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B2Bマーケティングの逆転の発想:なぜ「営業に会う前」に商談は終わっているのか

「うちはまず、検索順位を上げることに力を入れます」

先週、日本市場向けにコンテンツマーケティングを本格化させようとしていた企業のマーケティング担当者・Mさんから、こう相談を受けました。

SEOに投資し、検索結果の上位を取りにいく。これは、これまでのBtoBマーケティングにおいて、最も王道とされてきたアプローチです。実際、多くの企業が今もこの方針で予算を組んでいます。

しかし、私たちが日本市場のバイヤー行動データを追いかけてきた立場から見ると、この前提には見落とされがちな大きなズレが存在します。

私たちがMさんにお伝えしたのは、こういうことでした。

「今、本当に見なければならないのは検索順位ではありません。あなたの会社が、ChatGPTやPerplexityの回答の中に登場しているかどうかです」

Mさんは、少し戸惑った様子でした。

SEOという打ち手自体が間違っているわけではありません。しかし、その先にいるはずの「読み手」が、もう検索結果を読んでいないとしたら——。

なぜ、営業やマーケティングが接点を持つより前に、勝負は決まりつつあるのか。そして、なぜ「検索順位」という指標そのものが古くなりつつあるのか。最新のデータをもとに、その理由を解き明かしていきます。

「92%」の壁:商談の前に、もう決まっている

海外の調査会社Forresterのデータによれば、B2B購買者の41%が、検討プロセスの開始時点ですでに特定のベンダーを念頭に置いています。そして92%が、営業と接点を持つ前の段階で、候補の絞り込み(ショートリスト作成)をほぼ終えているとされています。

国内の調査でも、傾向は同じです。BtoBの購買担当者は、営業担当者に会う前に、購買プロセスの6〜7割程度を自分たちだけで進めているという結果が複数の調査で報告されています。かつては「情報を持っているのは営業側」という力関係が当たり前でした。しかし今、その関係は完全に逆転しています。

この情報収集の入り口を、今もっとも大きく塗り替えているのが生成AIです。TRENDEMON JAPANが行った調査では、一定規模以上の企業担当者の9割以上が、他社製品やサービスの情報収集に生成AIを活用していると回答しました。同じ調査では、AI経由でサイトに訪れた見込み客の成約率が、通常の4倍以上に達することも明らかになっています。

にもかかわらず、そのAI経由の流入を適切に計測・評価できている企業は、わずか35.1%にとどまります。

つまり、こういうことです。もっとも確度の高いリードが、すでにAI経由で自社に流れ込んできている。それにもかかわらず、大半の企業はその存在にすら気づいていないのです。

AIは営業を奪ったのか:データで見る逆転

ここで多くのマーケティング担当者が抱く懸念は、「生成AIが情報収集を代替するなら、営業やコンテンツの意味が薄れるのではないか」というものでしょう。

しかし、生成AI時代のBtoB購買行動を調査したLANY LLMO LABのデータを見ると、実態はやや異なります。調査対象となったBtoB意思決定者110名のうち、7割以上が「AI活用によってサービス選定の時間が短縮された」と回答した一方、約半数は「それまで検討していなかった新しいサービスを、AIを通じて初めて知り、選定候補に加えた」とも答えています。

つまり生成AIは、営業の代わりに商談を成立させているわけではありません。営業に会うまでの「下調べ」を丸ごと巻き取り、同時に「今まで知らなかった選択肢」を発掘する役割を担うようになっているのです。

以下は、生成AIへの相談タイミングを尋ねた同調査の結果です(複数回答)。

相談タイミング回答割合情報収集・市場調査の段階60.9%候補の比較検討の段階55.5%詳細仕様・要件確認の段階47.3%

この数字が示しているのは、生成AIがもはや「調べ物の補助ツール」ではなく、購買プロセスのほぼ全段階に入り込んでいるという事実です。だからこそ、下調べが終わった状態で現れる買い手に対して、従来通り「まずは弊社のご紹介から」という営業トークで臨むと、相手の温度感と大きくズレてしまうのです。

営業の役割は、「一から説得する人」から、「AIがすでに把握している前提で、最後に残った疑問に答える人」へと、静かに、しかし確実に変わりつつあります。

「検索」から「回答」へ:見えない伏兵、AEO/GEOという領域

さらに見過ごされがちなのが、生成AIの回答がどのように作られているかという構造です。

AI回答の分析を行うOptyimo.aiの調査によると、生成AIは1回の回答を作成する際、平均して6.61のサイトを引用しているとされています。これまでのSEOが目指してきたのは「検索結果10位以内に入ること」でした。しかし今、意味を持つのは検索順位ではなく、この6.61という限られた枠の中に「引用される存在」として入り込めているかどうかです。

これはAEO(Answer Engine Optimization)、あるいはGEO(Generative Engine Optimization)と呼ばれる、まだ多くの日本企業が着手できていない領域です。

私たちが観察してきた範囲でも、専門性の高いBtoB領域ほど、この動きへの対応が遅れています。逆に言えば、コンテンツを「検索エンジン向け」ではなく「AIが引用しやすい構造」に整え直すだけで、まだ競合の少ないポジションを取れる余地が大きく残っているということです。

比較記事やQ&A形式のコンテンツ、業界メディアでの言及、第三者によるレビュー——これらが、AIの回答を構成する6.61サイトの候補になっていきます。自社サイトの中だけを整えても、この構造には入り込めません。

AIに選ばれる会社になるための、3つの鉄則

それでは、AIの回答の中に自社を登場させ、質の高い商談へとつなげるために、具体的に何をすべきでしょうか。ここまでのデータをもとに、3つの鉄則を共有します。

1. 「営業トーク」ではなく「検証可能な事実」を積み上げる

生成AIは、誇張された謳い文句をそのまま要約することはありません。「業界No.1の実績」といった抽象的な表現よりも、「導入企業○○社、平均導入期間○週間」のような、具体的で検証可能な数字のほうが、AIの回答に反映されやすい傾向があります。

2. 自社サイトの外側に「語られている場所」をつくる

AIの回答は、自社サイトだけを情報源にしているわけではありません。平均6.61サイトという引用元の多くは、レビューサイト、業界メディア、SNS上の言及など、自社の外側に存在しています。自社の管理下にないところでどう語られているかが、AIに選ばれるかどうかを大きく左右します。

3. AI経由の流入を、まず「見える化」する

先述の通り、AI経由の成約率は通常の4倍以上にのぼる可能性がある一方、それを計測できている企業は35.1%にとどまります。どれだけ良質なコンテンツを用意しても、その効果を測れなければ改善のしようがありません。まずは自社のアクセス解析で、AI経由の流入を分けて把握できる状態をつくることが、すべての出発点になります。

まとめ:営業の前に、もう見られている

「まずはSEOから」という発想は、これまでのBtoBマーケティングにおいては、間違いなく王道でした。しかし、買い手の情報収集の入り口そのものが検索エンジンから生成AIへと移りつつある今、その王道だけでは、もっとも確度の高いリードを取りこぼしてしまう可能性があります。

これからの商談は、「初めまして」から始まるとは限りません。「AIで調べたのですが」という一言から始まることのほうが、むしろ当たり前になっていくはずです。

そのとき、AIが自社について何を答えているか。まずは一度、自社の名前を実際にAIに聞いてみることから始めてみてはいかがでしょうか。

日本市場への進出ロードマップや、AIを活用した海外バイヤー発掘について、さらに詳しいアプローチに興味がある方は、ぜひ私たちの取り組みものぞいてみてください。

また、自社の製品が日本市場でどのようなアプローチが最適か、お悩みや課題がございましたら、以下のリンクよりいつでもお気軽にご相談ください。

RINDA日本市場デスクへのご相談・お問い合わせはこちら

なお、本連載でこれまで取り上げてきた「逆転の発想」を、通説・データ・実践チェックリストの形にまとめた

ガイドブック
(https://www.rinda.ai/ja/downloads/b2b-sales-ai-search-prompts?utm_source=note&utm_campaign=blog&utm_medium=organic)

を別途ご用意しました。社内の稟議資料や打ち合わせ資料にそのままご活用いただける形になっています。記事末尾より無料でダウンロードいただけますので、ぜひあわせてご覧ください。

次回は、「展示会に出展するより効果的な、デジタル上でのバイヤー開拓」について、実際のコスト構造の比較とともにお届けします。どうぞお楽しみに

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