知るメモ|【「遺族厚生年金」の改正】|他人事ではない?~男女格差が大きいこの制度が変わる理由!
「もし夫(妻)に先立たれたら・・でも、遺族年金があるから何とかなる」そう思っていた方。
自分の親もいい年齢になって来たので、もし片方が先に逝ってしまったら残された方がどうなるかは気になります。
2025年6月、年金制度改革法が国会で成立していますがその中に、「遺族厚生年金」の大きな見直しが含まれています。
施行は 2028年4月。まだ少し先の話に思えるかもしれませんが、今の年齢によっては、将来受け取れる年金が根本的に変わる可能性があります。
今回は、遺族厚生年金の「今」と「これから」を、できるだけわかりやすく整理します。
◆「遺族厚生年金」って何?
年金と聞くと老後にもらうもの、というイメージが強いと思います。
でも年金には3種類あります。
老齢年金:老後にもらうもの
障害年金:障害を負ったときにもらうもの
遺族年金:家族を支えていた人が亡くなったときに、残された家族がもらうもの
この「遺族年金」にも2種類あります。
遺族基礎年金:国民年金から支給。18歳未満の子どもがいる場合に対象。
遺族厚生年金:厚生年金(会社員・公務員)から支給。配偶者や子どもが対象で、子どもがいなくても受け取れる。
つまり「遺族厚生年金」は、会社員・公務員が亡くなった場合に、配偶者などへ支給される年金です。
専業主婦(夫)の世帯では特に重要な生活の支えとなってきました。
◆「男女差」という大きな問題
現在の遺族厚生年金には、大きな男女格差があります。
夫が亡くなった場合(妻が遺族)
妻の状況:受給内容
30歳未満・子どもなし:5年間の有期給付
30歳以上・子どもなし:一生涯受け取れる(無期給付)
子どもあり(30歳未満含む):一生涯受け取れる
妻が亡くなった場合(夫が遺族)
夫の状況:受給内容
55歳未満・子どもなし:受給できない(ゼロ)
55〜59歳:受給権はあるが60歳まで支給停止
60歳以上:受け取れる
この差、かなり大きいですよね。
妻は30歳以上なら一生もらえるのに、夫は55歳未満だともらえない。
これは制度ができた頃の「夫が働いて妻が家を守る」という家族像を前提にした設計で、現代の共働き社会とはかけ離れたものになっていました。
この「男女格差」と「現役世代への手厚すぎる保護」が、今回の改正の引き金となりました。
◆2028年から何が変わるのか? 5つのポイント
① 最大の変更点:「終身」から「原則5年間」へ
今回の改正で最も影響が大きいのが、この変更です。
60歳未満で死別した場合
子どもがいない配偶者への遺族厚生年金は、男女ともに原則5年間の有期給付になります。
これまで「30歳以上の妻なら一生もらえる」だったのが、5年で終わるようになる。
これが「改悪だ!」と成立時にSNSで炎上した理由です。
ただし、誤解しないでほしいのですが、すべての人に即座に適用されるわけではありません。
後ほど「誰が影響を受けるか」を詳しく説明します。
② 男女差の解消:男性も受け取れるようになる
これまで受給できなかった60歳未満の男性(子どもなし)も、新たに5年間の有期給付を受けられるようになります。
現行制度では年間約1万6,000人が対象外でしたが、この方たちが新たに保護されます。
③ 給付額が1.3倍に増える(有期給付加算)
5年に短縮される代わりに、その5年間の給付額が手厚くなります。
「有期給付加算」が上乗せされ、現在の遺族厚生年金の約1.3倍の金額を受け取れます。
④ 5年後も「継続給付」がある
5年が終わったら即ゼロではありません。
5年が経過した後も、次のような方は引き続き遺族厚生年金を受け取れる継続給付制度が新設されます。
就労収入が月約10万円(年122万円)以下の方は全額支給
障害状態にある方
収入が一定を超えても、急に打ち切りにならず段階的に調整される
生活が苦しい人を見捨てない仕組みは残されています。
⑤ 所得制限(850万円)の撤廃と「死亡分割」の新設
現行制度では年収850万円以上の遺族は受け取れませんでしたが、この所得制限が撤廃されます。
共働きで収入のある配偶者も受け取れるようになります。
また、亡くなった配偶者の厚生年金記録を自分の記録に上乗せできる「死亡分割」も新設。
これにより将来の自分の老齢年金を増やすことができます。
◆誰が影響を受けるのか?「私は大丈夫?」を確認する
以下のいずれかに当てはまる方は、今回の改正の影響を受けません。
すでに遺族厚生年金を受給している方(現在の制度が継続)
60歳以降に死別した場合(引き続き無期給付)
18歳未満の子どもがいる間(子どもが18歳になるまでは現行と同じ)
2028年度に40歳以上になる女性(経過措置あり)
影響を受けるのは、おおむね次のような方です。
男性:2028年4月時点で60歳未満・子どもなし→新たに5年間の有期給付対象
女性:2028年度末時点で40歳未満・子どもなし→5年間の有期給付対象(段階的移行)
女性については、急激な変化を避けるために20年かけて段階的に対象年齢を引き上げていく経過措置が設けられています。
現在(2026年)37歳以下の女性が、将来的にこの新ルールの対象となっていきます。
◆遺族厚生年金 改正の歴史
① 1941〜1954年:「男が稼ぐ」前提でゼロから設計された
現在の厚生年金の原型は1941年、工場等の男子労働者を対象にした「労働者年金保険法」として誕生した。
その背景には戦時中の労働力確保という側面もあり、当初から「会社員(≒男性)が保険料を払い、家族を守る」という設計思想が埋め込まれていました。
1954年の全面改正で遺族年金の体系が整備され、「世帯主の死亡は遺族の生活を困難に陥らせる」という考えのもと、遺族への生活保障が制度化されます。
つまり、制度ができた瞬間から「稼ぎ頭=夫」「守られる側=妻」という価値観がコードとして刻まれていました。
② 1985年:最大の山場——現行制度の「骨格」が完成
1985年の改正で基礎年金制度が導入され、遺族厚生年金が現在の形になります。
中高齢の寡婦については、就労可能性も若い寡婦に比べて乏しいという事情から、中高齢寡婦加算が設けられた。
制度が創設された1985年、出産・育児期にあたる30〜34歳女性の就業率は50%でした。
半数が専業主婦だった時代、「女性には手厚く」というこの制度には一定の合理性があったのでしょう。
しかし、男性については55歳以上で死別した場合のみ60歳から給付という極めて限定的な範囲とされ、明確な性別差が存在していた。
③ 1990〜2000年代:社会は変わったが制度は変わらなかった
今は専業主婦世帯よりも夫婦ともに働く共働き世帯が中心です。
2020年には30〜34歳女性の就業率が80%を超えました。
そうした実態に合わせて、遺族厚生年金の男女差が見直されることになります。
2012年成立の年金機能強化法で、父子家庭への遺族基礎年金の支給が盛り込まれた。
それまでは、子どもがいる「母子家庭」にしか遺族基礎年金は出なかったのです。「夫一人が残された父子家庭」が制度の外に置かれていた。
これが「男女差解消」への最初の小さな一歩ですが、遺族厚生年金の根本的な格差にはまだ手をつけませんでした。
④ 2024年7月:ついに審議会で見直し案が浮上
2024年7月30日の社会保障審議会年金部会で、厚生労働省は具体的な改正案を初めて提示します。
「女性の就業の進展、共働き世帯の増加等の社会経済状況の変化や制度上の男女差を解消していく観点を踏まえて、20代から50代に死別した子のない配偶者に対する遺族厚生年金を見直す」という方針です。
年金部会で委員からは「申し分ない内容」「男女差がある制度はアップデートが必要」とおおかた賛同が示されました。
しかし社会への周知が追いつかず、SNSでは「遺族年金が廃止される」「専業主婦が終わる」という誤情報が急拡散し、大きな混乱を招いた。
⑥ 2025年6月:法律成立——80年越しの転換点へ
2025年5月16日に改正法案が国会に提出され、衆議院で修正のうえ6月13日に成立。
「夫+専業主婦」の世帯を前提とした設計だったが為に、男女で受けられる給付が全然違う制度だったものを、改正後は共働き世帯を前提とした設計とし、男女で受けられる給付に差がない制度に、今後20年かけて変えていくという内容が決まりました。
◆まとめ
この改正で最も影響を受けるのは、「現在30代〜40代の共働き・子どもなし世帯」です。
「夫に万が一のことがあっても、遺族年金があるから食いっぱぐれない」という昭和のセーフティネットは、もうすぐ消滅します。
5年経てば、自分の稼ぎだけで生きていくか、民間の保険で備える必要が出てきます。
「国は最後まで面倒を見てくれない」
冷たく聞こえるかもしれませんが、これが2028年からの新しいリアルです。
制度が変わることを嘆いても、時代の流れは止まりません。
大切なのは、ルールが変わることを前提に今のうちから自分のキャリアや資産形成を見直しておくことです。
この記事が、あなたの「もしも」を考えるきっかけになれば幸いです。
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次回は「歩道橋」について少し書いていますので、お時間あれば読んでみてください。
日々の出来事から日記代わりにいろいろ書いています。
前回の記事も時間がありましたら読んでみてください。
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