脳内編集者に仕事を依頼されて、4ヶ月で5本執筆した話 文字になる前~言葉が輪郭を持つまで~ ごっこ遊び
昨年末、どこかの蛇口が壊れ、いきなり言葉が身体を通って流れ出す現象が起こった。
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その勢いで、長いことイメージだけあった童話を書いた。
思った以上にちゃんとしていて、ワクワクした。
そうだ。
これをどこかの公募に出してみよう。
生まれて初めて、文章の公募をネットで検索した。
今まで自分が知らなかった世界に踏み込むのは、とてもドキドキするし楽しい。
検索してみて驚いた。
エッセイ、小説、童話、絵本等々、たくさんの公募があった。
挑戦出来る場所が、こんなにある。
なんて素敵な世界なんだ。
この時の私の目の形は、アニメならハートだったはずだ。
しかし、色々な条件があることに気が付いた。
テーマ、枚数、文字数、原稿用紙のマス数。
自分の書いた童話に当てはまる公募はなかった。
それでも、他に色々見ていたら、書けそうなものがあった。
――そう思った物は全部書こう。
最初に1000文字のエッセイを書き、送った。
次に、8000文字のヤングアダルト短編小説を書き始めた。
それを書きながら、4000文字のエッセイも書き始めた。
4000文字の手記の公募もあった――このテーマも書けそう。
書き始めた。
全てを書き上げるまで、仕事以外の殆どの時間をパソコンと過ごす毎日。
その間、現実はすっかり置き去りだった。
今までにないくらい、部屋の中や食生活が乱れた。
好きな料理にも、使う時間が惜しい。
最後に食べたのがいつだったか覚えていないくらい久しぶりに、お弁当屋さんの
のり弁にお世話になった。
この時期の主食だ。
ちなみに、白身魚のフライと磯部揚げ、ソースで食べる派です。
プラスチックの容器を捨てれば、食事が終わる。
洗い物をする必要がない。
食べ終わり、すぐにパソコンと向き合う。
ついには、食べながらキーボードを叩いていた。
脳内スクリーンに映し出される映像を、思いつくまま文字にしていく。
それが楽しくて仕方ないのだ。
この時点では、文字数など気にしてる余裕はない。
溢れて来る文字を全てタイプする。
文字は嫌いではない。
ビジネス書や自己啓発書なら、たくさん読んだ。
でも、小説はなかなか読み切れず、最後まで読んだ本が何冊かある程度だ。
正解がわからない。
それでも話は、とめどなく溢れてきた。
考えてもわからない。
そのまま、全部書き出そう。
今は便利な道具もある。
書いた文章はAIに壁打ちしながら、自分で直していく。
その作業が後に「推敲」というものだと知る。
今こうやって書きながら、その時どんな状態でいくつもの作品を同時に書いていたのか。
振り返ってもよく思い出せない。
とにかく、何かにとり憑かれたように書いていた。
ヤングアダルト短編小説が書きあがる少し前に、絵本のストーリーだけでもいいという公募を見つけて、それも書き始めた。
ひとつ書き上げて、直して、誤字脱字を確認する。
そして少し時間を置いてまた読み直す。
完成させて、送る。
ヤングアダルト短編小説以外は、公募しているところのサイトから送ることができた。
ただ、パソコンの使い方に不慣れな私は、その作業がとても苦痛だった。
異世界召喚され、ヒャッハー!な気分から、急に辛い現実に連れ戻された主人公の気持ちが痛いほどわかる。
AIにやり方をたずね、その通りにやっても上手く行かない時は、紙の原稿用紙に鉛筆で書きたいと何度思ったことか。
――PDFに落とすとか、わけわかんない。
あーもう、脳みそ動きません。
やーめた……。
と、なった日もたくさんあった。
その度、ここまで作ったのに、ここで諦めるなんて、絶対に嫌だ。
その気持ちだけで、出来るまでやる。と決めて完了させていった。
苦手な作業が辛いのは本当だ。
でも、ひとつひとつを越えられたのは「ごっこ遊び」をしていたからかもしれない。
私は文章が書ける自分に、ずっと憧れていた。
芸能の仕事をしていた若い頃は、本当に何も書けなかった。
だから、書けることが嬉しくて仕方なかった。
公募記事を見ながら、脳内編集者と話しをする。
「先生、こんなテーマのエッセイお願いします」
「あ、これなら書けそう。締め切りいつ?」
「〇月〇日です。いけますか?」
「それだけあれば大丈夫。書かせて頂きます」
と、勝手に仕事として引き受けるのだ。
執筆業界のことは何も知らない。
でも、想像することはできる。
きっと、売れっ子作家なら、こうに違いないみたいな――
仕事として文章を書くなら、これくらい当たり前なのではないか。
それが今の自分にできる、できないは関係ない。
その「当たり前」を、「ごっこ遊び」しながら、今の自分でできる範囲を引き受け、書き上げた。
書き始めた時には、足元が寒くてひざ掛けを使い、ヒーターを点けていたが、全作品を書き終え、送り、最後に短編小説の原稿を郵送した頃には、すっかり温かくなり、桜の花が咲き乱れていた。
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