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第二十八話 会えなくなる前に|新しい春

第三章 ユウ先輩編
第二十八話「会えなくなる前に」

合宿から数日後。

いつものようにサークルへ行くと、
先に来ていたユウ先輩と
目があった。

「リオ、お疲れ」

「お疲れさまです」

「筋肉痛治った?」

「もう治りましたよ」

「海ではしゃぎすぎてたもんな」

「先輩もじゃないですか!」

「俺は余裕」

「またまたー」

ユウ先輩が笑った。

合宿が終わっても、
何かが大きく変わったわけじゃない。

でも、
前より少しだけ、
話すことが増えた気がする。

目が合えば、
向こうから声をかけてくれたり。

気づけば、
近くにいることが増えたり。

先輩がどう思ってるかは、
わからない。

それでも私は、
そのたびに少し嬉しくなった。


あの合宿での夜のことも、
まだ忘れていない。

彼氏がいるのか聞かれたこと。

二人きりで話したこと。

頭を、
ぽんぽんされたこと。

本人は、
ほとんど覚えていないけど。

もしかしたら、
ほんの少しくらいは。

そんな期待が、
まだ心のどこかに残っていた。


サークルが終わって、
ユリとナナと駅へ向かう。

「ねぇ」

ユリが、
少し真面目な声で言った。

「最近さ、
サークル続けるの
ちょっとしんどくない?」

「うん。分かる」

ナナもすぐに答えた。

「飲み会あると、
帰るのめっちゃ遅くなるし」

三人とも、
大学まで一時間以上かけて
通っている。

サークルには
下宿している人が多くて、
遅くなっても歩いて帰れる人もいる。

でも私たちは違う。

電車の時間を気にしながら、
途中で抜けることもあった。

「この前も終電ギリギリだったしね」

「女三人で遅い時間に帰るのも
ちょっと怖いんだよね」

「……うん」

それは、
私もずっと思っていた。

「そろそろ辞めようかなって思ってる」

ユリが言った。

「私も、ちょっと考えてる」

ナナも頷く。

「リオは?」

「私は……」

すぐに答えられなかった。

サークルを辞める。

それは、
私も少し考えていたことだった。

でも――

大学では毎日会えるわけでもない。
サークルに入っていなければ、
ユウ先輩と話す理由も、
ほとんどなくなる。

猫のところへ行っても、
会えるとは限らない。

そう思った瞬間、
急に、
怖くなった。

このまま、
何も言えないまま
会わなくなるのかな。


ふと、
高校生の頃のことを思い出した。

ナオ君。

毎日のようにメールして、
会えば楽しくて。

好きだったのに、
結局私は、
何もできなかった。

会いたいとも、
好きとも言えないまま。

あの恋が終わったあと、
何度も思った。

もう少し、
自分から動いていたら。

何か、
変わっていたのかなって。

ユウ先輩のことも、
また同じように
終わってしまうのかな。


それは、
嫌だった。

振られるかもしれない。

私のことなんて、
本当にただの後輩かもしれない。

それでも。

何も言わないまま、
また後悔するよりはいい。

「……私も、辞めようかな」

そう言うと、
ユリがこっちを見た。

「リオも?」

「うん」


まだ少しだけ、時間はある。

会えなくなる前に、
ちゃんと伝えたい。

今度は、何もしないまま
終わりたくない。

ユウ先輩に、

好きって言おう。


第二十九話へ続く



私の高校生の頃のお話(ナオ君との恋)
はこちらから読めます🌸


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