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王神愁位伝 第4章【葬華なる銀昏架】 第2話 亡き英雄たちへ、感謝を込めて

第2話 亡き英雄たちへ、感謝を込めて

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王神愁位伝 設定資料集【ココロのノート】




"カンカンカンカン!!"

「おーいっ!こっちに持ってきてくれー!」
「こっちにも頼むー!」


空に輝く太陽の光により、宝石のように光り輝く湖。その中央に、堂々と聳え立つ太陽城・・・
数日前、太陽族の集まり "太陽たいようかく" の途中で爆発が起きた。爆発元は太陽城の地下 ”水龍すいりゅう監獄かんごく”。
そこに投獄されていた月族のヌチが、周囲もろ共、跡形もなく焼け焦げていた。

「なんや、ひどい爆発言うても、城はぴんぴんやないかい。」
そんな太陽城の端の端。正門外にどんよりと佇む ”雲の宮殿” 。——通称、コウモリの洞窟・・・・・・・
そこには、昨日戻った戦術班の洋一よういちが、窓から太陽城修復に取り掛かる人々を眺めていた。

「なんと言っても、この城には世界最強と言われる水龍様・・・・・・・・・・・・がいるからね~。外装はちょちょっと直してたわよ。」
「なんやて?!そんなことも出来るんかいな、水龍はんは!すっごいな!俺も現場にいたかったわー。」
ミドリは何処か自慢げに話していると、洋一が食いつく。その横では、書類だらけの机で、黙々と作業をこなすココロの姿があった。

"グィッ!"
「ちょっ、おい!」
洋一はそんなココロに近づくと、持っていた資料を奪い、読み始めた。

「・・・ん?なんやこれ、爆発の原因?参部さんぶの資料か?んーと・・・

今回の爆発は、ソール地方で捕まった月族ヌチによる自爆・・である可能性が高い。我が城の地下牢は、水龍により厳重に管理されており、”水龍すいりゅう監獄かんごく”は近寄ることさえできない。そこに近づこう者は、たちまち水に飲み込まれ・・・

参謀本部報告書より

——なんや、やけに長くて疲れる文章やな。」
「要は、”監獄は誰でも近づけるもんじゃないから、月族の自爆である” ってことでしょ。」

今度はミドリが、コーヒー片手に洋一の資料を奪い言うと、ココロに戻した。
「まぁ、そうでしょうね。そうとしか考えられないもの。ってか、こんな当たり前の内容、よくこんなダラダラと報告書に書けるわね。一文で終わるじゃない。」
「・・・・・。」

そう話すミドリの隣で、無言で何か考え込んでいるココロ。
そんな彼の様子に、洋一が話しかけようとした時——
”バンッ!!!”

「・・・?お!副隊長!今日も大層疲れとるな!」
コウモリ部隊 副隊長のバンが部屋に入ってきた。いつもの如く、目の下には大きなクマがあり、疲れた表情だ。満面の笑みを向ける洋一に、バンはじとっとした瞳を向けた。

「・・・お前は元気そうだな。琥樹こたつは、素直にタイヤンに行ったのか?」
「えー、あー、めっちゃ嫌がってたけど、蹴飛ばしてきたわ!あっはっは!」
「あんたも大概鬼畜ね。」
すると、バンは大量の書類と本を机に置いた。

"ドサッ"
「はぁぁあ・・・」
「なんや、魂が今にも抜けそうやな。」
「これは?」
疲労困憊のバンに、ココロが近寄り、大量の書類と本を見て聞いた。

ロストチャイルドの再調査方針、今週中にまとめて出せとさ。」
「今週中?!」
「何よそれ!絶対、参謀本部さんぼうほんぶの嫌がらせじゃない!!」
「それ以外ねえよ・・・はぁぁぁああ。”太陽の核”で、公式に再調査を許可して貰ったが、参謀本部は面子が立たねえからな。全く。何が太陽の頭脳集団だ。利権集団だろ。」
「お、副隊長、毒吐いとる。」

そんな会話などお構いなしに、大量の資料に目を通しながらココロが言った。
「・・・獅司ししの件は?」
「うーん・・・難しそうだ。確かに、朱鳥あすか右羽うばの活躍で、今回の月族襲撃は被害を食い止めた。だが・・・だからと言って、獅司が犯したと言われている "王族殺し" が無かったとは言い難い。しかも、王族殺しに関わったと言われるのは、狗鷲いぬわしさんたちの上の代の幹部たちだ。あの人たちは知らなかった可能性だってある。根拠が少ないんだ。——今のところはな。」
「今のところ?」

ココロが聞き返すと、バンは拗ねたように唇を尖らせた。
「"根拠が無いなら、見つければいいですね!”・・・だとよ!!!」
「坂上さんか・・・」
「確かに!坂上はん、相変わらず頭ええな!」
「確かに、じゃねぇよ!!方法考えたり、族内の調整したり、動いたりすんのはこっちなんだからな!!ったく・・・。伊久磨いくまたちが、決死の覚悟で頑張って掴んだ種だ。なんとか花咲かせたいが・・・獅司の件は、族通り越して、かなりセンシティブな話しだからなぁ~・・・」

書類だらけの机の上で、バンが涙を流していると、ミドリが辺りをキョロキョロ見渡した。
「あれ、そういえば、伊久坊やがくちゃんはたちは?」
「ぁあ、鳥界境ちょうかいきょうに行ってる。」
鳥界境ちょうかいきょう?なんでまた?」
「弔いに行きました。英雄たちの。」

ココロが、窓の外で輝く太陽に瞳を向け言った。






♢♢♢🐦♢♢♢☀♢♢♢🐦♢♢♢



"シュン!シュンシュンシュン!"

「ちょ、ちょっと!お前ら、待て・・・待ちやがれ!!!ゴリラ共!!」
「い、いっくん、大丈夫?顔、真っ青だよ?」


ソール地方西沿岸に佇む鳥界境ちょうかいきょう
月族ヌチとの激闘から、2週間が経っていた。
凄まじい戦いがあった場所だったが、新しい芽が生え、自然を取り戻しつつあった。その光景は、鳥界境という自然の脅威を感じさせる。

この場所に、再び足を運んだ伊久磨いくまがくすずめ千鶴ちづる幸十さちと

「なんちゃー?伊久磨いくまっち、体力落ちたっちゃ?」
「ありゃりゃ、わっちが鍛え直してやるっちゃ!!」

どこか疲れ切った様子の伊久磨いくまの周囲を、コウモリの翼を広げながら、纏わりつく雀と千鶴。その様子に、伊久磨いくまの苛立ちは頂点に向かって伸びていき・・・
「あーーー!!誰のせいだよ!!なんとか ”太陽の核” を乗り切ったがな!!鳥界境ここに入る許可とんの、死ぬほど!!!!面倒だったんだからな!!くそ!!」
「さっすが、わっちらのマブダチ、伊久磨いくまっちっちゃ~。」
「真のマブダチっちゃ~。」
「ちっげーよ!!きもい!離れろ!!てめーらのためじゃねえからな!狗鷲いぬわしさんのためだ!!!!」

——雀の懐に抱えられた袋。そこには、狗鷲の遺骨が入っていた。

朱鳥家は代々、故人の弔いは火葬した後、残った骨を鳥界境の土に埋め、自然に返すこととされていた。しかし、家鳥かちょう右羽うばに関しては、次を引き継ぐ者が、骨の一部を小さな袋に入れ、肌身離さずに持つことで、朱鳥家の掟でもある ”共存共栄きょうぞんきょうえい” を引き継いでいくとされている。

その話しを雀たちから聞いた坂上の計らいにより、数日前、狗鷲の遺体を、太陽城の専用施設で火葬していた。
その後、太陽城の土に埋めることを勧めたのだが、雀と千鶴は、鳥界境の鷲鷹わしたか楊鵡ようむのいる墓と一緒に埋めたいと願い出たのだった。
そのため、伊久磨いくまが各方面になんとか了承を取り付け、狗鷲の遺骨を持ち、鳥界境に戻ってきたのだった。

「ってか、お前の両親の墓はどこだよ!なんで、朱鳥の墓地に無いんだよ!!?」
「ん~・・・確か、あそこが墓地だったはずっちゃ~・・・?」
「そうっちゃね、たぶん!」
"ブチッ"

朱鳥家の墓とされる場所に行ってみたものの、鷲鷹たちの墓が見つからなかった5人。どうもうろ覚えな雀と千鶴に、再び怒りの沸点が湧いていく伊久磨いくま
そして——
"ガン!ゴン!"
「いてっ!」
「痛いっちゃ!!」
「ふざけんな!ここに入るために、どれ程の労力をかけたと思ってんだ馬鹿!!真剣に考えろ!」
「馬鹿じゃないっちゃ!」
「そうっちゃ!ちょっと忘れちゃっただけっちゃ!」

"バシッ!!"
「それが馬鹿なんだよ、馬鹿!!!その小せえ脳みそかっぽじって考えろ!!」
「い、いっくん。落ち着いて・・・」
「この広大な鳥界境で、どうやって墓探すんだよ!!頼りはこの馬鹿二人しかいねぇんだぞ!!」
「墓は絶対あるっちゃ!」
「なんで断言するんだよ。」
「父ちゃん母ちゃんの最期を見たのはいぬっちゃ!いぬは絶対絶対絶対、父ちゃんたちの墓、つくるっちゃ!あっちらみたいに、忘れないっちゃ!」
「・・・自覚はあんのかよ。」

雀の非論理的な根拠に、伊久磨いくまは頭を抱えたものの、確かに雀の言う通りだと感じてはいた。
伊久磨いくま相対あいたいした、狗鷲の姿を見ればそうだ。
自身を殺そうとするソール軍たちを、守り戦い抜いた英雄そのものである彼が、そのあるじの墓を作らないとは到底考えられない。
ましてや朱鳥家では、鳥界境の地に骨を戻してこそ、安らかに眠れると言われているのだ。
何処か人目が付かず、壊されることのない場所に、大事に大事に作られているはずだ。
伊久磨いくまが考えていると・・・

「——幸十?」
岳が、少し先にいる幸十に声をかけた。
何処か歩いて行こうとしている。

「おい、あんま離れんなよ。はぐれて迷ったら厄介だ。」
伊久磨いくまが注意すると、幸十は少し先を指さして言った。



「・・・ネズミ。
「ぁあ?」
幸十の言葉に、伊久磨いくまたちが近づくと——



"チチ・・・"



そこには、土色の体毛に包まれ、どこか印象的な緑色の瞳を持ったネズミがいた。
普通のネズミより、上品さを感じさせるネズミに、伊久磨いくまが違和感を覚えていると・・・

「ぉおー!美味そうなネズミっちゃー!」
「持って帰って、豆じぃたちに調理してもらうっちゃ!!」
「やめろ。調理する前に、ひっくり返るわ。」
獲物を狙う2人に、真顔で止める伊久磨いくま
すると、ネズミはどこか奥の方へ動き出すと同時に、幸十は後を追い始めた。

「おい!お前も、ネズミを食うとか言うんじゃねぇぞ!!絶対、城に持って帰らないからな!!」
伊久磨いくまがすかさず言うと、幸十は振り返って言った。




「ついてこう。」






「・・・は?」
「え?」
「その・・・ネズミっちゃ?」
幸十の言葉に、混乱する4人。
しかし、そんなのお構いなしに歩いていく幸十。

「ちょ、ちょっと待て!!正気か?!なんでネズミなんか・・・」
「早く来なよ。置いてっちゃうよ。」
ネズミについて行くのが当たり前とでも言うように、歩いて行く幸十。

「そ、そうっちゃね!!」
「わっちも、ついていくっちゃ!!」
「え・・・ほ、本当に行くの?」
「あーーー、くそ!!分かったよ!!これでやっぱ違うってなったら、お前、飯抜きだからな!!」
そう言って、ネズミを追う幸十に、ついて行くことにした4人だった。




♢♢♢♢♢♢♢🐁♢♢♢♢♢♢♢



——それから、7時間が経とうとしていた。
あれからひたすらにネズミの後を追って、移動した5人。
鳥界境でも、かなり奥に進んだことが肌身で実感していた。
もう太陽が沈む夕暮れ時。短い夜が訪れようとしていた。

「おい、はぁ・・・こんなとこまで来て・・・お前ら、帰る道分かってるか?」
「大丈夫っちゃ~。鳥界境なら、なんとなく分かるっちゃ~。」
「なんとなく分かるっちゃ~。」
「その ”なんとなく” が、怖いんだが。」
「でも・・・こんな所、来たことないっちゃ。」
「は?」
「そっちゃね。こんな端っこの岩山・・・・・・・・・」

そうこう話していると——
"ドンッ!"
「いてっ!」
「うわっ!」
「ぎゃっ!」

先頭を歩いていた幸十が、突然立ち止まった。
いきなり止まり、雪崩のようにぶつかっていく4人。
「なんちゃー・・・、さっちー。」
「どうしたっちゃ?」
「おい、いきなり立ち止まるな・・・」

すると、幸十は真っ直ぐ前を向き、視線の向こうを指さした。
「・・・小屋?家?」
「?」

鳥界境の端の端、人っ子一人いない小さな岩山。
この地を制する朱鳥あすかの者たちもあまり立ち入らない、端の岩山に、小屋・・・というには少々大きな、古びた木の建物が目の前に現れた。
随分古いのか、木々は腐り、藻を生やしており、所々隙間風が通っている。

「何だ・・・?こんなとこに・・・小屋?」
伊久磨いくまたちは、恐る恐る小屋に近づく。すると、誰かが住んでいたのか、カビた布団が一式と、バケツがあった。
全員が呆然と小屋の中を見ていると、ふと雀が呟いた。

「ここ・・・」
"グィッ!バサッ!!"
「おい!!」

何か閃いたのか、雀がいきなりコウモリの翼を広げ、飛び立つ。
「雀?!」

千鶴は驚きながらも追いかけ、伊久磨いくまたちも否応なしに向かう。
すると雀は、上空から何か・・を探すかのようにキョロキョロと見渡していると、ある地点で目が止まった。
「あ!あそこっちゃ!!」

そして今度は急降下していく。4人は訳分からずも、とりあえず雀に続いていくと——到着したのは、とある小さな川・・・・・・・・だった。

「ここ・・・”いぬの故郷” っちゃ。」
右羽うばの?」
「そうっちゃ!前に父ちゃん、言ってたっちゃ!!狗とは、鳥界境はずれの岩山、狗の故郷にある川で出会ったって!!さっきの小屋は、狗の住んでた小屋っちゃ!!父ちゃん、家鳥かちょうとしての始まりは、この川でいぬと出会ったことだって・・・」
その話を聞き、伊久磨いくまは川を見つめた。

「まさか・・・」
そして、何か気づいたのか、川沿いに敷き詰められている岩を見始めた。
「いっくん?」
一つ一つ、何かを探すように見ていると、一際大きな岩を見つけた。そして、その大きな岩に、不自然に重ねられた大きな石たちを退かしていく。

「・・・っ、あった・・・。」
「え?」
伊久磨いくまの言葉に全員近づくと、とある石に、不恰好な字・・・・・が書かれていた。








「父ちゃ・・・母ちゃ・・・、ここに埋まってる・・・ちゃ?」
その文字に、雀と千鶴が近くの地面に瞳を向け掘り返そうとしたが、伊久磨いくまが止めた。



「・・・いや、埋まってんじゃねぇ。川だ。この川にいるんだ。」



伊久磨いくまは咄嗟に理解した。

ソール軍に殺されたあるじたち。首だけを取り返し、2度と奪われたり、荒らされず、安らかに眠ってもらうにはどうしたらいいか。
必死に考えた末、狗鷲いぬわしが出した結論は火葬し骨を、自分たちの原点でもあるこの川に流すこと・・・・・・・・・・・・・・・・・・・だったのだろう。
そうすれば、もう誰も掘り返したりせず、尚且つ、自分たちしか知りえない、この静かな場所で安らかに眠れる。

狗鷲いぬわしさん・・・あんたって人は・・・)
”ツー・・・”
伊久磨いくまは、いつのまにか瞳から一筋の涙を流していた。

狗鷲自身もソール軍に追われ、殺されそうになり、大切な人々を沢山沢山殺され、1人残されても尚、最後の最期まで主人の安寧と朱鳥の無罪を信じ、太陽族の1人として戦い抜いた人。
大切な主人たちの骨は、朱鳥のしきたり通り、埋葬したかっただろう。そして、次を担う雀たちに渡すため、骨を持っておきたかっただろう。
それでも、全てを一人で飲み込み、この川に主人たちの骨を流した時。狗鷲の気持ちは、どんなに辛かったろうか。

「・・・っ。」
伊久磨いくまは考えれば考えるほど、涙が止まらなくなっていた。
”ぎゅっ”
伊久磨いくまっち。」

そんな伊久磨いくまを見て、雀と千鶴も涙を流し、伊久磨いくまを抱きしめた。
「さっちーも、がっくんも!!」
「ありがとうっちゃ!!父ちゃんたちの、お墓見つけてくれて!」
「一緒に戦ってくれて!」
「あっちら家門の、無実を信じてくれて!」
「わっちらと一緒にいてくれて!」




「「本当に本当に、ありがとうっちゃ!!」」




涙を流す2人だが、同時に、これまでに無いほどの笑顔を見せた。


「・・・ぅう、くそ!!!うっせ!ぐすっ・・早く、狗鷲さんを主人の元に送ってやれ!!」
伊久磨いくまは顔を見られまいと、瞳に腕を当てながら言う。
その言葉に、雀と千鶴は持ってきた狗鷲の遺骨を袋から取ると、川に流した。そして、雀は、優しい手つきで川を撫でるように触った。

「父ちゃん、母ちゃん。また会えてよかったっちゃ。——父ちゃん、父ちゃんが言ってた通りだったっちゃ。あっちらのこと、ちゃんと分かってくれる仲間、出来たっちゃ!」
「最高の仲間っちゃ!」
いぬも褒めてたっちゃ!」
「大好きな仲間っちゃ!」
「わっちら、幸せっちゃ!」
「だから・・・だから、みんなで、ゆっくり休んでっちゃ!」

そう言う2人の瞳には、再び大量の涙が頬をつたって流れていた。止まることのない涙を、川が受け止め流していく。その2人の隣で、幸十も川を見つめていると、暫くして口を開いた。



「——共存共栄きょうぞんきょうえい、だからね。」



その言葉に、2人は一瞬目を見開くも、嬉しそうに笑顔を見せた。
「そうっちゃ!!!」










"ジジ・・・・"
そんな時、幸十の無線が何やら鳴る。

「・・・?坂上さんか?」
伊久磨いくまが気づき、涙を拭きながら聞くと・・・


"くぉぉぉぉおら!!坊主!!!どこにいるんだい?!?"




「うわっ!!」
突然、無線から、医療班 メリーの怒声が鳴り響いた。あまりの大きさに驚く5人。

「え、あ・・・」

"幸十!幸十!消えた!消えた!"

その先では、騒ぐタマゴたちの声も。

「お前・・・まさか、無断で病室抜け出してきたんじゃ・・・」

"死にたくなきゃ、早く戻ってきな!!!ブチッ!!"

「・・・・・・・・・・・どうしよう。」

「ったく、お前は・・・。はぁ、帰るか。」
「っちゃ!!!!」




騒ぐ幸十たちの後ろで、岳は石を元に戻しながら、その隅に書き足した。
そして、背負っていた大きな袋から”朱鳥あすかよろい”を取り出すと、優しく置いて、その場を去っていく。
主を失くした”朱鳥あすかよろい”は、メンテナンスされたのか綺麗に整えられ、同時に嬉しそうにその場で光輝いていた。




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