありません。
むしろ将来を期待していた社員でした。

しかし当時のD社長は、
その社員の話を十分に聞いていたとは言えませんでした。
「もっとこうしろ」
「なぜできないんだ」
そんな言葉を繰り返していたと言います。

そしてある日、その社員は会社を去りました。

勉強会の会場で、D社長は思いました。
「あのスタッフは、辞めずに済んだんじゃないだろうか。」

そのとき、D社長の胸に重い思いがこみ上げてきました。

問題があったのは社員ではない。
自分だったのではないか。

■社員の自己実現のために存在する会社

もう一つのドラッカーの言葉が胸に刺さります。

組織とは、個としての人間一人ひとりに対して、また社会を構成する一人ひとりの人間に対して、何らかの貢献を行わせ、自己実現させるための手段である。

(エッセンシャル版マネジメント p.276)

それまでD社長は、
組織のために個人がいると考えていました。
人は、「組織のために働く存在」だと。

その結果、実は、「経営者である自分自身」についても
組織のコマの一つだと考えてしまって
無理をしていたのでした。

しかしドラッカーは逆のことを言っています。

組織は、人が成長するための道具である。

もしそうだとすれば、
経営者の仕事は人に命令することではありません。
人が成長できる環境をつくることです。

この気づきは、D社長の会社の運営の仕方を大きく変えるきっかけになりました。
まず取り組んだのは、社員が学び、考える仕組みをつくることでした。
社長が一方的に指示する組織から、社員が自分で考えて動く組織へ。

その最初の一歩が、社内に「学びの仕組み」をつくることだったのです。
この取り組みが、会社の空気を少しずつ変えていくことになります。

その具体的な内容については、次回紹介します。

【今日の問い】

Q:部下から有用な提案やヒントを引き出すために、どのような問いかけをしていますか?

「何かない?」「言いたいことある?」といった漠然とした問いかけでは、的を射た答えはなかなか引き出せません。
むしろ、これまで意識されていなかった不平や不満、クレームを呼び起こしてしまい、場の空気が不穏になる可能性さえあります。

そもそも、部下に限らず、お客様であっても、日頃から十分なコミュニケーションが取れていなければ、最初に出てくるのは不平や不満であることが自然です。

だからこそ、たとえそうした声が出てきたとしても、その中から提案やヒントを汲み取ろうとする傾聴の姿勢が、問いかけの前提となります。

何を共有し、どのように問いかけるのか。試行錯誤を重ねながら、自分なりのスタイルを確立していきましょう。


本記事は、実際の企業事例をもとに、人物名、社名、地域、時期、数値などを一部変更・再構成しています。

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