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AI活用100本ノック #063 AI時代の夏休みの宿題は、「過程が残る形」で出す

AI活用100本ノック、63本目。

今回のテーマは、夏休みの宿題の設計です。

一言で言うと、これです。

完成品だけを提出させる宿題から、途中の跡が残る宿題へ。

夏休み前になると、毎年同じことを考えます。

読書感想文。
自由研究。
一行日記。
漢字や計算。
作品募集。

どれも意味はあります。意味はあるのですが、AIがここまで普通に使えるようになると、「提出されたもの」だけを見て、その子がどこまで考えたのかを判断するのがかなり難しくなりました。

読書感想文は、あらすじと感想の型を入れれば数秒で出ます。
自由研究のまとめも、テーマ、方法、結果、考察までそれっぽく整います。
ポスターのキャッチコピーも、AIに聞けばいくらでも出てきます。

ここで「AI禁止」と言うのは簡単です。

でも、家庭で本当に使っていないかを教師が確かめることはできません。保護者が手伝ったのか、兄弟が助けたのか、AIを使ったのか。そこを取り締まる方向に行くと、宿題が学びではなく、探偵ごっこになってしまう。

それは、あまり健全ではないと思っています。

だから今年は、考え方を変えました。

AIを使ったかどうかを見抜くのではなく、AIを使っても、その子の学びが残る形に宿題を変える。

ここが、夏休みの宿題設計の分岐点だと思います。

完成品だけを見るから苦しくなる

これまでの宿題は、どうしても「完成品」に寄りがちでした。

きれいに書かれた感想文。
整った自由研究のレポート。
色が塗られたポスター。
最後まで埋まったワーク。

もちろん完成させる力は大切です。

でも、完成品だけを見ると、途中の学びが見えません。

どこで迷ったのか。
どこを自分で直したのか。
何を調べて、何を捨てたのか。
最初の考えから、どれくらい変わったのか。

ここが見えない。

AI時代に一番危ういのは、「AIが完成品を作ること」そのものではなく、完成品しか見ない課題設計の弱さが露出することだと思います。

つまり、AIが宿題を壊したというより、もともと宿題の見取りが苦手だった部分を、AIがはっきり見せてきた感じです。

だから、宿題の中心を少しずらします。

完成品は出してもいい。
でも、それだけにしない。

その横に、途中の跡を置く。

途中の跡を提出物にする

一つ目の工夫は、途中を提出物にすることです。

たとえば読書感想文なら、完成した原稿だけでなく、次のようなものも一緒に出してもらいます。

・心に残ったページのメモ
・付箋を貼った本の写真
・最初に書いた感想の走り書き
・書き直す前と後で変えたところ

ここで大事なのは、量を増やしすぎないことです。

「読書メモを3枚書きましょう」と言うと、それ自体が重たい宿題になります。そうではなく、A4半分でも、付箋3枚でも、写真1枚でもいい。

見たいのは、きれいなノートではありません。

その子が本と出会った跡です。

自由研究でも同じです。

完成したレポートだけでなく、

・最初に立てた予想
・実験や観察の途中写真
・うまくいかなかったこと
・最後に考えが変わったところ

を残してもらう。

AIは、完成したレポートを整えることはできます。

でも、「家の台所で失敗した実験の写真」や「最初はこう思っていたけれど、やってみたら違った」という変化までは、本人の体験がないと書けません。

宿題をAIから守るのではなく、体験の方へ戻す。

これが一番自然な対策だと思っています。

体験とセットにする

二つ目の工夫は、調べたことだけで終わらせないことです。

AIが得意なのは、「一般的な説明」です。

水の蒸発について説明して。
地域の特産品についてまとめて。
平和について感想を書いて。

こういう問いは、AIがそれっぽく答えます。

逆にAIが弱いのは、「あなたはどうだったか」です。

実際にやってみて、何が難しかったのか。
予想と違ったところはどこか。
家族に聞いたら、どんな話が出てきたのか。
自分の生活とつながったところはどこか。

ここは本人の経験が必要です。

だから、宿題の問いを少し変えます。

「調べてまとめましょう」ではなく、
「調べて、やってみて、どうだったかを書きましょう」。

「感想を書きましょう」ではなく、
「読む前の自分と、読んだ後の自分で変わったところを書きましょう」。

「自由研究をしましょう」ではなく、
「試して、失敗して、直したところを一つ入れましょう」。

この一文があるだけで、宿題はかなり変わります。

AIに聞いてもいい。
おうちの人に相談してもいい。
でも、最後には自分の体験に戻ってくる。

この形なら、AIを使うことがそのままズルにはなりません。むしろ、調べる入口としてAIを使い、その後に自分の経験で確かめる流れを作れます。

AIの使い方欄を作る

三つ目の工夫は、AIや家の人に手伝ってもらったところを書く欄を作ることです。

これは、かなり大事だと思っています。

子どもに「AIを使ったらダメ」とだけ言うと、使った子は隠します。隠すと、教師は見取れません。見取れないと、指導できません。

だったら最初から、使い方を書く欄を作る。

たとえば、提出用紙の最後にこう入れます。

「AIやおうちの人に手伝ってもらったところ」

選択肢は、こんな感じで十分です。

・テーマを考えるときに相談した
・調べる言葉を出してもらった
・文章を読みやすく直すときに使った
・使っていない
・その他

ここで重要なのは、責めるための欄にしないことです。

「正直に書いてくれたら、それも学びの一部として見ます」

この空気を作る。

AIを使ったことを罰するのではなく、どう使ったかを振り返る。

それが情報活用能力の入口になります。

教師側の負担を増やしすぎない

ただし、過程を残す宿題には注意点もあります。

教師の見るものが増えすぎると、続きません。

夏休み明けに、写真、メモ、下書き、完成品、振り返りを全部細かく評価する。これは現実的ではありません。

だから、評価の観点も絞ります。

私は次の3つくらいで十分だと思っています。

・途中の跡があるか
・自分の体験や考えが入っているか
・手伝ってもらったところを正直に書けているか

上手な文章かどうか。
立派な作品かどうか。
完璧な研究かどうか。

そこに寄せすぎない。

夏休みの宿題は、コンクール作品を作るためだけのものではありません。子どもの生活の中に、少しだけ学びの時間を残すためのものです。

AI時代だからこそ、宿題もそこへ戻したい。

今日のノック

今日のノックは、これです。

夏休みの宿題を一つだけ、「過程が残る形」に変える。

全部を変えなくていいです。

まずは読書感想文でも、自由研究でも、ポスターでも、どれか一つ。

その宿題に、次の3つを足してみる。

・最初のメモ
・やってみた跡
・手伝ってもらったところ

これだけで、宿題の意味はかなり変わります。

AIに書かれたかどうかを見抜く宿題から、子どもの学びを見取る宿題へ。

そちらの方が、教師も子どもも少し楽になる気がします。

効果と感想

「AI使用欄」を作ると、隠れて使う後ろめたさが消えて、家庭との信頼関係の方に効く。

OECDのデジタル教育に関する整理でも、生成AIで成果物がよく見えることと、学習が残ることは別問題として扱われています。

だからこそ、完成品だけで判断しない。

夏休みの宿題は、AI禁止のためにあるのではなく、子どもの中に何かを残すためにある。

今年の宿題設計は、そこから考え直したいです。

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