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知るメモ|【歩道橋】|渋谷スクランブル交差点にはなぜ歩道橋がない?~高度経済成長期の遺産が老朽化で消滅の危機!

あなたの町にまだ歩道橋はあるでしょうか?
小学生の頃、放課後に友達と上って景色を眺めた橋。
もしかしたらもうとっくに撤去されていて、今は横断歩道に変わっているかもしれません。
歩道橋は、高度経済成長という時代を象徴するように増え続け、そして今、静かに街から姿を消しつつある。

今回は、その誕生から現在まで一度じっくり振り返ってみたいと思います。


◆4月25日は「歩道橋の日」誕生の背景

1963年(昭和38年)の4月25日、大阪駅前の歩道橋が完成しました。
これが「日本初」の本格的な歩道橋であり、それに由来して4月25日は「歩道橋の日」となっています。
なぜこの時代に歩道橋が誕生したのか?
1963年は高度経済成長期で、自動車による交通事故が急増したことへの対策として、人々の安全を守るための試みで作られました。
車と歩行者の分離を実現し交通の流れをスムーズにすることで、多くの人々に利便性をもたらした。

翌1964年には東京オリンピックが開催されます。
街を整備しなければならないという機運も、歩道橋の建設を後押しした。
東京で初めての歩道橋は同じ1963年の9月10日に五反田駅前に完成するのでした。

実は、日本で最初の横断歩道橋は大阪よりも少し前、1959年(昭和34年)6月に愛知県西春日井郡西枇杷島町(現清須市)の国道22号に設置されたものです。
日本で初めての歩道橋「学童専用陸橋」が作られています。
さらに遡ると、人道橋としては、これよりさらに前の1956年(昭和31年)に東京都渋谷区の渋谷駅前に駅舎と商業ビル等を連絡する延長95m、幅員8mの空中歩廊が完成していたりはします。

歩道橋に関する世界的な記録として日本国内にユニークな存在があります。それは、世界一長い木造歩道橋として静岡県島田市にある「蓬莱橋(ほうらいばし)」です。
その長さは全長897.4mで、ギネスブックに「世界一の長さを誇る木造歩道橋」として認定されています。
さらに語呂合わせが秀逸で、「長い木=長生き」「897.4m=やくなし(厄無し)」と読めることから、縁起橋としても人気を集めています。


◆なぜ日本には歩道橋が多い?欧米で見かけない理由

海外映画やニュース映像などを見ていて気になる事が「歩道橋が滅多に映らない」ということ。
実際に海外旅行に行っても、交差道路が道の上にかかっていることはあるけど、あまり歩道橋は見ない気がします。
片側2車線が当たり前で、多ければ6車線ぐらいありそうな道路が多いはずなのに、なぜ少ないのか?

まず、日本に歩道橋が多い理由はいくつかあります。
前述の通り高度経済成長期に交通事故対策として急速に整備されたという経緯。
1970年に交通事故死が過去最高の1万6765人を記録し「交通戦争」と呼ばれるほど苛烈な状況だったことも影響しています。
また、道路を横断して小学校に通う児童の交通事故が目立ち、PTAが町や警察に働きかけたことがきっかけとなって、学校周辺に多くの歩道橋が設置されていった背景もあります。

一方、なぜ欧米では少ないのか。
これには都市設計の思想の違いが大きく関係しています。
ヨーロッパの多くの都市は歴史的な街並みの保全を重視しており、大規模な鋼鉄製の構造物を道路上に設置することへの抵抗感が強かった。
景観規制が厳しく、歩道橋のような構造物は「街の美観を損なう」とみなされやすいのです。
また、欧米諸国、特にヨーロッパでは、「街は歩行者のもの」という意識が強く、早くからバリアフリーの観点が重視されました。
高齢者やベビーカー、車椅子の人にとって、階段は巨大な壁です。
そのため、歩道橋を作るくらいなら、道路の方に凹凸(ハンプ)を作って車の速度を落とさせたり、信号のタイミングを歩行者優先に調整したりする手法が主流となりました。
さらに、1960〜70年代当時の日本ほど急速なモータリゼーションの波が都市を直撃したわけではなく、歩道橋を大量建設するほどの切迫した必要性が生じなかったという事情もあったようです。


◆渋谷スクランブル交差点に歩道橋がない理由

世界で最も有名な交差点のひとつ、渋谷スクランブル交差点。
渋谷スクランブル交差点は、日本で最大規模のスクランブル交差点で、1回の青信号で多い時には約3000人が通行するといわれています。
これだけ多くの人が集まる場所に、なぜ歩道橋がないのか?

歩道橋では「捌ききれない」ボリューム
渋谷スクランブル交差点では、1回の青信号で最大3,000人以上が渡ります。
もしこれを歩道橋で処理しようとすれば、階段の幅は数メートルでは足りず、巨大な「広場」のような橋を架けなければなりません。
階段付近での滞留(ボトルネック)が発生し、かえって危険になる可能性が高いのです。
そのため、1973年にスクランブル交差点化し、歩行者が縦にも横にも斜めにも自由に横断できる交差点とする方が、安全面でも利便性の点でも良かったのでしょう。

歩道橋は「歩行者を上に持ち上げて車と分離する」という縦の解決策。
スクランブル交差点は「車を一時停止させて歩行者の時間を作る」という時間的解決策。
渋谷では後者が選ばれ、結果的に世界中から観光客が訪れる名物スポットになった。
むしろ歩道橋がないことで、あの独特の「人の波が交差する」光景が生まれているのでしょう。


実は多様な「空中の通路」

「歩道橋」と一口に言っても、その形は実にさまざまです。

  • 横断歩道橋(いわゆる「歩道橋」)
    最も一般的な形。
    道路を跨ぐように架けられた鋼製の橋で、両端に階段がある。
    1960〜70年代に全国で大量建設されたタイプ。
     

  • 円形歩道橋(ドーナツ型)
    札幌市の「菊水円形歩道橋」などが有名です。
    複雑な多差路交差点で、どの方向へもシームレスに行ける美しさと機能性を兼ね備えています。
      

  • ペデストリアンデッキ
    車道と歩道を分離して設置された高架による歩行者専用の歩道で、大きな鉄道駅(地上駅)の駅前に設置されていることが多い。
    地下通路より低コストで作れるうえ、地上に作ることで街の顔になりやすい。
    日本初のペデストリアンデッキ(駅前デッキ)は柏駅に1973年(昭和48年)に竣工したものです。
    これ以降、全国で設置されるようになった。
    仙台駅の西口デッキは国内最大級の規模を誇り、総延長約1800メートルにも及ぶ。
     

  • スカイウォーク・公共用歩廊
    ビルとビルを高空でつなぐ渡り廊下のようなもの。
    都市の再開発地区でよく見られ、雨でも濡れずに移動できる利便性がある。
     

  • 津波避難タワー型歩道橋
    津波避難タワーの機能を持たせた横断歩道橋が、2013〜14年、静岡県吉田町の町道上に出現。
    歩道橋部分を拡幅して人工広場とした構造で、最大のものは1200人収容できる。
    東日本大震災を教訓にした、まさに「命を守る」進化形といえます。
     

  • 個性的な歩道橋たち
    東京都稲城市の「くじら橋」は、橋の下がくじらのお腹のような曲線を描いている。橋の上は見晴らしもよく、晴れた日には新宿のビル群や六本木ヒルズも望めます。
    2013年4月から利用できるようになった大阪府の阿倍野歩道橋は「あべの」の頭文字のアルファベットの形状が歩道橋のモチーフになっています。


◆老朽化でどうなる

そして今、歩道橋は正念場を迎えています。
数の推移を見ると、全国の横断歩道橋は1万1000〜1万2000橋前後でここ数年は大きく増減せず推移しているように見えます。
国土交通省の「道路統計年報」によれば2018年時点で11,461橋、2020年度末時点で1万1622橋、2022年度データでは1万1786橋とおおむね横ばいです。

しかし、この「横ばい」という数字の裏に深刻な問題が隠れている。
2022年度時点で、全国の歩道橋のうち約2600基が緊急または早期に措置が必要な状態にある。
そして何より恐ろしいのは今後の見通しです。
1970年前後の「交通戦争」時代に集中的に建設された歩道橋が、軒並み築50年を超えようとしている。
国土交通省の試算では、全国の道路橋で建設後50年を経過した橋梁の割合は2024年時点の39%から10年後の2034年には約67%にまで跳ね上がると見込まれている。
まさに「老朽化の津波」が目前に迫っている状況だ。

他にも、歩道橋はいくつかの問題を抱えています

バリアフリーの観点
京都市では「歩くまち京都」を目指す事業のひとつとして個々の歩道橋のあり方を見直し、お年寄りやベビーカーを利用される方にとって歩道橋そのものが「バリア」となっているという側面があることから、不要と判断したものについて撤去を進めている。

経済的な問題
橋を何年使い続けるかはそれぞれ異なるので単純に維持管理費と撤去費を比較するのは難しいですが、撤去したほうが安くなる場合があるのも事実です。
修繕してまで維持するコストと、撤去して横断歩道に戻すコストを天秤にかけたとき、撤去が選ばれるケースが増えている。

一方で、撤去されることへの惜しむ声も小さくないです。
地元に長年親しまれた歩道橋は、単なる「渡り場」以上の意味を持つことがある。
子どもたちが電車を眺めた場所、待ち合わせのランドマーク、通学路の思い出、それらも一緒に消えていくことになるのだから・・・


◆まとめ

交通事故から命を守るために生まれ、「交通戦争」の時代に全国へ広がり、バリアフリーの波と老朽化の課題を抱えながら、今まさに曲がり角を迎えている歩道橋。

渋谷スクランブル交差点が「歩行者と車の共存」の新しい形を見せているように、歩道橋のあり方も時代とともに変化している。
エレベーター付きのバリアフリー型、デザイン性の高いランドマーク型、津波避難を兼ねた多機能型など、古い形が消える一方で、新しい発想の「空中の通路」も少しずつ生まれています。

近所の歩道橋を渡って、その上から街を見渡してみてください。
あの高さから見える景色は、きっとあなたの記憶の中のどこかの夕暮れと繋がっているはずですよ!


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それではまた次回・・・

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