【40〜50代のキャリア論】仕事の成長を感じなくなった理由——衰えではなく「螺旋階段型成長」への切り替え時
この記事は、似たような案件や似たような相談が続くようになり、「前みたいに成長している実感がない」ことに焦りを感じている、40代後半〜50代の実務担当者・PMのための記事です。
正直に言う。
深夜のタクシーの中で、窓の外を流れる街灯をぼんやり見ながら、ふとそう思った日がある。自分はもう終わったのかもしれない、と。理由は分かっていた。ここ最近、新しい案件を任されても、どこかで見たことのある展開になる。新しい部下を持っても、似たような相談を受ける。役職が変わっても、似たような会議が続く。若い頃にあった、階段を一気に駆け上がるようなあの感覚が、もう自分の中にない。
「成長が止まった」と感じたら、それは衰えではなく、階段の形が変わったサインだった
第一章 似たような炎上案件を、また任された日
先月、また炎上案件のヘルプに呼ばれた。関係者を集め、状況を整理し、リスクを洗い出し、撤退ラインを決める。動き自体は、10年前とほとんど同じに見えた。会議室を出たあと、ふと思った。自分はこの10年、同じことを繰り返しているだけなんじゃないか。新しいスキルも、新しい肩書きも、あの頃と比べて何が変わったんだろう。若手が同じ案件で必死になっているのを見て、複雑な気持ちになった。かつての自分と、今の自分の違いが、うまく言葉にできなかった。
第二章 部下からの相談も、既視感しかない
部下からの相談も、似たパターンが続いていた。人間関係のこじれ、優先順位の付け方、上司への伝え方。話を聞きながら、頭のどこかで「これ、前にも聞いたな」と思っている自分がいた。新鮮さがない。刺激がない。以前は、こうした相談を受けるたびに自分も一緒に悩み、一緒に考えていた気がする。今は、答えがすぐに出てしまう。それは楽になったということなのか、それとも、何かを失ったということなのか。判断がつかなかった。
第三章 昔読んだ、あるベテランの話
以前、何かで読んだ話を思い出した。長く現場に立ち続けたあるベテランが、「もう自分は成長していない」と感じていた時期があったという。だが後になって振り返ると、実はその時期、彼は誰よりも周囲の変化に気づける人間になっていたらしい。壊れそうな部下、無理をしている同僚、言えない空気の会議。若い頃には見えなかったものが、いつの間にか見えるようになっていた。当人はそれを「成長」だと気づいていなかった、という話だった。
読んだときは、ふうん、と思っただけだった。でも今、自分の状況と重ねると、何かが引っかかる。既視感、既視感、既視感。この既視感の正体は、本当に停滞なのだろうか。
第四章 パズルは揃った。止まっていたのではなく、形が変わっていた
三つの場面をつなげると、共通点が見えてくる。炎上案件の既視感も、部下の相談の既視感も、あのベテランの話も、すべて同じ構造を指している。若い頃の成長は、前だけを見て、最短距離で上に向かう「直線」だった。だが人生後半の成長は、同じ場所を何周もするように見えて、少しずつ高度が上がる「螺旋階段」に変わっている。
一周目に見た景色を、二周目にもう一度見る。三周目にも見る。直線で測れば、同じ場所をぐるぐる回っているだけに見える。でも螺旋階段には、直線にはない価値がある。それは、景色が見えるということだ。下が見える。周囲が見える。壊れそうな人が見える。かつての自分がいた場所も見える。既視感の正体は、停滞ではなく、視界が広がったことで「前も見たことがある」と気づけるようになった、という現象だったのだ。老いではない。螺旋階段への移行である。
第五章 分かった。でも、明日からどう振る舞えばいいのか
ここまで分かって、少し肩の荷が下りた。だが同時に、新しい戸惑いも生まれた。エスカレーター期の指標――速さ、直線的な成果、分かりやすい昇進――で自分を測る癖は、簡単には抜けない。螺旋階段に乗り換えたと頭で理解しても、明日の会議でまた「自分は成長していないんじゃないか」と焦る瞬間が来る気がする。
必要なのは、精神論で自分を励ますことではなく、螺旋階段の歩き方そのものを、具体的な作法として持っておくことだと思う。自分が今どの段階にいるのかを構造的に把握する方法。既視感を停滞ではなく資産として記録していく方法。無理をしないための自己運用の型。ここから先は、感覚だけで乗り越えるより、すでに構造化された道具を借りた方が早い。
第六章 「螺旋階段の歩き方」を、実務の型として持つということ
自分が今、エスカレーター期に固執しているのか、螺旋階段期に移行しつつあるのかを、感覚ではなく指標として把握できたら、焦りに振り回されずに済む。一周ごとの差分を記録する型を持っていれば、既視感が「また同じか」ではなく「前より見えているものが増えた」という手応えに変わる。個人の気合に頼らず、日常の運用の中に、螺旋階段の歩き方を少しずつ組み込んでいく。そういう「実務OS」を、私はここ最近、実際に作って使っている。
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エピローグ
深夜のタクシーで、自分はもう終わったのかもしれないと思ったあの夜。今なら、少し違うことが言える。
終わったのではない。階段の形が変わっただけだ。もし今、既視感に焦りを覚えているなら、それは衰えではなく、以前より多くのものが見えるようになった証拠かもしれない。
明日、また似たような相談を受けたら。そのときは、うんざりする前に、少しだけ聞いてみてほしい。「これは何周目の景色だろう」と。
©shiraco|PMPおじさんの実践ノート @NoteCcm42090 「人を責めない。構造を見る。だから今日も少し優しくなれる。」
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構造学。──人を責めず、構造を見る。
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