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「早く決めろ」と急かされる立ち上げ期に——絵のないジグソーパズルに学ぶ不確実性の扱い方

この記事はこんな人へ

  • プロジェクトの立ち上げ期に、上からは急かされ、現場からは反発される板挟みのPM・コンサル

  • 誰も検証していない数字が、いつの間にか「決定事項」として扱われることに違和感がある人

  • 「早く決めろ」というプレッシャーの中で、何を決めて何を待てばいいのか分からない人

  • 不確実な状況を、根性ではなく、技術として乗り切りたい人


正直に言う。

以前、あるプロジェクトのキックオフに、立ち上げ段階から参画したことがある。

事業責任者は、熱意を込めて構想を語っていた。でも、「具体的に、いつまでに何を作るのか」を聞くと、答えは曖昧だった。

「要件はこれから詰めます。予算は概算です。スケジュールは、経営から半年と言われています」

半年、という数字だけが、なぜか確定事項のように扱われていた。その根拠を、誰も説明できなかった。

僕はその数字を、あまり深く疑わずに、そのまま計画に組み込んでしまった。

数か月後、その数字は、静かに、しかし派手に崩れた。

理由は、まだ分からなかった。


第一章 根拠のない数字を、そのまま信じた日

これは、僕自身の失敗の話だ。

「半年」という期限を前提に、僕はスコープと体制を組み立てた。誰も検証していない数字だったのに、僕はそれを、動かせない前提として扱ってしまった。

要件が固まってから、そのスコープでは半年に到底収まらないことが分かった。計画を組み直すことになり、僕はチームに謝ることになった。

あのとき僕がすべきだったのは、その数字を信じることでも、疑って対立することでもなかった。今なら分かる。

第二章 ジグソーパズル好きの知人から聞いた話

その少しあと、ジグソーパズルが趣味だという知人と、たまたまこの話をしたことがある。

「僕がやってるのは、箱に完成図が印刷されていないパズルなんです」と、彼は言った。

「普通のパズルなら、箱の絵を見ながら組み立てられる。でも絵柄がないと、まず端のピースから、形だけで確実にはまる場所を探すんです。真ん中の、色も形も判断できないピースは、無理にはめようとせず、周りが埋まるまで、あえて手元に置いておく」

僕は聞いた。「焦って全部埋めたくならないんですか」

「なりますよ。でも、無理にはめると、あとで全部崩して、やり直すことになる。それが一番遠回りなんです」

第三章 決めるべきものと待つべきものを、仕分けたPMの話

もう一つ、以前見た話がある。

別のプロジェクトで、あるPMが、立ち上げ期の混乱を前に、こんなことをしていた。

未確定な事項を、すべて一覧にして、「時間が経てば分かること」と、「誰かが決めれば分かること」に、仕分けていったのだ。

前者には、あえて手を付けなかった。後者については、決める権限を持つ人に、期限を切って判断を求めた。

チームの不安は、目に見えて減っていったという。何も決まっていない状況自体は変わっていないのに、だ。


三つとも、バラバラの話に見えるかもしれない。僕自身が根拠のない数字を信じてしまった話と、絵のないジグソーパズルの話と、未確定事項を仕分けたPMの話。

きっと、こう思っているはずだ。「全部バラバラじゃないか」と。

その通り。僕も長いあいだ、これらを別々の話だと思っていた。

第四章 そういうことだったのか

絵柄のないジグソーパズルを組み立てるとき、優れた組み立て方をする人は、目の前のピースを、無理に急いで全部埋めようとはしない。

まず、確実にはまる場所からはめていく。そして、まだ判断できないピースは、「今は分からない」と認めた上で、あえて手元に保留しておく。

立ち上げ初期の不確実性も、実はこれと同じように、性質の違う三つに分けられる。

一つ目は、時間が経てば自然に分かってくること。周りのピースが埋まれば、自然とはまる場所が見えてくる、あのピースのようなものだ。これは、無理に今はめようとせず、待てばいい。

二つ目は、誰かが決めさえすれば、その場で確定すること。これは、パズルのピースというより、「このピースは、ここにはめると決める」という、組み立てる人自身の意思決定だ。時間が経っても、自然にははまらない。誰かが決めるまで、待っても無駄になる。

三つ目は、そもそも予測できないこと。突然、想定外の形のピースが紛れ込んでいるようなものだ。これは消せない。起きたときの被害を小さくする備えをしておくしかない。

僕があの「半年」という数字を、そのまま信じてしまったのは、本来「誰かが検証して決めるべき」二つ目の種類のものを、「そのうち自然に確定する」一つ目のものだと、取り違えてしまったからだった。

そして、いちばん大事なことを言う。

決めないことは、無責任なのではない。焦って全部のピースを無理にはめようとすることの方が、結局は遠回りになる。何を今はめ、何を保留するかを見極めることこそが、立ち上げ期における、本当の仕事だ。

第五章 でも、これが一番難しい

構造は、もう分かったと思う。

不確実性を、「待てば分かること」「決めれば分かること」「予測できないこと」に仕分ける。理屈としては、驚くほどシンプルだ。

でも、ここで難しいことがある。

自分が今向き合っている一つひとつの不確実性が、その三つのうち、どれに当たるのかを見極めることは、渦中にいるとき、想像以上に難しい。おまけに、「早く決めろ」という周りのプレッシャーは、この見極めの時間そのものを、許してくれないことが多い。

そして、根拠のない数字が一人歩きし始めたとき、それをどう扱えば、対立せずに軌道修正できるのか。ここから先は、テキストを読むだけでは、なかなか身につかない領域になる。

第六章 最後のピース

ここから先は、立ち上げ期の不確実性を、実際にどう構造として扱い、現場でどう実装するかという、具体的な技術の話になる。

20年間、この局面で何度も判断を誤ってきた僕が、そこから作り上げてきた、不確実性を分解する技術と、決めない決定を正当化する技術、そして数字の一人歩きに対処する技術である。

第七章 その先にある未来

今夜、次のキックオフの前に、抱えている不確実性を一つ、紙に書き出してみてほしい。

それが「待てば分かること」なのか、「決めれば分かること」なのかを、一つずつ仕分けてみる。

明日の会議では、「まだ分かりません」ではなく、「これは、いつ、誰が決めれば確定する話です」と言えるようになっているはずだ。

その一言だけで、周りからの見え方が、静かに変わり始める。

第八章 最後のピースはこちら

「続きを読む」ボタンの先に、答えがあるわけではない。

ここから先にあるのは、あなたが自分のプロジェクトの霧を、実際に設計として扱うための、盤面だ。

立ち上げ初期の霧をどう設計するか——構造で読む、不確実性を前提に動き出す技術とPM・コンサル現場での実装アーキテクチャ


エピローグ

あのジグソーパズル好きの知人に、久しぶりに連絡してみた。

「あのパズル、結局完成した?」

「しましたよ。最後の一ピースがはまったとき、ようやく全体の絵が見えたんです。それまでは、本当に何が出来上がるか、自分でも分かってませんでした」

僕は今、自分が抱えているプロジェクトの中に、まだはめられずにいるピースを、いくつ持っているだろうか。

本記事を含む一連の記事は、書籍化を視野に入れながら執筆を続けている。

人を責めるより構造を見る。今日も、少し優しくなれる。


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問題は、人ではない。
構造が、人をそう動かしている。
だから構造が見えた瞬間、人は少しだけ、自分を許せる。
人を責めるより、構造を見る。今日も、少し優しくなれる。


©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090


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