カーブドッチ物語 #27|温泉ならではの「湯上がり読書会」
暦の上では春を迎えても、まだひんやりとした風が残る角田山の麓。何か新しいことを始めたくて、ウズウズしてしまう季節です。
という訳で、私がずっと温めてきたちょっと変わった読書会をご紹介します。
じっくりと、本に没頭する時間
カーブドッチに来ると、まず最初に目に入る大きな建物が「ヴィネスパ」です。2009年に開業した日帰り温泉ですが、アルカリ泉の美肌の湯が好評で、開業から17年を経てもなお、毎日多くのお客様で賑わっています。
この館内を、丸ごと本屋さんに変えたのは3年前のこと。10のテーマに分かれて並ぶ4,000冊の本は、選書家の幅允孝さんが一冊ずつ選んでくださったものです。
色とりどりの美しい装丁に囲まれる空間は、まるで本のギャラリーのよう。リニューアル後は、ワインやコーヒーを楽しみながらお気に入りの一冊を探す姿が、日常の光景になりました。若いお客様がスマホではなく本を開く姿を見ると、なんだか懐かしく、うれしくなります。
「選んだ本を読みきれないから、続きは家で」と買っていかれる方も多く、4,000冊のうち、実に半分ほどが一年以内に旅立っていきます。
「本屋さん」は、私の中学生のころからの夢でした。この空間が生まれて、一番喜んでいるのは、間違いなく私です。

温泉ならではの読書会
そんなヴィネスパで、この春から新しい取り組みを始めることにしました。 その名も「湯上がり読書会」。温泉施設らしい、ちょっと心惹かれる名前でしょう?

これは、実は、私自身がずっとやりたかった企画でもあります。
何千冊という本に囲まれて働いているのに、じっくりページをめくる時間はなかなか取れない。日々の仕事に追われ、仕方がないと半ば諦めていました。でも、時には仕事を忘れて、ただ「本に囲まれる幸せ」に浸る日があってもいいはず…。
ならばいっそ、自分で作ってしまおう。そんな、少し身勝手な動機から生まれた読書会なのです。
本との出会いを探す一日
この会には、少し変わったルールがあります。それは「家から本を持ってこない」こと。
参加される方は、まずフロントにてお好きな時間にチェックインをしてください。その時に、温泉・タオル・ランチのチケットをお渡しします。読書会が始まる15時までは、完全な自由時間です。
早く来れるなら、7時の朝風呂からチェックインすることもできます。露天風呂で体をゆっくり温めたあとに、本を片手に中庭へ向かう。噴水の音を聞きながらページをめくるうち、いつの間にかうとうと…。

遅くともお昼前にはチェックインをお済ませくださいね。
ランチはレストランで、選べる和定食。お腹も大満足な「ギンダラ味噌漬けと鮭の幽庵焼き」はいかがでしょう。食後はまたお気に入りの一冊を携えて、場所を変えながら読書に耽る。誰に気を遣うこともなく、満喫できるひとり時間です。
そして、今の自分の心にぴたりとくる一冊を、ぜひ館内で見つけてください。いつもなら手に取らないような表紙。ふと目が合ったタイトル。そんな「新しい本との出会い」も楽しんでほしいのです。
気に入った本のお会計を済ませ、15時になったら読書会が始まります。ここまでは温泉も、お食事も、読書も、自分のペースです。
選んだ本はまだ最後まで読んでいなくても、もちろん構いません。簡単な自己紹介のあと、その本との出会いのお話から。
「この本の、ここが響いた」
「前から読みたかった」
「すごくいい場所を見つけた」
「心に残った言葉を教えて」などなど。
本というのは不思議なもので、良い出会いがあると、誰かに話したくなるものです。難しいウンチクはいりません。1時間ほど、進行役の私と気軽に会話のキャッチボールを楽しみましょう。
月に一度は、スマホを置いて
「湯上がり読書会」は、毎月第一水曜日。
数名揃ったら開く、少人数での穏やかな集いです。それくらいの、お互いの声がよく届く距離感が、ちょうどいいと思っています。
どなたも忙しい毎日を送っています。「たまには本にどっぷり浸りたい」と思っても、気づけばスマホを手にしていたり、明日の段取りを考えたり。ただ本のことだけを考える。そんな時間が、実は一番の贅沢なのかもしれません。

もしお時間に余裕があれば、読書会のあとにそのまま泊まるのもおすすめです。ワインを飲みながら、本の続きを夜更けまで楽しむ。本三昧、温泉三昧、ワイン三昧(?)な一日こそ、大人には必要だと思うのです。
当日の飛び入り参加も大歓迎。「noteを読みました」と声をかけていただけたら、とてもうれしいです。
次回は、いよいよ「ライターズ・イン・レジデンス」第二弾の物語をお届けします。 第一弾の原田マハさんの作品が出版されてから、第二弾の吉本ばななさんにたどり着くまでには、実は紆余曲折がありました。
作品が完成するまでの少し長い道のり。その舞台裏を、どうぞお楽しみに。
