ハイファに戻って/太陽の男たち
"エルサレムを経由して車がハイファの丘陵に着いた時、サイード・Sは何かが自分をおし黙らせるのを感じた。彼は口を閉ざした。哀しみが内部にこみ上げ、一瞬、帰ろうという想いが彼を誘った"1972年発表の本書はパレスチナ問題の過酷な真実に迫る7篇。良作。
個人的には主宰する読書会の課題図書として手にとりました。
さて、そんな本書は現代パレスチナを代表する小説家、ジャーナリストであり、36歳の若さで自動車に仕掛けられた爆弾により暗殺された事でも知られる著者の遺稿集から表題作の2つの中編『ハイファに戻って』『太陽の男たち』と5つの短編を取り上げた一冊なのですが。
やはり表題作、イスラエルが建国された年、イスラエル軍から攻撃されたハイファから命からがら逃げ延びた夫婦が残してきてしまった息子を探して20年ぶりにハイファの家に戻ってくる『ハイファに戻って』また、それぞれのっぴきならぬ事情に迫られる3人のパレスチナ難民がイラクのバスラからクウェイトへ空のタンクに潜んで密入国をはかる『太陽の男たち』は、それぞれ読み応えがあって、パレスチナ問題の複雑さとあらためて向き合わされる読後感でした。
また、それ以外の短編の中でも『悲しいオレンジの実る土地』イスラエル建国の一ヶ月前に発生したデイルヤーシン村民の虐殺事件に端を発したパニック的なパレスチナ人の避難を描いた作品は描写も含めて不穏さも含めて素晴らしく、印象的でした。
パレスチナ問題に関心がある全ての方にオススメ。
