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実践するドラッカー 実践編 第95話:顧客に聞けば、仕事は変わる――ある地方バス会社の小さな実践④(全9話)

事例18-4 思いがけない反応に目を向ける

本記事は、実際の企業事例をもとに、人物名、社名、地域、時期、数値などを一部変更・再構成しています。

一つの停留所。
その周辺にある、約200軒の家。
UUバス社の営業チームは、チラシを持って地域へ出ました。

第3話で決めた、最初の小さな実践です。
やることは、とても地味でした。

一軒ずつ歩く。
郵便受けにチラシを入れる。
それだけです。

大がかりなキャンペーンでもありません。
特別な商品をつくったわけでもありません。

まずは、
「この停留所の周辺の人たちに、バスのことを知ってもらおう」
というところから始めました。

チラシを入れるだけのはずだった

営業チームは、停留所周辺の家を一軒ずつ回りました。
やることは、郵便受けにチラシを入れていくことです。
ところが、ある家に行くと、ちょうど家の前に住民が立っていました。

さすがに、その人の目の前で黙って郵便受けにチラシだけ入れて帰るわけにもいきません。

そこで、「こんにちは。UUバス社です。こんなものをお配りしています」
と声をかけ、直接チラシを手渡しました。

すると、返ってきたのは意外な言葉でした。
「最近はUUバスさん、そんなこともしているの?」
「最近、乗ってなくてごめんなさいね」

営業チームは少し驚きました。

バスを利用していない人には、もう関心を持ってもらえていない。
どこかで、そんなふうに考えていたからです。

しかし実際には違いました。
バスには乗っていなくても、UUバス社のことを知っている。
地域の足を支えてくれていることを知っていて、気にかけている。
中には、「最近乗っていなくてごめんね」と言ってくれる人までいました。
利用していないことと、関心がないことは同じではなかったのです。

予期していなかった成果

もともとの計画は、あくまでチラシのポスティングでした。
ところが、たまたま家の前にいた人に声をかけたことで、思いがけず会話が生まれました。

そして、その会話の中から、
バスに乗らない人たちとの間にも、まだ関係が残っている
ということが見えてきました。

これは、最初から狙っていた成果ではありません。
むしろ、行動してみたから偶然返ってきた反応でした。

予期せぬ成功ほど、イノベーションの機会となるものはない。これほどリスクが小さく苦労のないイノベーションはない。しかるに予期せぬ成功はほとんど無視される。困ったことには存在さえ否定される。

『実践するドラッカー[事業編]』 第7章 事業機会を発見する
予期せぬものを探す p.220
(イノベーションと企業家精神 p.18)

UUバス社にとって、このときの「予期せぬ成功」は、
大幅に利用者が増えたことではありません。

バスに乗らない人たちと、直接話せることが分かったこと。
そして、
その人たちの中にも、UUバス社への好意や期待が残っていることが分かったこと。
そこに、次の可能性がありました。

計画した成果だけを見ない

もし営業チームが、「チラシを200枚配った」ということだけを成果として見ていたら、この反応は通り過ぎていたかもしれません。

あるいは、「すぐに利用客が増えなかったから、この営業は失敗だった」
と判断していたかもしれません。

しかし、現場で起きたことをよく見ると、
当初の目的とは別のところに、大切な情報がありました。

思っていたより、地域との関係は切れていない。

それどころか、
「UUバス社には頑張ってほしい」
と思ってくれている人さえいる。

小さく始めたからこそ、一人ひとりの反応を見ることができました。
そして、その反応を、「たまたまそう言ってくれただけ」で終わらせませんでした。

なぜ、こんな反応が返ってきたのか。
この反応は、何を意味しているのか。
次に何を確かめればよいのか。

そう考えることで、
行動 → 反応 → 次の仮説
という流れが生まれました。

イノベーションの機会は、最初に描いた計画の中だけにあるとは限りません。
むしろ、「思っていたのと違う」というところに、次の一歩の手がかりが隠れていることがあります。

予期せぬ反応は、計画から外れた出来事です。
だからこそ、見過ごしてしまうことがあります。
「本来やろうとしていたこととは違う」
「たまたまだろう」

そう片づけてしまえば、それまでです。
しかし、その反応に目を向けると、
自分たちがまだ知らなかった現実が見えてくることがあります。

UUバス社がこの日見つけたのも、大きな成果ではありませんでした。

ただ、「思っていたのと違う」という、小さな反応でした。
けれども、その反応が、次の実践につながっていきます。

【今日の質問】

Q:あなたの仕事で、最近あった「思っていたのと違う反応」は何ですか?

予想以上に喜ばれたこと。
意外な人から問い合わせが来たこと。
想定していなかった使い方をされたこと。
思ったより反応がよかったこと。

そうした出来事を、「たまたま」で終わらせずに眺めてみます。
なぜ、その反応が起きたのでしょうか。

そこに、次の機会につながる手がかりがあるかもしれません。
即座に「ない」と言い切ってしまうことは、
貴重な成功の種を無視しているだけなのかもしれません。

~次回予告~

チラシを配りに行っただけなのに、思いがけず好意的な反応が返ってきました。その反応を前に、UUバス社には、次の問いが生まれていきます。


このUUバス物語の第①話はこちらから


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