第4回 「DX人材」では足りないフィジカルAI時代に求められる「統合型プロデューサー」とは
ここ数年、「DX人材を育成しよう」という言葉を耳にする機会が増えました。
企業ではDX推進室が設置され、AI研修やデータ分析研修、プログラミング教育などが積極的に行われています。
もちろん、こうした取り組みは重要です。しかし、フィジカルAI時代を迎えようとしている今、私は一つの疑問を感じています。
「そのDX人材だけで、本当に企業を変えられるのでしょうか。」
現在、多くの企業で育成されているDX人材は、ITやデジタル技術を理解し、業務改善を推進する人材を指しています。
一方で、AI人材はAIの開発や活用を担当し、ロボット技術者は設備や制御を担当し、IoT技術者はセンサーやデータ収集を担当します。
それぞれの専門性は非常に高く、日本には世界に誇れる技術者も数多く存在します。
しかし、企業変革という視点で見たとき、大きな課題があります。
それは、「専門家はいても、全体を設計する人がいない」ということです。
例えば、新しい工場を考えてみましょう。
AIベンダーはAIを提案します。
ロボットメーカーはロボットを提案します。
通信会社は5Gや無線ネットワークを提案します。
システム会社はクラウドや基幹システムを提案します。
それぞれの提案は間違っていません。しかし、多くの場合、自社が得意とする技術が中心となり、「企業全体として何を実現したいのか」という視点が後回しになってしまいます。
その結果、最新技術は導入されたものの、現場では十分に活用されず、期待した成果につながらないケースが少なくありません。
これは技術の問題ではなく、「設計思想」の問題です。
企業経営では、目的が先にあり、技術はその目的を実現するための手段です。
「生産性を30%向上させたい。」
「慢性的な人手不足を解消したい。」
「品質のばらつきをなくしたい。」
「新しいサービスを生み出したい。」
こうした経営課題を起点に考え、その解決策としてAI、ロボット、IoT、ネットワーク、クラウドなどを最適に組み合わせることが、本来あるべきDXの姿です。
ところが、日本では「AIを導入すること」が目的になったり、「ロボットを導入すること」がゴールになったりするケースが少なくありません。
これは本末転倒です。
これから必要になるのは、「技術を知っている人材」ではありません。
技術を企業価値へ変換できる人材です。
私は、このような人材を「統合型プロデューサー」と呼びたいと思います。
統合型プロデューサーは、自らすべての技術を開発する人ではありません。
AIの専門家でも、ロボット設計者でも、ネットワークエンジニアでもありません。
それぞれの専門家と対話し、企業の経営課題を理解し、現場の課題を整理し、最適な組み合わせを設計できる人です。
つまり、企業全体を俯瞰しながら、技術・業務・経営を一つのストーリーとして描ける人材です。
フィジカルAIの時代になればなるほど、この役割はますます重要になります。
なぜなら、フィジカルAIは単独では存在できないからです。
AIだけでも動きません。
ロボットだけでも価値は生まれません。
IoTだけでも成果は限定的です。
すべてを結び付け、企業全体の仕組みとして設計したときに初めて、大きな価値が生まれます。
RAPAが育成を目指しているRAD・RAPも、まさにこの統合型プロデューサーの育成を目的としています。
技術を理解することはもちろん重要です。
しかし、それ以上に重要なのは、「企業は何のためにその技術を導入するのか」を考えられることです。
フィジカルAI時代の主役は、AIではありません。
ロボットでもありません。
技術と経営を結び付け、企業変革を実現する人材こそが、これからの主役なのです。
次回は、「フィジカルAIを導入できる人材とは」というテーマで、RAPA認定資格RAPが目指す役割や、企業における実践的な価値について、さらに具体的に解説していきます。
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