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実践するドラッカー 実践編 第8話:保健室から始まったドラッカー②(全3話)

事例2-2 [行動編]~保健室から始まった自己刷新の問い

ドラッカーの問い、
「あなたは何によって憶えられたいか。」

この問いに出会ったB先生は、まず自分自身に向けて考え始められました。

保健室の先生として、どのような存在でありたいのか。
この仕事を通して、生徒に何を残したいのか。

その問いを抱えながら日々の仕事を続ける中で、
一つの思いが浮かびます。

この問いを、生徒にも伝えてみよう。

特別な授業をするわけではありません。
学校全体の取り組みにするわけでもありません。

保健室という、日常の延長線上にある場所で、
できることから始めてみようと思われたのです。

■一つの問いに集中する

ドラッカーは、自らの学び方について次のように述べています。

やがて私は、一時に一つの事に集中して勉強するという自分なりの方法を身につけた。(中略)
すでに60年以上にわたって、一時に一つのテーマを勉強するという方法を続けてきた。

『実践するドラッカー 行動編』第5章 障害を通して学ぶ
/集中して学ぶp.148
(プロフェッショナルの条件 p.101)

一つのことを深く問い続けること。
それは、学びにおいても、人への関わりにおいても、同じではないでしょうか。

大切なのは、一度に多くを伝えようとしないことかもしれません。
この問いだけを、丁寧に、繰り返し届ける。

B先生もまた、
この一つの問いに集中されました。

「あなたは何によって憶えられたいか。」

まずは自分自身に問い続け、
そして少しずつ、生徒にも伝えてみることにされたのです。

■保健室での問いかけ

最初は、とてもささやかなものでした。

保健室に来た生徒と話をする中で、
ふとしたタイミングでこう問いかけてみる。

「あなたは、何によって憶えられたいですか?」

生徒の反応はさまざまでした。

「え、わからない。」
「そんなこと考えたことない。」
「まだ決められない。」

それでも構いませんでした。

この問いは、すぐに答えを出すためのものではありません。
むしろ、心のどこかに残ることに意味があるのではないかと感じられたのです。

■保健室の掲示

やがてB先生は、この問いを保健室に掲示してみることにされました。

「あなたは何によって憶えられたいですか?」

生徒が自由に言葉を書けるようにすると、
少しずつメッセージが増えていきました。

そこには、

・人の役に立つ人
・誰かを助ける人
・スポーツで活躍する人
・夢を応援する人

など、さまざまな思いが書かれていました。

同じ問いでも、答えは一人ひとり異なります。

その様子を見ながら、B先生は改めて感じられました。

この問いには、人それぞれの未来が表れる。

■学校生活への広がり

この問いは、保健室の中だけにとどまりませんでした。

保健室便りの中で紹介したり、
卒業の時期には、学級で短いお話をする機会も生まれました。

あるとき、生徒が友人を連れてきて、「B先生、この前のドラッカーのお話、みんなにきかせてもらってもいい?」とやってきました。

***
ドラッカーが13歳のときにこの問いを聞いたという話。
そして60年後の同窓会でも、その言葉を皆が憶えていたという話。

生徒たちには、こう伝えられたといいます。

「この答えは、今すぐに出す必要はありません。」

「でも、心のどこかに置いておいてください。」

■十年続いた小さな実践

こうした取り組みは、大きな活動ではありません。

授業時間を使うわけでもなく、
学校の制度を変えるものでもありません。

しかし、この問いは少しずつ、学校の中に広がっていきました。

保健室の掲示。
保健室便り。
卒業文集。
学級でのささやかな講話。

B先生は、この問いを十年以上伝え続けてこられました。

ただ一つの問いを、何度も、何年も。

ドラッカーは言います。

人の本性は、最低ではなく最高の仕事ぶりを目標とすることを要求する。

『実践するドラッカー 行動編』第3章 目標が成長を促す
/人は目標達成を好むp.92
(現代の経営(下))p.108)

人は、本来、意味のある仕事をしたいと願う存在です。

ただ与えられた仕事をこなすのではなく、
自分なりの最善を尽くしたいと望んでいます。

保健室から始まったこの小さな問いかけも、
B先生にとっての「最高の仕事ぶり」を模索する行動だったのかもしれません。

そしてこの問いは、やがて生徒たちの中で、
思いがけない形で芽を出し始めます。

それは、卒業を前にしたある日の出来事でした。

(つづく)

【今日の問い】

Q:あなた自身の仕事を「最高の仕事」にするために、日々自分に何を問いかけますか?

人は、仕事をするとき、常に心の中で何かを問いかけています。
その問いは、思考だけでなく、行動にも大きな影響を与えます。

たとえば、
「もっと楽な仕事はないだろうか?」
と問いかけるのか、
それとも
「もっと楽しく働くにはどうしたらよいだろうか?」
と問いかけるのか。

その違いは、やがて選択や行動の違いとなって表れてきます。

問いは、自分の視点を決め、
行動の方向を静かに導いていきます。

では、あなたはどうでしょうか。

自分の仕事をよりよいものにしようとするとき、
心の中にどのような問いを置いているでしょうか。


この一連の物語の第①話はこちらからどうぞ。

本記事は、実際の実践事例をもとに、人物名、社名、地域、時期、数値などを一部変更・再構成しています。

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