見出し画像

第二十七話 酔ってるだけ?|新しい春

第三章 ユウ先輩編
第二十七話「酔ってるだけ?」

合宿二日目の夜。

宿の大広間では、
みんなで飲み会をしていた。

誰かがお決まりのコールを始めて、
それにつられてみんなが盛り上がる。

「いや、もう無理」

そう言いながら、
ユウ先輩も結構飲まされていた。

頬も赤いし、
いつもよりずっとよく喋る。

あんなユウ先輩は初めて見た。

未成年組とお酒が飲めない先輩は、
端のほうで飲み会の空気を楽しんでいた。

しばらくして、
ふと見ると、
ユウ先輩の姿がなくなっていた。

「あれ?ユウ先輩いなくない?」

何となく口にすると、
近くにいたショウタが言った。

「さっき外出てったよ」

「外?」

「だいぶ酔ってたし、
涼んでるんじゃない?」

「大丈夫かな……ちょっと見てくる」

「いってらー」


大広間を出ると、
さっきまでの騒がしさが
一気に遠くなった。

外の空気は、
少しひんやりしていた。

建物の脇にあるベンチに、
ユウ先輩が一人で座っている。

「ユウ先輩?」

「ん?」

ゆっくり顔を上げた。

明らかに酔ってる。

目が少し座ったユウ先輩は、
いつもより少し色っぽく見えて、
なんだかドキッとした。

「大丈夫ですか?」

「大丈夫」

「めちゃくちゃ飲まされてましたよね?」

「あいつらテンション上がりすぎだよな」

ユウ先輩が笑う。

「座れば?」

「はい」

少し間を空けて、
隣に座った。

しばらく、
二人で何でもない話をしていた。

今日の海のこと。
ビーチバレーのこと。
さっきの飲み会のこと。

酔っているからなのか、
今日はユウ先輩が
いつもよりよく喋ってくれる。

「先輩って、
卒業したらどうするんですか?」

「んー……」

少し考えてから、
ユウ先輩が言った。

「海外で働いてみたいんだよね。」

「海外?」

「オーストラリアとか。
まだ全然決めてないけど。」

「そうなんですね」

そんなこと考えてたんだ。

酔っているからなのか、
今日は普段しないような話まで
聞かせてくれる。

それが、
なんだか少し嬉しかった。


「明日で合宿終わりですね。」

「そうだな。」

「早かったなぁ……」

二泊三日なんて、
来る前は長いと思っていたのに。

もう明日には帰る。

「なんか、
終わるのちょっと寂しいです」

そう言うと、
ユウ先輩がこっちを見た。

いつもより少し長く、
目が合った。

そのまま、
ユウ先輩の手が、
私の頭に触れた。

ぽん、ぽん

「……え?」

ユウ先輩は、
少しだけ笑った。

心臓が、一気に速くなる。

ただ、酔ってるだけ。
そう思おうとした。

でも。

昨日は、
彼氏がいるのか聞かれた。

今日は、
二人きりでこんな話をして。

今、
頭を撫でられている。

もしかして……?

ほんの少しくらい、
私のことを
意識してたりするのかな。

それとも、やっぱり
酔ってるだけ……?


翌朝。

朝ごはんのとき、
ユウ先輩は明らかに眠そうだった。

「先輩、昨日大丈夫でした?」

「何が?」

「めちゃくちゃ酔ってましたよ」

「あー……」

ユウ先輩が、
少し考える。

「俺、昨日なんか言ってた?」

「え?」

「途中から、あんま覚えてなくて。」

思わず、
ユウ先輩を見る。

二人でいろんな話をしたことも。

海外で働いてみたいって
話してくれたことも。

頭を、
ぽんぽんされたことも。

もしかして、
覚えてない?

「……結構いろいろ言ってましたよ」

「マジで?」

「はい」

「何言ってた?」

少し迷って、

「秘密です」

そう答えた。

「怖っ」

「ちなみに、
めちゃくちゃテンション高かったですよ」

「え。俺のイメージが……」

ユウ先輩が笑う。


でも、

昨日のことを覚えていない
ユウ先輩とは違って、

私は、
あのときの手の感触を
まだ覚えていた。


第二十八話へ続く



私の高校生の頃の恋は
こちらから🌸


いいなと思ったら応援しよう!

この記事が参加している募集