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グルーヴは認知症予防になる?~なぜ「音楽 × 医学」 なのか(第2回)

※この記事は私の個人的な視点と妄想まじりの考察です。 イヤホンでこの曲を流しながら読むと、書いてあることがそのまま“体感”として入ってきます。Santana - The Game Of Love (Official Video) ft. Michelle Branch


第2回:グルーヴしているとき、脳の中では何が起きているのか


~リズムと脳の不思議な関係

前回は、

「グルーヴしているとき、脳は良い状態にある」
「その“良い状態”は認知症予防に関係しているかもしれない」

というところで終わりました。

今回は、グループの裏側で、脳がどんな働きをしているのかを、最新の神経科学から見ていきます。

ここで紹介するのは、この2つの研究です。

これらの研究は、グルーヴは“脳が先にリズムを感じ取って動く力”で、その働きが認知機能を守る可能性を指摘しています。


🔗 引用①:Nature Reviews Neuroscience(2025)

「Musical neurodynamics」

この論文は、理論脳科学の巨星カール・フリストン氏や、音楽脳科学の世界的権威であるピーター・ヴースト氏、そしてリズム共鳴の第一人者エドワード・ラージ氏といった、AIに言わせると、まさに**『音楽と脳のオールスターチーム』**によって書かれた、これからの音楽研究の指針となるような重要な文献です。

この論文は、音楽を聴く・演奏する時に脳で起きていることを、“神経振動(neural oscillation)=「脳波のリズム」や「脳の同調」”という視点から説明しています。


印用②:Frontiers in Psychology(2022)

 ※スイスのFrontiers Media社が発行している学術雑誌

「The sweet spot between predictability and surprise」

本論文の筆頭著者であるマリア・ヴィッセル博士は、長年「音楽と身体の連動」を研究してきたグルーヴ研究の第一人者。
バーミンガム大学を拠点に、心理学と脳科学の両面から「ノリ」の正体を解明し続けているスペシャリスト集団による最新の報告となっています。

この研究は、あの“気持ちよさ”の正体を予測 と ズレ の関係で説明しています。


ここからは、この2つの研究をもとに、
リズム演奏と脳の関係を4つのポイントで整理していきます。


❶ リズム演奏は脳の複数領域を同時に刺激する

Nature論文によると、音楽に合わせて動くとき、脳では

  • 聴覚野(音を聞く)、

  • 運動野(体を動かす)

  • 前頭前野(予測・判断)

  • 小脳(タイミング調整)

  • 報酬系(快感・ドーパミン)

が同時に活動すると言っています。

要するに、

 リズム演奏は“脳の総合運動”である

とのこと。
そのため、ただ聴いているだけでは起きない、濃くて複雑な脳活動が生まれているのです。


❷ リズムは“反応”ではなく“対応”である

Nature論文が強調しているのは、

脳は、音を“ただ聞くだけ”ではなく、自分から音楽に寄り添ってリズムをつかみにいくように働いている。

という点。

だから、手拍子やギター・ベース・パーカッション等の楽器演奏は

  • 音に合わせている
    というより

  • 脳が先に動いている(anticipation)

という状態になります。

もし脳が受動的(音が聞こえてから反応するの)”であれば、私たちは常に音を追いかけることしかできず、基準がないため「ズレ」を認識することすらできません。

しかし、脳が**「次はここだ!」と先に動いている(Anticipation)**からこそ、その基準点に対して、これが、前ノリ・後ノリ・シンコペーションといった“ズレの表現”を可能にするようです。


❸ グルーヴを作るとき脳で何が起きているか

Frontiers論文は、グルーヴの快感を

「予測」と「少しのズレ」のバランス

で説明しています。

完全に予測通りだと退屈。
大きく外れると混乱。

でも、

私たちの脳は、予想していたタイミングから外れると、思わず「おっ」と反応する。

わかり易く言えば、機械的な正確なリズムは退屈で、今流しているSantanaの『The Game Of Love』で、ミシェル・ブランチの歌声やギターが拍のジャストな位置から、ほんの数ミリ秒だけ後ろにずれる絶妙なタメを持って入ってくる瞬間に「ゾクッ」とするのは、

脳が

  • 予測→ズレ→調整→快感というループを高速で回しているから。

言い換えれば、

グルーヴとは“脳の予測ゲーム”

と言うことができるのです。

更に論文によると、
予測が“少しだけ外れる”と、脳の報酬系が活性化するとしています。



❹ 聴くより“演奏する”方が脳に効く理由

Nature論文が示すように、
「演奏中=パフォーマンス中」には
予測・調整・指や足等の筋肉の動き・快感に報酬・他者との同期が同時に起きます。一方、聴くだけではこの複雑な脳活動は起きません。

そのため
・ベースを弾く、
手拍子をする、
・カウベルを叩く、
・ギターを弾く、
・バンドで合わせる。

こうした行為は、認知機能のトレーニングとして非常に優秀と言って
良いでしょう。


■ まとめ:グルーヴは“脳の健康技術”になりうる

ここまで見てきたように、

  • 予測・ズレ・調整・快感・身体の同期、これらが同時に起きる演奏行為は、
    脳にとって非常に濃い刺激です。

つまり、

グルーヴしているとき、脳は良い状態にある。
そしてその状態は、認知症予防や脳の健康に関係している可能性が高い。

こんなに音楽が好きな国なのに、
この視点を語るミュージシャンはまだ多くありません。

なぜなのか。

・ミュージシャンは「音楽は感性の領域」として扱いがち
・ 医学側は「音楽は娯楽」と見なしてきた
  
そのところの推察も含めて、次回はさらに深掘りしていきます。

■1回〜5回までをひとつのマガジンにまとめました。 よろしければ、こちらから通しで読んでみてください。

※本記事は筆者の経験と考察に基づくものであり、医学的助言を目的としたものではありません。音楽と医学の関係を考えるきっかけとしてお読みください。


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