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ADHDのわかっているのにできないを科学する!叱る前に知りたい内受容感覚の弱さ | ADHD | 大人のADHD | 発達障害 | 発達特性 | 特性 | 不注意 | 衝動性 | 多動 |

こんにちは、春乃ひかりです。

「片付けなさい、宿題を始めなさい、と何度も約束したのに、全く動こうとしない」
「怒られた瞬間はわかったと言うのに、数分後にはまた同じ行動を繰り返すのは、反省していないから?」

我が家の息子達2人ともこれに当てはまります。
特に次男がこうなのですが、叱られた事に反抗してやらないと言うより、
本当に何もしようとしないので、普通の状態では無いなと思っていました。

ADHD(注意欠如・多動症)特性を持つお子さんを育てる中で、
このように言うことを聞かない、わかっているはずなのに動けないという態度に対して、日々のイライラが募り、感情的に強く叱ってしまう保護者の方は多いのではと思います。

親としては、本人の将来を思えばこそ、ルールや約束をしっかり守れる子になってほしいですし、
わざと約束を破ってサボっているように見える姿に、反抗的なのかなと思いがちです。

しかし、近年の発達障害と神経科学の最新研究では、ADHDを持つ子どもたちの約束を守れない、感情をコントロールできないという行動は、本人のわがままややる気の欠如ではなく、
身体の内部のサインを感じ取る内受容感覚が弱いために、行動を切り替えるタイミングを脳がキャッチできないからであるという驚くべき事実が解明されています。

今回は、叱る前に知っておきたいADHDの脳の隠れた特性、内受容感覚の弱さについて解説します。

1. 脳が身体の内側の声を聞くセンサー、内受容感覚(Interoception)とは?

発達支援や作業療法(OT)の分野(Additude Magazineなどで特集されている感覚統合研究など)において、
視覚や聴覚、触覚といった五感、さらにはバランスを司る前庭覚などに続く第8の感覚として重要視されているのが、内受容感覚(Interoception - ないじゅようかんかく)です。

これは、心拍数の変化、呼吸の深さ、筋肉の緊張、胃の張り、尿意、あるいは体温の変化といった、「自分の身体の内部の状態(生理的なシグナル)」を脳が正確にモニターし、感じ取るための感覚システムです。

私たちは無意識のうちに、この内受容感覚を通じて自分の身体のコンディションを把握しています。
例えば、

心臓がバクバクして、筋肉が緊張しているから、
自分は今怒っている(または緊張している)んだ。
少し深呼吸して落ち着こう

と脳が判断し、自発的に行動や感情を切り替える(自己調整する)ことができるのは、この感覚が正常に機能しているおかげです。

2. なぜADHD脳は内受容感覚が弱いのか?

しかし、ADHDの脳は、この内受容感覚のセンサー(脳の島皮質と呼ばれるエリアの活動)が非常に独特で、
身体からの生理的シグナルを脳がリアルタイムでキャッチしにくいという特性を持っています。

この感覚の弱さが、以下のように行動のコントロール約束の不履行に直接悪影響を与えています。

  • 限界に達するまで自分の身体のサインに気づけない:
    エネルギーが完全に切れて疲労困憊していること(心拍や筋肉の疲労)や、膀胱が満杯であること(尿意)などを、限界値に達するまで脳がキャッチできません
    そのため、そろそろ休もう、トイレに行こう、と自発的にタスクを切り替えることが物理的に不可能です。

  • 感情メーターの急激な「0から100への暴走」:
    怒りやイライラが高まっているとき、身体は心拍の上昇手の平の発汗、アゴの噛み締めといった怒りのサインを出しています。
    内受容感覚が弱いADHD児は、この途中のサイン(メーター30や50)を無自覚のまま通り越し
    脳の防衛システムが爆発するメーター100(大癇癪)になって初めて、自分が怒っていることに気づきます

  • 指示(タスク)の切り替えの遅れ:
    脳内の多動(情報過多)や過集中によって、周囲からの呼びかけ(「片付けなさい」という言葉)が、身体感覚(自分の今の体勢や行動の状態)と脳内で正しく結びつかないため、
    わかっているのに、身体が次の行動へスタートを切れない(スターター障害)という現象が起きます。

彼らは約束を無視しているのではなく、
脳が

今、行動を切り替えるべき身体的なタイミングを感知できていない状態

なのです。

3. ジャッジ(叱責)を止め、身体の感覚を呼び覚ます伴走者へ

約束を守れない子どもをだらしないとジャッジするのを止め大人の側が身体のサインを言葉で可視化してあげるサポートが必要です。

専門家は、内受容感覚の弱いADHD児に対し、

早くしなさい!どうしてできないの!

と問い詰めるアプローチは無効であり、
本人の脳の緊張を高めてさらに感覚をフリーズさせるだけだと警告しています。

必要なのは、親や教師が外付けのセンサーとなり、
子どもの心拍や呼吸、体の硬さを観察し、

「今、肩がカチカチになっているよ。疲れてイライラしているサインかもしれないね」
「心臓がドキドキしているね。一度深呼吸しようか」

と、本人が自分の身体の内側の状態に気づくための

「ラベリング(言葉かけ)」

を優しく手伝ってあげることです。

身体の感覚と脳が正しく結びついて初めて、
子どもは自発的

「あ、少し休もう」

「落ち着こう」

と、行動をコントロール(自己調整)できるようになります。

4. 今日からできる小さな一歩

お子さんが指示を守れずにフリーズしていたり、イライラしそうになったとき、まずは今日からできる小さな一歩として、

「約束したでしょ!」と怒鳴るのを完全に止め、

お子さんの胸や肩にそっと手を当てて、

「今、心臓がトントンって早く動いているよ。びっくりしちゃったんだね」

と、身体の感覚をそのまま言葉にして教えてあげることから始めてみませんか?

叱られるプレッシャーをシャットアウトし、
本人が自分の身体の声をキャッチする手助けをするのです。

その温かい感覚の可視化が、
お子さんが自らの力で感情をコントロールし、
社会の中でしなやかに生きていくための、最も強い心の根っこを育てます

まとめ

わかっているのにできないのは、だらしなさや反抗ではなく、
脳と身体のセンサーのズレによるものです。

身体の内側の声に耳を傾けるのを優しくサポートしながら、
お子さんが自分の脳と身体を上手に扱っていけるよう、
温かく見守っていきましょう。

あなたのご家庭ではお子さんの「約束を守ること」や「癇癪を起こす前の兆候」に対して、どのような対応や見守りの工夫をされていますか?
良かったらぜひコメントで教えてください。

用語解説

  • 内受容感覚(Interoception): 呼吸、心拍、筋肉の緊張、空腹感、尿意、体温変化などの「身体の内部の状態」を脳がモニターし、感じ取るための感覚システム。自己の感情調整(アンガーマネジメント)や自己認識の土台となる極めて重要な「第8の感覚」。

  • 島皮質(Insula): 脳の大脳皮質の一部であり、内受容感覚からの情報を受け取り、感情処理や自己意識、身体の生理的コンディションの統合などを行う主要なエリア。ADHDなどの発達特性を持つ人は、この領域の活動特性が独特であるとされる。

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