第二十六話 彼氏いるの?|新しい春
第三章 ユウ先輩編
第二十六話 「彼氏いるの?」
夜になると、
みんなで花火をすることになった。
昼間の海とは違って、
夜の砂浜は少しだけ静かだった。
波の音に、
誰かの笑い声と花火の弾ける音が混ざる。
足元には、
使い終わった花火が少しずつ増えていった。
「見て見て!」
ショウタが花火を数本まとめて持って、
楽しそうに振り回している。
「やば。あっつー!」
あまりに無邪気な様子に、
「子供かっ!」
みんなが笑った。
私もお腹を抱えて笑う。
ショウタは、
場を盛り上げるのが上手。
くだらないことを言って、
誰かがツッコんで、
またみんなで笑う。
一緒にいると、
自然とこっちまでテンションが上がる。
昼間からずっと一緒にいるのに、
まだこんなに笑えるんだ。
そんなことを思いながら、
また花火に火をつけた。
しばらくして、
新しい花火を取りに
少し離れた場所まで歩いた時だった。
気づけば、
隣にはユウ先輩がいた。
暗い砂浜を、
二人で並んで歩く。
さっきまであんなに騒がしかったのに、
少し離れただけで、
急に波の音が大きく聞こえた。
ユウ先輩が、
何気なく口を開いた。
「リオってさ」
「はい」
「ショウタと仲いいよな」
「え?」
思わずユウ先輩を見る。
「そうですか?」
「うん。よく笑ってるし」
そんなところ、
見てたんだ。
なぜかそれだけで、
少しだけ胸がざわついた。
「ショウタ、気を遣わないんですよね。
あと面白いし」
「ふーん」
ユウ先輩はそれだけ言って、
前を向いた。
何を思って言ったのか、
やっぱりわからない。
なんとなく会話が終わったような気がして、
私も黙って歩く。
砂を踏む音だけが続いた。

少しして。
「リオってさ」
「はい?」
「彼氏いるの?」
突然すぎて、
すぐに言葉が出なかった。
「……え?」
「いや、なんとなく」
ユウ先輩は、
本当に何を思ってるのか読めない。
「いないですよ」
「そっか」
それだけだった。
どうして聞いたのかも、
それ以上は何も言わない。
もしかしたら、
ショウタと仲がいいから
聞いただけなのかもしれない。
そう思うと、
それ以上は聞けなかった。
みんなのところへ戻ると、
ショウタが線香花火を
誰よりも長く残そうと必死になっていた。
「絶対、俺が最後まで残るから」
「ショウタには負けない!」
隣でユリまで本気になっていて、
思わず笑った。
でも——
「彼氏いるの?」
私の頭の中は、
その言葉でいっぱいだった。
私のこと、
少しは気にしてくれてるのかな。
そんなふうに、
また期待してしまう。
どうして、
そんなこと聞いたんだろう。
その夜は、
それ以上何もなかった。
そして翌日の夜。
私はまた、
ユウ先輩の何気ない行動に、
心を揺らされることになる。
第二十七話へ続く
私の高校生の頃の恋は
こちらから🌸
