第2期|第8話|うまく書こうとすると消えてしまうもの
こんにちは。
Kana Sakuraです✨
前回の記事↓
第7話では、
書く前に答えを決めなくてもいい。
そんな話を書きました。
答えがあるから書くのではなく、
分からないから書いてみる。
書きながら考えて、
途中で、
「あ、私が気になっていたのはこっちだったんだ。」
と気づくこともある。
文章は、
答えを発表する場所だけではなく、
答えを探す場所にもなる。
のかもしれない……。
今のところ、
そんなふうに考えています。
そして今日は、
それとは少し違う、
でも、たぶん近いところにある話です。
文章を書いていると、
突然、
「うまく書きたい。」
と思う瞬間があります。
せっかく公開するなら、
読みやすくしたい。
分かりやすくしたい。
できれば、
「いい文章だった。」
と思ってもらいたい。
当然です。
私だって思います。
わざわざ、
「今日は読みにくい文章を書こう。」
とは思いません。
ところが、
不思議なことがあります。
「うまく書こう。」
と意識した途端、
さっきまで普通に出てきていた言葉が、
急に出てこなくなる。
一行書く。
消す。
また書く。
「なんか違う。」
消す。
もう一回書く。
「さっきの方がよかったかも。」
戻す。
そして、
「いや、やっぱり違う。」
また消す。
気づけば、
一行目だけで、
ずいぶん長い時間が経っています。
まだ、
何も始まっていません。
さっきまで頭の中には、
話したいことがあったはずなのに。
文章を良くしようとしているうちに、
その「話したかった感じ」まで、
どこかへ行ってしまう。
これは何なんでしょう。
たとえば、
友人に面白い出来事を話すとき。
「ねえ、聞いてー。」
から始めて、
身振り手振りまでつけながら、
勢いで話すことがあります。
「それでさ。」
「え、待って。」
「違う違う、そこじゃなくて。」
話は多少前後します。
言葉も完璧ではありません。
途中で、
「あれ、何て言うんだっけ。」
となることもあります。
でも、
相手は笑っている。
ちゃんと伝わっています。
ところが、
同じ話を文章にしようとした瞬間、
急に私は、
よそ行きになります。
「この出来事から私は――」
……誰ですか。
さっきまで、
「ねえ聞いてー。」
だった人は、
どこへ行ったのでしょう。
文章になった途端、
急に背筋を伸ばして、
きれいな言葉を使い始める。
もちろん、
文章なのだから、
話し言葉とまったく同じにはできません。
読みやすく整えることも必要です。
でも、
整えれば整えるほど、
なぜか最初にあったものが、
薄くなっていくことがあります。
たとえば、
何かに驚いた瞬間。
本当に驚いたときって、
意外と立派なことを言いません。
「え。」
だったりします。
ものすごく嬉しいときも、
「やったー!」
だったりする。
笑いすぎたときなんて、
まともに話せません。
それなのに文章にすると、
「私はこの出来事に大きな喜びを感じました。」となる。
間違ってはいません。
意味も通じます。
でも、
なんでしょう。
ちょっと遠い。
「やったー!」
の中にあったものが、
きれいな文章にした途端、
少し見えにくくなった気がします。
もしかすると、
文章には、
整えることで伝わるものと、
整えすぎることで消えてしまうものが、
両方あるのかもしれません。
言葉の勢い。
迷い。
照れ。
そのとき本当に出た一言。
ちょっと変な言い回し。
その人だけが使う言葉。
書き手自身は、
そういうところを見つけると、
直したくなります。
「もっとちゃんとした言葉にしよう。」
「こっちの表現の方がきれい。」
「同じ意味なら、こちらの方が賢そう。」
賢そう。
これが危ない。
少なくとも、
私の場合は危ないです。
自分より少し賢そうな文章を書き始めると、
だんだん、
自分がいなくなります。
文章だけ見ると、
ちゃんとしている。
誤字もない。
話もまとまっている。
言葉もきれい。
でも読んでみると、
「これ、私が話している感じがしない。」
となる。
うまく書けているはずなのに
なぜか直したくなる。
前回、
「書くことで考える。」
という話を書きました。
もし書くことが、
まだ形になっていない考えを探す作業でもあるのなら、
最初からきれいに書こうとすることは、
まだ見つかっていないものまで、
先に整えてしまうことなのかもしれません。
少し変な言葉が出てきても、
とりあえず残してみる。
話が少し脱線しても、
そのまま進んでみる。
「これ、必要かな。」
と思った一言も、
すぐには消さない。
すると、
その先に、
自分でも予想していなかったものが出てくることがあります。
逆に、
最初から全部きれいに並べようとすると、
そこへ行く前に、
道を閉じてしまう。
そんなこともあるのかもしれません。
ただ、
ここで一つ困ります。
では、
文章は直さない方がいいのか。
たぶん、
それも違います。
読みにくいところは直したい。
同じ話を何度もしていたら削りたい。
伝わらない部分は説明したい。
誤字も直したい。
公開する文章なら、
読む人の時間も大切にしたい。
だから、
「整えない方がいい。」
という話ではなさそうです。
では、
何を整えて、
何を残せばいいのでしょう。
……また出ました。
「あれ?」
この連載、
本当に疑問が増えていきます。
第7話では、
答えより疑問の方が増えている、
と書きました。
第8話でも、
順調に増えました。
100話目には、
ものすごい数になっている可能性があります。
大丈夫でしょうか。
でも今は、
それでいいことにします。
今日分かったのは、
ほんの少しだけです。
うまく書くことと、
その人らしい文章になることは、
必ずしも同じではない。
文章を整えることは大切。
でも、
整える途中で、
最初にそこにあった何かまで、
一緒に消してしまうことがある。
それが何なのかは、
まだ、うまく言えません。
勢いなのか。
感情なのか。
その人らしさなのか。
話しているような感じなのか。
もしかしたら、
全部少しずつ違うのかもしれません。
だから今は、
文章を書いていて、
「この言い方、ちょっと変かな。」
と思ったとき、
すぐ直す前に、
一度だけ考えてみようと思います。
これは、
読みにくいから直したいのか。
それとも、
「うまい文章に見せたい。」
から直したいのか。
もし後者なら、
少しだけ、そのまま残してみる。
きれいではない一言の中に、
その文章でしか残せないものが、
隠れているかもしれないからです。
そして、
こういうことを考え始めると、
次に気になってくることがあります。
そもそも私たちは、
何も起きていないように見える毎日の中から、
どうやって、
「書きたいこと」を見つけているのでしょう。
……また、
次の「あれ?」が出てきました。
第8話。
今日も答えは、
まだ途中です。
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