セルフケアプランを考える①

2040年に向かって介護支援専門員(ケアマネジャー)が不足するかもしれないということは別記事で解説したが、今回はセルフケアプランについて考えてみたい。
内容的に……介護保険法を読み解いていくので、いつも以上にお堅い記事になっている。それでも興味があるかな……という人は、ぜひとも読み続けていただきたい。

老人福祉法による措置から介護保険法による契約へと変わった際、その根底にあるのは『自己選択・自己決定』の精神であり、介護保険制度において、セルフケアプランは認められている権利なのだ。

ケアプラン有料化に伴って、セルフケアプランの話題はセットとして出てきやすい。
ケアマネジャーに居宅介護支援を受ける場合、『居宅介護支援費』が発生するが、現在は自己負担が無く、全額が介護保険から賄われている。

仮にケアプラン有料化が導入され、居宅介護支援費の1割(利用者の所得水準によっては2割や3割)が自己負担になったとしよう。そうなると、人によっては月1,500円前後の負担が発生することになる。年間でいえば18,000円ほどだ。実際には各種加算などもあるため、要介護3以上の方であれば、年間20,000円を超えるケースも出てくるだろう。

なお、国は自宅で暮らす要介護者への一律の居宅介護支援費有料化については、現状、見送る方針を示している。しかし来年度以降、『住宅型有料老人ホームなどの居住者』に限定した一部有料化が、今まさに議論されている。

財政審が居宅介護支援費の自己負担導入を強く押し進めてきた経過がある以上、この『自己負担なし』という牙城が一部でも崩れ去れば、居宅介護支援費の一律有料化の議論が2030年度以降の議題として浮上してくる可能性は極めて高いだろう。

さて、そうした背景があるということを整理した上で、セルフケアプランについて改めて一つひとつ紐解いていきたい。

ニーズとアセスメントが揃っていれば、現在のAIでもそれなりのケアプランは作成できるだろう。
しかし、なぜ『ケアプランが必要なのか』という本質を理解しておかなければ、何のためのケアプランなのか、目的を見失ってしまうことになる。
そして、その答えは介護保険法の「第一条」から読み取ることができる。

第一条 この法律は、加齢に伴って生ずる心身の変化に起因する疾病等により要介護状態となり、入浴、排せつ、食事等の介護、機能訓練並びに看護及び療養上の管理その他の医療を要する者等について、これらの者が尊厳を保持し、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療サービス及び福祉サービスに係る給付を行うため、国民の共同連帯の理念に基づき介護保険制度を設け、その行う保険給付等に関して必要な事項を定め、もって国民の保健医療の向上及び福祉の増進を図ることを目的とする。

出典:介護保険法 第一条

端的に要約すると、「介護保険法は、要介護者が尊厳のある自立した日常生活を営むことができるよう、必要な保健医療や福祉のサービスに係る給付を行うため、国民共助の理念に基づき介護保険制度を設け、保険給付等に関して必要な事項を定め、国民の保健医療の向上と福祉の増進を図ることを目的とする」……となる(あまり要約になっておらず申し訳ない)。

これを僕なりに、もっとかみ砕いて整理すると以下のようになる。
『高齢者が尊厳を保ち、自立した生活を送るためのサービスを給付します』
『その給付を行うために、国民共助(共同連帯)の理念で介護保険制度を設けます』
『制度を運営するにあたって、必要なルールを定めます』

つまり、これらを通じて『国民の保健医療の向上と福祉の増進を図ること』が、介護保険法の目的なのだ。

そして、続く「第二条」もあわせて読み解いていきたい。

第二条 介護保険は、被保険者の要介護状態又は要支援状態(以下「要介護状態等」という。)に関し、必要な保険給付を行うものとする。
2 前項の保険給付は、要介護状態等の軽減又は悪化の防止に資するよう行われるとともに、医療との連携に十分配慮して行われなければならない。
3 第一項の保険給付は、被保険者の心身の状況、その置かれている環境等に応じて、被保険者の選択に基づき、適切な保健医療サービス及び福祉サービスが、多様な事業者又は施設から、総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない。
4 第一項の保険給付の内容及び水準は、被保険者が要介護状態となった場合においても、可能な限り、その居宅において、その有する能力に応じ自立した日常生活を営むことができるように配慮されなければならない。

出典:介護保険法 第二条

なぜケアプランが必要なのかという点に焦点を当てるのであれば、まさにこの「第三項」の記述が核心だと思う。
もっと深掘りすると、要介護(要支援)状態の被保険者に対して必要な保険給付を行う際には、心身の状況や環境、そして本人の自己選択に基づき、各種サービスが『総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない』ということになる。

この『総合的かつ効率的に提供されるよう配慮して行われなければならない』という条件を満たしていることを証明するもの――それこそがケアプランなのだ。
国民共助の理念によって集められた大切な保険料を使ってサービスを受ける以上、その正当な根拠としてケアプランが必要になる、と僕は理解している。

だからこそ、「好き勝手にサービスを使えるわけではない。総合的かつ効率的に提供しなければならない」というルールに沿ってケアプランを作らなければならない。
そのためには、ケアマネジメントという専門的な手法を用いる必要があり、その役割を担うプロフェッショナルが介護支援専門員(ケアマネジャー)なのだ。

そして、もしケアマネジャーに作成を依頼せず、自分自身でセルフケアプランを作成するのだとしても、この大原則は変わらない。

なお、ケアプランの具体的な作成ルールにあたっては、『指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準』に以下のように定められている。

(指定居宅介護支援の具体的取扱方針)
第十三条
(前略)
六 介護支援専門員は、居宅サービス計画の作成に当たっては、適切な方法により、利用者について、その有する能力、既に提供を受けている指定居宅サービス等のその置かれている環境等の評価を通じて利用者が現に抱える問題点を明らかにし、利用者が自立した日常生活を営むことができるように支援する上で解決すべき課題を把握しなければならない。
七 介護支援専門員は、前号に規定する解決すべき課題の把握(以下「アセスメント」という。)に当たっては、利用者の居宅を訪問し、利用者及びその家族に面接して行わなければならない。この場合において、介護支援専門員は、面接の趣旨を利用者及びその家族に対して十分に説明し、理解を得なければならない。
八 介護支援専門員は、利用者の希望及び利用者についてのアセスメントの結果に基づき、利用者の家族の希望及び当該地域における指定居宅サービス等が提供される体制を勘案して、当該アセスメントにより把握された解決すべき課題に対応するための最も適切なサービスの組合せについて検討し、利用者及びその家族の生活に対する意向、総合的な援助の方針、生活全般の解決すべき課題、提供されるサービスの目標及びその達成時期、サービスの種類、内容及び利用料並びにサービスを提供する上での留意事項等を記載した居宅サービス計画の原案を作成しなければならない。
(後略)

出典:指定居宅介護支援等の事業の人員及び運営に関する基準

セルフケアプランを作成するにあたり、居宅介護支援事業所のケアマネジャーと全く同じ手順や書類を求められるかどうかは、各市町村の判断(運用ルール)に委ねられる部分もあるだろう。
しかし、僕自身の考えとしては、手順の有無にかかわらず、ケアプランの正当な根拠として「ニーズの把握」と「アセスメント」は絶対に必要だと思う。

そして、この「ニーズの把握」と「アセスメント」は、現状のAIで行うのは極めて困難だ。
将来的には可能になるかもしれないが、揺れ動く人の心から本当のニーズを深掘りし、その時の心理状況や環境を考慮しながら身体機能を推し測ることは、経験と知識を有する『人間』だからこそできる技だと思う。
AIにセルフケアプランを作ってもらうには、このハードルをどのようにクリアするかが大きな課題になるだろう。

さて、長くなってしまったので今日はここで区切りとしたい。
次回は、セルフケアプランにおける「アセスメント」について、さらに深掘りしていく予定だ。
(明日とは限らないことは先に宣言しておこうと思う)