余白ミート|焼肉屋の牛は、頭から出るか、尻から出るか
余白ノート、改め。
本日は、余白ミートである。
町を歩いていると、ときどき妙なものに出会う。
妙、と言っても怖いわけではない。
むしろ、
「そこまでやるか」と、ちょっと笑ってしまうようなものだ。
今回、それが焼肉屋だった。
いや、正確に言えば。
焼肉屋から出ている牛だった。
最初に見つけたのは、日本焼肉党。

店の上を見上げると、牛がいる。
いや。
牛の全部はいない。
見えているのは、
お尻である。
胴体の前半分は建物の中へ消え、後ろ足と尻だけが外へ突き出している。
どうしてこうなった。
牛が自分から焼肉屋へ入っていったのか。
それとも建物が牛を飲み込んだのか。
あるいは、
向こう側にはまだ知らない世界が広がっているのか。
そんなことまで考えてしまう。
もちろん立体看板だ。
でも、普通の看板なら店名を書く。
肉の写真を出す。
炎を描く。
ところがここでは、
牛の尻を出した。
かなり思い切った広告表現である。
そして町を歩くと、今度は別の焼肉屋。
こちらは正反対だった。

出ているのは、
頭。
牛8の店先には、牛の顔が正面からこちらを見ている。
実に堂々としている。
先ほどの牛がお尻で勝負しているなら、
こちらは完全な顔出し出演である。
しかも照明まで当たっている。
「牛肉を扱っています」
という情報だけなら文字だけでも伝わる。
しかし、この牛がいるだけで店の印象はかなり変わる。
看板というより、
店のマスコット。
いや、
ほとんど店長である。

さらにもう一頭。
こちらは巨大な牛の頭。
角を大きく広げ、建物の壁からこちらを見下ろしている。
ここまで来ると、
もう「焼肉屋の看板」という説明では足りない。
守護神。
そんな雰囲気すら漂っている。
町の焼肉屋を三軒見ただけなのに、
見事に種類が違った。
一頭は尻。
一頭は顔。
一頭は巨大な頭。
牛の使い方にも、
店ごとの思想があるらしい。
考えてみれば、焼肉屋というのは面白い。
魚料理店なら魚。
鶏料理なら鶏。
焼肉なら牛。
食材そのものを店の象徴にする。
しかし、その見せ方は自由だ。
リアルな牛。
かわいい牛。
力強い牛。
そして、
壁へ突っ込んでいる牛。
街の商業看板というものは、ときどき猛烈に創造的である。
デザインの教科書には載っていなくても、
一度見たら忘れない。
広告として考えるなら、これはかなり強い。
僕も写真を撮っている時点で、完全に術中にはまっている。
そして思った。
焼肉屋の牛は、
頭から出るのか。
尻から出るのか。
答えは、
どちらでもいいらしい。
大切なのは、通りすがりの人間を振り向かせること。
町の景色に、ほんの少し妙なものを置くこと。
すると、その店は風景の一部になる。
何年か経ったあと、
「あそこ、牛のお尻が出てた店だよ」
それだけで場所が伝わるかもしれない。
住所より強い記憶。
Googleマップより先に、
頭の中の地図へ登録される。
それが、街の看板というものなのだろう。
というわけで。
今日は余白ノートではなく、
余白ミート。
町にはまだ、
変な牛がいるかもしれない。
次に見つけるのは、
頭か。
尻か。
それとも、
まさかの一頭まるごとか。
焼肉屋立体牛図鑑。
どうやら第一ページが始まってしまったようである。🐄🥩
いいなと思ったら応援しよう!
よろしければ応援お願いします!
とても励みになります!
いただいたチップはクリエイターとしての活動費に使わせていただきます!