見出し画像

Google Earthで、世界を「見る」から「飛ぶ」へ。──フライトシミュレーターで、社会科の問いを増やす話|AI活用100本ノック #057



「現役教員がAI活用を毎日1本書く」と決めた100本ノックの57本目です。

「これほんと?」

そんな気持ちで調べました。

ほんとでした。

Google EarthのWeb版で、フライトシミュレーターが使えるようになっています。

公式ドキュメントでは、Google EarthのExperimental機能として「Flight simulator」が案内されています。しかも、Web版Google Earthから起動できます。

Google Earthを開く。
Explore Earthに入る。
ToolsからFlight Simulatorを選ぶ。

それだけで、ブラウザ上で地球を飛べます。

もちろん、これは本格的な航空訓練用のシミュレーターではありません。公式にも、カジュアルな探索向けで、飛行物理は簡略化されていると書かれています。

でも、私はこのニュースを見たとき、単なる「面白い新機能」としては受け止めませんでした。

これは、子どもたちが世界を見る入口を、少し変えるかもしれません。


地図を見る、から、地形の上を飛ぶへ

社会科で地図を使うことは多いです。

日本地図。
世界地図。
地形図。
白地図。
航空写真。

どれも大事です。

でも、地図はどうしても「平面」に見えます。

山も、川も、町も、海岸線も、記号や色として処理されやすくなります。

もちろん、それが地図のよさでもあります。
情報を整理し、比較し、読み取れます。

ただ、子どもにとっては、地図上の線や色が、なかなか実感につながらないことがあります。

川が町をつくる。
山が交通を分ける。
海沿いに町が広がる。
平野に田畑が集まる。
港の近くに工場が集まる。

こういうことは、説明すれば分かります。

でも、上空から飛ぶように見ると、少し違います。

「あ、山があるからこっちに道が通っているのか」

「川の近くに町が広がっている」

「空港って、こんな広い土地が必要なんだ」

「海の近くの町と、内陸の町は見え方が違う」

地図を読む前に、世界を感じる。

その入口として、Google Earthのフライトシミュレーターはかなり面白いと思います。


子どもの「あれ?」を生む道具になる

授業でICTを使うとき、私はいつも少し警戒しています。

「すごい」で終わっていないか。

「便利」で止まっていないか。

「先生が見せたいものを見せるだけ」になっていないか。

新しい機能は、どうしても目を引きます。

でも、授業で本当に大事なのは、その機能を使ったあとに、子どもの中に何が残るかだと思います。

Google Earthで世界を飛ぶ。

それ自体は楽しいです。

でも、ただ自由に飛ばせるだけだと、たぶん数分で遊びになります。

それはそれで悪くありません。
最初の驚きは大事です。

でも、授業にするなら、そこから問いに変えたいです。

たとえば、社会科ならこう聞けます。

  • なぜ、この場所に町が広がっているのか

  • なぜ、道や線路はこの形になっているのか

  • 川の近くと山の近くで、土地の使われ方はどう違うのか

  • 空港や港は、どんな場所につくられているのか

  • 自分たちの町を上空から見ると、何が見えるのか

飛ぶことが目的ではありません。

飛んだあとに、問いが生まれること。

ここが授業の芯になります。


「世界は広い」を、少しだけ身体に近づける

小学生にとって、世界は遠いです。

教科書の中にある。
テレビの中にある。
ニュースの中にある。
地図帳の中にある。

もちろん、それでも学べます。

でも、Google Earthのようなツールは、「遠い世界」を少しだけ身体に近づけます。

富士山の上を飛ぶ。
東京湾を飛ぶ。
北海道の大地を飛ぶ。
ナイル川をたどる。
ヒマラヤの山並みを見る。
ニューヨークの街の上を飛ぶ。

それは、正確な知識を一気に増やす時間ではないかもしれません。

でも、子どもの中に、

「行ってみたい」

「なんでこうなっているんだろう」

「ここは日本と違う」

「この地形、社会で見たやつだ」

という小さな引っかかりを作ることはできます。

学びは、いつも正解から始まるわけではありません。

むしろ、最初は「あれ?」でいいのです。

その「あれ?」を持った子は、地図を見る目が少し変わります。


授業で使うなら、先に問いを決める

では、すぐ授業で使えるか。

使えると思います。

ただし、自由探索だけで終わらせると、かなり散らかります。

だから、授業で使うなら、最初に問いを決めておきたいです。

たとえば、こんな使い方。

  • 日本の地形を飛びながら、山地・平野・川のつながりを見る

  • 自分たちの町を上空から見て、土地利用の特徴を探す

  • 港町・内陸の町・山間部の町を比べる

  • 世界の都市を飛び、都市がどんな場所に広がっているか見る

  • 川をたどりながら、人のくらしとの関係を考える

大事なのは、操作方法よりも視点です。

「どこを飛ぶか」より、

「何を見るために飛ぶか」。

ここが決まっていると、フライトシミュレーターは遊びから学びに変わります。


飛ぶ前の設計を、AIと組む

前に#056で、学習問題は子どもの「あれ?」から始まる、と書きました。

Google Earthも、まさにその「あれ?」を生む道具になります。

ただし、自由に飛ばすだけだと、遊びで終わります。

だから、飛ぶ前の設計を、AIと組んでみます。

たとえば、自分のクラスの地域を決めて、こう頼みます。

4年生が、Google Earthで「◯◯市」の上空を飛んだとき、
「あれ?」「なんで?」と思いそうな地形や土地利用のポイントを5つ挙げてください。
それぞれに、社会科の問いにつながる発問例も添えてください。

すると、「川の近くに田が広がっている」「駅のまわりに建物が集まっている」といった、子どもが気づきそうな点と、そこから立てられる問いの候補が出てきます。

これを全部使うわけではありません。

自分のクラスに合う「あれ?」を1つか2つ選んで、入口に置きます。

飛ぶ場所と、見る視点を、先に決めておきます。

AIに授業を作らせるのではなく、子どものつまずきと驚きを、AIと一緒に予想します。

そのうえで、最後に「どこを飛ぶか/何を見るか」を教師が決めます。

#056の社会科 「水のゆくえ」と同じで、AIは入口の設計を手伝う相棒です。


注意点もある

もちろん、注意点もあります。

公式ドキュメントでは、この機能はExperimentalとして案内されています。
つまり、今後仕様が変わる可能性があります。

また、この機能はパソコンのブラウザ向けで、スマホ・タブレットのGoogle Earthアプリでは使えません。

3D建物や高解像度画像は飛行中に読み込まれるため、通信環境によっては表示が遅れることもあります。

授業で使うなら、事前確認は必要です。

学校の端末で動くか。
回線が耐えられるか。
児童用アカウントで使えるか。
表示する場所に問題がないか。
授業のねらいと合っているか。

ICTは、入れれば授業がよくなるわけではありません。

でも、うまく使えば、子どもの見え方を変えることがあります。

Google Earthのフライトシミュレーターは、その可能性を持っていると思います。


世界を飛ぶことは、問いに近づくこと

今回のニュースを見て、私は少しわくわくしました。

ブラウザで世界を飛べる。

それは単に、Google Earthが便利になったという話ではありません。

子どもたちが、地図の上の線や色を、もう少し立体的に感じられるかもしれないという話です。

世界は、平面ではありません。

山があり、川があり、海があり、町があり、人のくらしがあります。

その上を飛んでみると、教科書の言葉が少しだけ動き出します。

「地形」

「交通」

「土地利用」

「産業」

「都市」

そういう言葉が、画面の中でつながって見えてきます。

新しい機能が出たとき、すぐに授業で使うかどうかは別として、私はこう考えたいです。

これは、子どもの問いを増やす道具になるか。

Google Earthのフライトシミュレーターは、その答えが「なりそうだ」と思える機能でした。


今日のノック

今日のノックは、これです。

先生自身が、Google Earthで自分の町を飛んでみる。

そして、「子どもが"あれ?"と思いそうな場所」を3つメモします。

川と町の位置。
駅のまわり。
山と道のつながり。

何でもいい。

そのメモをAIに渡して、

「この気づきから、4年生が考えられる社会科の問いを出して」

と頼みます。

出てきた中から、入口の発問を1つ決めます。

新しい機能を、すぐ子どもに見せる前に、まず先生が飛んで、問いを1つ持っておきます。

それだけで、Google Earthは遊びから、学びの入口に変わります。

世界を飛ぶことは、問いに近づくこと。

授業づくりは、そこから始めてもいいと思います。


注記・参考


#AI活用100本ノック #生成AI #社会科 #地理教育 #GoogleEarth #教育ICT #授業づくり #小学校教員 #note毎日更新 #プレフロsensei

いいなと思ったら応援しよう!