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「行政AIのリアルと前進のヒント」を聴いてみた ~PMI日本支部 行政コミュニティ イベント2026参加レポート~

 2026年8月29日、PMI日本支部 行政コミュニティ主催のイベント「行政AIのリアルと前進のヒント」に現地参加した北川です。

 テーマは「行政」「AI」「プロジェクトマネジメント」。一見難しく見えますが、実際にはどの組織にも通じる実務的な内容でした。本レポートでは要点を絞って整理します。

イベント告知バナー(PMI日本支部 行政コミュニティ イベント2026)

講演①|泥舟プロジェクトにならないための要件定義

 登壇者は、政府情報システムの標準策定やPMO支援に携わってきた、一般社団法人ガバナンスアーキテクト機構 代表理事の高橋 邦明さんです。

1-1. まず、国はどこへ向かっているのか

 政府では、DXとAI利活用を一体で進める「AX」や、生成AIの調達・利活用ガイドライン、職員向けAI利用基盤の整備が進んでいます。

 その中で最も印象に残ったのが、この一枚でした。

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

 印象的だったのは、AI導入の順番です。低品質なデータのままAIを入れても、非効率を速くするだけで、現場には定着しません。

 先に行うべきは、BPRによる業務見直しと、データ定義・品質の整備です。そのうえでAIを適用することで、初めて効果が出やすくなります。

データマネジメントとBPRは、将来のAI活用の「土台」である。このため、PMOによるプロジェクト早期の段階でのレビュー・支援によりAIの的確な利用に導くことが重要

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

1-2. なぜ「泥舟」は生まれるのか

 後半では、業務系システムで要件定義が難航する理由が語られました。背景にあるのは、現場の多忙さ、品質・継続性への不安、属人的な知識、そして業務範囲の解釈違いです。

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

 業務要件から設計・開発・テストへ受け渡すたびに、情報の欠落や解釈のズレが積み重なる。これは行政に限らず、多くの組織に共通する課題です。

1-3. 打ち手は「AIが読める要件定義」

 ここからが本題でした。出発点は、とてもシンプルな問い直しです。

要件定義は、コミュニケーションツール。AIも開発者になった今、AI可読性のある要件定義であるべきではないか!

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

 解決策として示されたのが、AIも理解できる構造化された要件定義です。DevSpecで業務・データ・機能を自然言語で整理し、TENETでプロジェクトの価値観や共通ルールを定めることで、AI活用のガードレールを作ります。

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

 これにより、要件定義は「分厚い文書」から「動く画面で検証できる仕様」へ変わります。現場は早い段階で確認でき、開発側も解釈のブレや手戻りを減らせます。

「レンガ積み職人」から「アーキテクト」へ。

出所:高橋邦明氏 講演資料「泥舟プロジェクトにならないための要件定義」

 特に印象に残ったのは、SEの役割が「作業者」から「アーキテクト」へ移るという視点です。AIで初期実装を効率化できれば、人は非機能、例外処理、アーキテクチャなど、より高度な設計に集中できます。

講演②|自治体における生成AI利活用事例と、PMの価値提案

 次の登壇者は、PMI日本支部理事で行政コミュニティ副代表の渡辺 恵士朗さんです。自治体のCIO補佐官やPMO支援の経験をもとに、生成AI活用の実践例が紹介されました。

2-1. 事例の本編は、北海道網走市

 中心となったのは、北海道網走市での伴走支援です。目的は、外部専門家がツールを納品することではなく、職員自身が生成AIを業務に活用できる状態を作ることでした。

 支援では、研修、個別相談、ポータル、Tips集、アイデアソンなどを組み合わせ、学びと実践が循環する仕組みが設計されていました。

出所:渡辺恵士朗氏 講演資料「自治体における生成AI利活用事例と、プロジェクトマネジメントの価値提案」

 個別相談で得た知見がTips集になり、研修録画がポータルに蓄積され、アイデアソンの成果が事例化される。単発施策ではなく、回すほど組織内に知見が貯まる設計だった点が特徴です。

2-2. これは、プロジェクトマネジメントの話だった

 成功要因は、職員が自ら動ける仕組みを作ったことです。これは、PMBOK®ガイドが重視する「価値提供」や「ステークホルダーとの協働」とも重なります。

出所:渡辺恵士朗氏 講演資料「自治体における生成AI利活用事例と、プロジェクトマネジメントの価値提案」

 一方で、プロジェクトマネジメントの原理・原則を最初から明確に設計できていたわけではなく、結果として重なった面もあったとのことです。だからこそ、行政組織にPMの考え方を普及させること自体が重要だと感じました。

出所:渡辺恵士朗氏 講演資料「自治体における生成AI利活用事例と、プロジェクトマネジメントの価値提案」

 これは行政だけでなく、生成AIを現場に定着させたい民間企業にも通じる示唆ではないでしょうか。

まとめ ~イベントで最も強く感じたこと~

 今回のイベントで最も強く感じたのは、行政AIの本質は「最新技術の導入」ではなく、「業務・データ・人の動き方を整え直すこと」にあるという点です。

 高橋さんの講演は、AI活用の前提として要件定義とデータ整備を見直す重要性を示し、渡辺さんの講演は、自治体職員が自ら使いこなすための仕組みづくりを示していました。

 共通していたのは、AIを単独の道具として見るのではなく、プロジェクトマネジメントの力で現場に根づかせる視点です。行政にも民間にも、ここに次の変革のヒントがあると感じました。

 本イベントは、9月30日(水)24時00分まで、オンデマンド配信中です!イベント当日に参加できなかった方も、こちらよりお申し込みいただければオンデマンドで内容をご覧いただけます。ぜひ、ご都合の良いタイミングでお楽しみください!

▼イベント申し込みページ(9月29日(火)24時00分まで申し込み可能!)
pmi-japan.eventos.tokyo/web/portal/426/event/17003

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