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上司マネジメントのススメ

「上司マネジメント」と聞くと、少し身構えませんか。上司の好みを覚えて、機嫌を損ねないようにして、うまく立ち回る。なんとなく、そんな社内政治っぽい響きがあります。
でも仕事をしていると、「上司をうまく使える人」はたしかにいるんですよね。そして、そういう人ほど仕事がスムーズに進んでいる。これはなぜなのでしょう。
考えてみれば、上司は自分を評価する人であると同時に、自分にはない情報や権限を持っている人でもあります。他部署に話を通したり、人や予算を動かしたり、会社の優先順位を知っていたりする。それなのに、上司を「自分を管理する人」とだけ考えるのは、少しもったいない気がします。
上司マネジメントとは、自分が成果を出すために、上司との間にある目標、情報、意思決定、資源、期待の流れを整えることです。そう考えると、これは上司のためというより、かなり自分のための技術に見えてきます。

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① 目標と優先順位を管理する

仕事が忙しくなると、どうしても目の前のタスクに集中します。依頼された資料を作る、会議の準備をする、プロジェクトを進める。ちゃんと頑張っているのに、なぜか「そこじゃないんだよな」と言われることがあります。
あれは本当に、能力の問題なのでしょうか。もしかすると、自分が重要だと思っていることと、上司が今どうしても達成したいことがズレているだけかもしれません。
上司には上司のKPIや責任範囲があり、その上には部門や経営の優先順位があります。だから、「この仕事をやるべきですか?」と一つずつ聞くより、「今期はAが最優先だと理解しているので、BよりCを先に進めます」と確認したほうが、ずっと仕事は進めやすい。
上司の目標を知ることは、上司に合わせることではありません。自分の時間を、本当に成果につながる仕事へ使うための情報収集なのだと思います。

② 期待値を管理する

「ここまで作ってくれると思っていた」
「え、今日中に必要だったんですか?」
こういうすれ違い、仕事ではよくあります。上司は完成版を待っていたのに、こちらはたたき台のつもりだった。こちらは一週間あると思っていたのに、上司は明日の会議で使うつもりだった。
そこで急いで直して、「もっと早くやればよかった」と反省する。でも、本当に頑張り方の問題なのでしょうか。最初に期待値が合っていなかっただけ、と考えると見え方が少し変わります。
何を、いつまでに、どの品質で出すのか。どこまで自分で決めてよいのか。途中で相談するなら、どのタイミングなのか。最初に少し確認するだけで、後から発生する手戻りはかなり減ります。
期待値を管理するというと、上司の期待に何でも応える話に聞こえます。でも、むしろ逆です。曖昧な期待を、曖昧なまま引き受けない。そのほうが自分も上司も楽になります。

③ 情報を管理する

「上司にはこまめに報告しましょう」とよく言われます。でも、報告は多ければ多いほどよいのでしょうか。
毎日たくさん情報を送っても、上司が「で、私は何を判断すればいいの?」となっていたら、あまり意味がありません。
たとえば、「プロジェクトが少し遅れています」では、どのくらい困っているのか分かりません。「現在3日遅れています。このままだと来月のリリースに影響します。原因はAで、Bを優先すれば予定に戻せます」なら、上司は次の判断ができます。
つまり、情報管理とは、たくさん伝えることではなく、上司が判断できる形で、必要なタイミングに渡すことなのでしょう。
ただ、最初から完璧な報告にする必要もありません。関係を作っている時期なら、Slackで「報告です」と短く状況を置いておくだけでもいい。どの情報を上司が気にするのかは、やり取りを重ねるうちに分かってきます。
悪いニュースも同じです。「もう少し自分で何とかしてから」と抱えている間に、使える選択肢が減ることがあります。問題が小さいうちに早く共有するのは、失敗を告白することではなく、問題を解ける時間を増やすことなのだと思います。

④ 意思決定と資源を管理する

仕事には、自分がいくら頑張っても動かせないものがあります。他部署から人を借りたい。追加予算がほしい。プロジェクトの優先順位を変えたい。これは本人の能力ではなく、そもそも権限の問題です。
こういうときこそ上司の出番です。
ただ、「営業部が協力してくれません。どうしましょう?」と持っていくと、問題を整理し、解決策を考えるところから上司の仕事になります。
では、「予定通り検証するには、営業から週4時間の協力が必要です。難しければ対象顧客を半分にできます。どちらで進めるか判断してほしいです」と持っていったらどうでしょう。上司がやることは、かなり小さくなります。
ここまで考えると、上司への相談とは何なのでしょう。
なんでも困ったら答えを教えてもらうことではなく、上司にしかできない意思決定を切り出してお願いすることなのかもしれません。
自分一人で10時間頑張るより、上司に30分動いてもらい、人を一人アサインしてもらったほうが仕事が進むこともあります。自分の努力量だけでは届かないところを、上司の権限や資源で動かす。ここに上司マネジメントのおもしろさがあります。

⑤ 信頼と予測可能性を管理する

大きな仕事を任される人を見ると、「やっぱり優秀だからだよね」と思います。もちろん、それもあるでしょう。
でも、本当に能力だけなのでしょうか。
約束した日には成果物が出てくる。遅れそうなら事前に連絡がある。問題が起きれば早めに共有する。自分で決めてよい範囲は進め、上司の判断が必要なところだけ相談する。こういう人は、上司からするとかなり「予測しやすい」人です。
反対に、成果物はすばらしいけれど、いつ出てくるか分からない。問題を最後まで抱え込む。聞くたびに状況が変わる。となると、大きな権限を渡すのは少し怖くなります。
信頼というと、人柄や相性の話に聞こえます。でも仕事では、「この人に任せたら、だいたいこう動いてくれる」と分かることも、とても大きな信頼なのでしょう。
だから、自分の仕事の状況を必要以上に隠さない。上司が全体を把握できるようにしておく。その安心感が積み上がるほど、細かな確認は減り、自分で決められる範囲は広がっていきます。
予測可能性が上がるほど、管理されるコストは下がり、裁量は増えていきます。

フィードバックをたくさん求めればよい、でもない

成長したければ、上司からたくさんフィードバックをもらったほうがいい。これも、とても正しそうに聞こえます。
でも、「何か改善点はありますか?」と毎週聞けば、その分だけ成長するのでしょうか。聞かれた上司も、質問が漠然としていれば、「特に問題ないよ」「もう少し頑張ろう」くらいしか答えられないことがあります。
それより、「今回はスピードを優先してAではなくBを選びました。結果はこうなりましたが、この判断をどう見ましたか?」と聞くほうが、ずっと具体的な話になります。
ここで知りたいのは、正解だけではありません。
「この人は、こういう場面で何を見て判断しているんだろう?」
そこが分かれば、次は自分でも考えられます。フィードバックを答え合わせとして使うのではなく、自分にはない判断基準を手に入れるために使う。
上司から何度も答えを教えてもらうより、上司がどうやって答えを作っているのかを知る。そのほうが、長い目では自分の中に残るものが大きいのではないでしょうか。

上司は、自分の生産性を上げるレバレッジ

ここまで考えてみると、上司マネジメントは「上司とうまく付き合う方法」とは少し違って見えてきます。
もっと単純に、自分一人の能力だけで仕事をしないための方法なのだと思います。
上司は、自分にはない情報、権限、人脈、予算、そして経験を持っています。それなのに、「これは自分の仕事だから」と、すべて一人で何とかする必要はあるのでしょうか。
優先順位が分からなければ聞けばいい。期待値が曖昧なら合わせればいい。判断が必要なら、判断できる材料を用意して頼めばいい。人や予算が必要なら、権限を借りればいい。そして判断理由が分からなければ、「なぜですか?」と聞けば、自分の判断力を育てる材料にもなります。
そうして成果が出れば信頼が増え、より大きな仕事や裁量を任されるようになります。難しい仕事を経験できれば、それがまた次の成長につながる。
上司からマネジメントされることだけを考えていると、部下はずっと「使われる側」です。でも、上司もまた、仕事を前へ進めるために使える資源のひとつだと考えたらどうでしょう。
上司マネジメントとは、上司に気に入られる技術ではありません。上司というレバレッジを使って、自分の生産性と成長速度を上げる技術です。

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