第2期・新連載|第9話|日常のどこから文章は生まれるのか
おはようございます
Kana Sakuraです✨
前回の記事↓
第8話では、
うまく書こうとすると、
最初にそこにあった何かまで、
一緒に消してしまうことがある。
そんな話を書きました。
そして最後に、
また一つ疑問が出てきました。
そもそも私たちは、
何も起きていないように見える毎日の中から、
どうやって、
「書きたいこと」を見つけているのでしょう。
今日は、そこから考えてみたいと思います。
文章を書いていると、
「ネタはどこにありますか?」
という話になることがあります。
旅行に行った。
珍しいものを見た。
大きな失敗をした。
新しいことに挑戦した。
誰かと面白い出来事があった。
こういう日は、
比較的分かりやすいです。
「今日はこれを書こう。」
となります。
問題は、
何もない日です。
朝起きる。
いつもの一日が始まる。
いつもの道を通る。
いつものことをする。
ご飯を食べる。
お風呂に入る。
寝る。
事件なし。
大発見なし。
人生を変える出来事なし。
平和です。
とてもいいことです。
でも、
記事を書く側としては、
少し困ります。
「今日、何もなかった。」
となるからです。
ただ最近、
本当に何もなかったのかな。
と思うことがあります。
たとえば、
コンビニで買おうと思っていたものが、
売り切れていた。
いつも通る道に、
知らないお店ができていた。
電車の中で、
誰かの会話が少しだけ聞こえた。
昔よく聴いていた曲が流れてきた。
冷蔵庫を開けたのに、
何を取りに来たのか忘れた。
外に出たら、
思っていたより風が涼しかった。
たぶん、
どれも大事件ではありません。
ニュースにもなりません。
家に帰って、
「今日こんなすごいことがあった!」
と報告するほどでもない。
でも、
その瞬間、
ほんの少しだけ、
何かを感じています。
「あ。」
「懐かしい。」
「なんで?」
「ちょっと嬉しい。」
「これ、前にもあった。」
「なんか気になる。」
その小さな反応は、
すぐ消えます。
数秒後には、
別のことを考えています。
だから一日の終わりには、
「今日は何もなかった。」
となる。
もしかすると、
文章になるものがないのではなく、
文章になる前に、
通り過ぎているだけなのかもしれません。
第6話で、
自分では普通だと思っていることが、
誰かには面白いこともある。
という話を書きました。
今回は、
それよりさらに小さいものを考えています。
出来事ですらないもの。
自分の中で、
ほんの一瞬だけ引っかかったものです。
たとえば、
昔よく聴いていた曲を、
偶然どこかで耳にしたとします。
それだけなら、
「昔の曲を聴きました。」
で終わります。
でも、
その瞬間、
なぜか昔の部屋を思い出した。
当時使っていた机。
窓から見えていた景色。
その頃よく話していた人。
忘れていたはずのことが、
急に出てくる。
そうなると、
曲の話を書こうとしていたはずなのに、
気づけば、
「記憶って不思議だな。」
という話になっているかもしれません。
あるいは、
道端に落ちているものを見て、
なぜか気になった。
「なんで私はこれを見たんだろう。」
と考えているうちに、
別のことを思い出すかもしれない。
文章の始まりって、
意外とそんなものなのかもしれません。
大きなテーマが先にあって、
そこから文章が始まる。
そういうこともあります。
でも、
小さな違和感から始まって、
書いているうちにテーマが見えてくる。
そんな文章もある。
第7話で、
「書く前に答えを決めなくてもいい。」
と書きました。
それなら、
書く前に、
立派なテーマまで決めなくてもいいのかもしれません。
最初にあるのは、
「なんか気になる。」
だけ。
そこから書いてみる。
「なんで気になったんだろう。」
と考える。
すると、
その奥に、
自分でも気づいていなかったものがある。
私は以前、
記事を書くなら、
何か書くべきことを見つけなければいけない。
と思っていました。
でも今は、
少し違う見方もできる気がしています。
書くべきものを探すというより、
自分が何に反応したのかを見る。
笑った。
引っかかった。
腹が立った。
懐かしくなった。
ちょっと寂しくなった。
「なんでだろう。」
と思った。
その反応の先に、
文章の入口がある。
そう考えると、
日常の見え方が少し変わります。
「今日は何か面白いこと起きないかな。」
と待たなくてもいい。
面白いことが起きなくても、
自分は一日の中で、
何度も何かに反応しています。
ただ、
そのほとんどを忘れている。
だとしたら、
文章を書くために必要なのは、
特別な毎日ではなく、
通り過ぎそうになったものに、
少しだけ立ち止まることなのかもしれません。
「今、なんで笑ったんだろう。」
「なんでこの一言が気になったんだろう。」
「なんでこれを思い出したんだろう。」
そんなふうに、
一度だけ戻ってみる。
そこには、
まだ記事はありません。
タイトルもありません。
結論もありません。
あるのは、
小さな「あれ?」だけです。
……また「あれ?」です。
この連載、
「あれ?」が多い。
第5話でも、
第7話でも、
第8話でも出てきました。
最初は偶然だったのですが、
ここまで来ると、
少し気になります。
もしかすると私は、
何かが分かった瞬間より、
「今まで普通だと思っていたけど、本当にそうなのかな。」
と思った瞬間に、
文章を書きたくなるのかもしれません。
これも、
まだ分かりません。
ただ、
第9話まで書いてきて、
一つだけ変わってきたことがあります。
以前より、
「何を書くか。」
を探すときに、
遠くを見なくなった気がします。
特別な経験。
大きな発見。
誰かに教えられる知識。
もちろん、
それらも記事になります。
でも、
それだけではない。
今日、
自分の中で一瞬だけ動いたもの。
それを拾ってみる。
そこから文章が始まることもある。
そう思えるようになりました。
そうすると、
「何もなかった一日。」
という言葉も、
少し怪しく見えてきます。
本当に何もなかったのでしょうか。
それとも、
あったのに、
気づかず通り過ぎただけなのでしょうか。
今日一日を思い返してみると、
たぶん、
一つくらいあります。
笑ったこと。
気になったこと。
少し立ち止まったこと。
誰かの一言。
昔を思い出した瞬間。
どうでもいいと思った違和感。
その中の一つを拾って、
「なんでだろう。」
と考えてみる。
すると、
昨日までは何でもなかったものが、
文章の入口になるかもしれません。
さて。
次は第10話です。
最初の10話が、
もうすぐ終わります。
第1話を書いたときには、
まだ見えていなかったものが、
少しずつ出てきました。
でも、
答えが見つかった、
という感じではありません。
むしろ、
問いが増えています。
第10話では、
一度だけ立ち止まって、
ここまでの9話を振り返ってみようと思います。
何が分かったのか。
ではなく、
何が見え始めたのか。
今は、
そこを見てみたいと思います。
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