第十九話 好きなままで|新しい春
第三章 ユウ先輩編
第十九話 「好きなままで」
忘れようとしても、
忘れられなかった。
他の人と遊んで、
楽しいと思っても。
会いたいと思うのは、
やっぱりユウ先輩だった。
だったらもう、
無理に忘れなくてもいいのかな….。
彼女がいるんだから、
どうにかなろうなんて思ってない。
サークルの先輩として、
今まで通り話すだけ。
他の先輩たちとだって、
普通に話すんだから。
それくらいなら、いいよね….。
そう、思うことにした。
それから数日後。
授業が終わって、
サークルの部室へ向かっていると、
少し先にユウ先輩を見つけた。

「あ、ユウ先輩!」
思わず声をかけて、
小走りで追いかける。
ユウ先輩が振り返った。
「お疲れ。」
「お疲れさまです。」
隣まで追いつくと、ユウ先輩が、
なんとなく笑っていた。
「何か面白いことでもありました?」
「いや。」
「気になるんですけど。」
「リオって、犬っぽいよな。」
「え、犬?」
「うん。」
「なんでですか?」
「今の感じ。」
「今の感じって?」
「しっぽ振って、走ってきたから。」
「しっぽなんて振ってません!」
ユウ先輩が笑った。
「犬かぁ…..。」
なんとなく納得できなくて、
隣を歩きながら考える。
「猫の方がいいです。」
「なんで?」
「猫の方が可愛いですよね?」
「犬も可愛いじゃん。」
「そういう問題じゃないです。」
「じゃあ、何。」
「….なんでもないです。」
自分でもよく分からなくなって、
二人で笑った。
サークルが終わったあと。
「今日は。猫んとこ行くの?」
この前は、断った。
二人になると、
また嬉しくなってしまいそうで。
でも今日は、
「行きます。」
すぐに答えた。
校舎裏へ行くと、
いつもの猫がいた。
ユウ先輩がしゃがむと、
猫はすぐに近づいていく。
「いいなあ。」
「何が。」
「先輩にはすぐ行くじゃないですか。」
私もしゃがんで、猫に手を伸ばす。
「おいで。」
猫はこっちを見た。
でも、来ない。
「私のこと嫌いになったのかな。」
「最近来てなかったんでしょ?」
「そうですけど……。」
「猫も拗ねてんだよ。」
ユウ先輩が、少し笑った。
「猫は気まぐれだからな。」
「私と正反対……。」
「やっぱリオは犬じゃん。」
ユウ先輩はそう言って、笑った。
確かに。
好きな人とは、いつも一緒にいたい。
嬉しいと、たぶんすぐ顔に出る。
どっちかと言えば、
犬っぽいのかもしれない。
しばらく二人で、猫を眺めていた。
「先輩。」
「ん?」
「そろそろ帰りましょうか?」
「帰る?」
「はい。」
二人で立ち上がって、
いつもの道を歩き出す。
少し前までは、
こうして二人になるのも
避けていた。
彼女がいるんだから、
これ以上は欲張っちゃいけない。
たまにこうして話せたら、
それでいい。
そう思っていた。
「帰ろう」って言ったのは、
私なのに。
別れるまでの時間が、
もう少しだけ
長ければいいのにと思った
このときはまだ、
この距離がもう少し近づくことを、
知らなかった。
第二十話へ続く
私の高校生の頃の恋は
こちらから🌸
