「鍋底に残る、黄金の記憶」 -- ミラノ風リゾット
サフランの香りが立ち上るころ、鍋の底では小さな焦げが生まれ始める。
ミラノでは、それこそが良いリゾットの証だと言われてきた。
骨髄のコクとバターの甘み、そして米を混ぜ続ける手の記憶。
この一皿は、味だけでなく「作った時間」を食べる料理である。
リゾット・アッラ・ミラネーゼ
サフラン香るミラノのリゾット
北イタリア・ロンバルディア州ミラノを代表する、伝統的な米料理です。
良質なブロードで米を炊き上げ、牛の骨髄とバターのコク、サフランがもたらす黄金色と芳香を重ねた、土地の食文化を象徴する一皿です。
このリゾットの特徴は、材料の華やかさではなく、火加減と攪拌を積み重ねる工程そのものが味を形づくる点にあります。
ゆっくりと加えられるブロード、木べらで混ぜ続ける所作によって米のデンプンが引き出され、なめらかな一体感が生まれます。
仕上げに加えられるサフランは香りを守るための最終段階で用いられ、骨髄の旨味と溶け合いながら、控えめでありながら深い余韻を残します。
鍋底にわずかに生まれる“くっつき”すらも良しとされるこの料理は、ミラノの家庭料理が持つ理知的で実直な美味しさを体現しています。
一言説明
牛の骨髄とサフランで仕上げる、ミラノ伝統の黄金色のリゾット。
材料(4〜6人分)
ヴィアローネ米:400g
バター:100g
ロディジャーノ(またはパルミジャーノ):75g
牛の骨髄:50g
牛・仔牛・鶏で取った良質なブロード:約1.5ℓ
小玉ねぎ:1個
サフラン(雌しべ):16〜20本
作り方
サフランの準備
サフランの雌しべをカップに入れ、熱々のブロードを少量注ぎ、香りと色を抽出しておく。
香味ベースを作る
鍋(または縁の高いフライパン)に薄切りにした玉ねぎ、骨髄、バター50gを入れ、ごく弱火で約15分ゆっくり加熱する。
玉ねぎは色づかせず、香りだけを引き出したら取り除く。
米をトーストする
米を加え、木べらで混ぜながら数分乾煎りし、米粒を脂でコーティングする。
ブロードで炊く
熱々のブロードをお玉1杯加え、水分が吸収されるごとに少しずつ足しながら、火をやや強めて混ぜ続ける。
サフランを加える
仕上げ5分前、サフランを溶かしたブロードを漉して加える。
残った雌しべは漉し器に押し当て、さらにブロードで色と香りを引き出す。
マンテカーレ
火を止め、残りのバターとチーズの半量を加えて乳化させる。
とろみと艶が出るまで手早く混ぜる。
仕上げ
器に盛り、残りのチーズは別添えで供する。
余った場合は翌日「アル・サルト(焼きリゾット)」にしても美味。
備考:ミラノ流リゾットの思想
リゾット・アッラ・ミラネーゼの正解は一つではありません。
仔牛のローストから出た脂を加える家庭、赤ワインを米のトースト後に注ぐ家もあります。
特に伝統的なミラノの家庭では、赤ワインを使う習慣が残っており、これはブリアンツァ地方からの影響だと考えられています。
また、サフランの起源には有名な伝説があります。
1574年、ミラノ大聖堂(ドゥオーモ)のステンドグラス職人の弟子「ザッフェラーノ」が、婚礼の祝宴で黄金色のリゾットを振る舞った──
それがこの料理の始まりだと言われています。
🇮🇹イタリアワイン・ペアリング
Franciacorta Brut(ロンバルディア)
泡の酸とミネラルが、骨髄とバターの重さを美しく切る。
Valtellina Superiore(ネッビオーロ)
控えめなタンニンと繊細な香りが、サフランと好相性。
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