雑巾の水は,どこへ?「なくなった」の中にあった,3つの考え
粘土と雑巾をのせた天秤が,粘土の方へ傾いていました。
前の時間に行った実験です。今日は,その結果をみんなで共有するところから始めました。
どうして,粘土の方に傾いたのか。
子どもたちは,雑巾が軽くなったからだと考えました。では,どうして軽くなったのか。問い返していくと,雑巾に染み込んでいた水が「なくなった」という説明が,たくさん出てきました。
ここで出てきた「なくなった」が,今回の授業の入口になりました。

授業で見た傾きをもとにした挿絵です。実際の器具や実験写真の再現ではありません。
「なくなった」は,同じ意味ではなかった
「消えた」と言う子もいました。
そこで,水そのものが消えて,もうどこにもなくなったということなのか。それとも,雑巾の中からはなくなったけれど,空気中へ出ていったということなのか。二つを分けて問いかけてみました。
すると,意見が分かれました。
多数派は,空気中へ出ていったという考えです。でも,水の存在そのものが消えてなくなったと考える子もいました。
同じ「なくなった」を使っていても,頭の中で思い描いていることは違う。言葉だけを聞いていたら,この違いには気づかなかったかもしれません。
水のイラストを動かしてみる
そこで使ったのが,Canvaです。
雑巾のイラストと,水滴のイラストを置いたスライドを配りました。例えば,雑巾の上に水のイラストを20個置く。それが,「今,雑巾の中に水がある」という状態です。
時間がたったら,この水はどうなったのか。
今度は,言葉だけでなく,イラストを動かしたり,数を変えたりして予想を表してもらいました。すると,思っていた以上に,いろいろな考えが出てきました。
半分くらいの水が,空気中へ出ていった。
7割くらいの水が,消えてなくなった。
小さな水のイラストが,時間がたつと1つにまとまった。

授業の記録をもとに,記事用に描き直した予想の例です。児童の作品そのものではありません。20個は説明のための例で,半分・7割は予想です。実測値ではありません。
特に,たくさんあった水が1つにまとまるという考えは,面白かったです。
ただ,ここは図だけで意味を決めつけられません。1つにしたからといって,水の量が減ったと思っているのか,同じ量が集まったと思っているのかまでは,まだ分からない。
次に聞くなら,まずは「この1つは,どういう意味?」と聞いてみたいです。
これは,水の正しい姿を描けるかどうかの活動ではありません。水滴のイラストも,実際に見えた水や分子をそのまま描いたものではなく,考えを表すための記号です。
今回よかったのは,同じ材料から,違う予想が見える形で出てきたことでした。動かした位置や,残した数の向こうに,まだ聞いてみたいことがあります。
道具は渡す。でも,比べる相手がいない
次は,その予想を確かめるための実験計画です。
何もないところから方法を考えてもらうと,かなりばらばらになりそうでした。そこで私は,ビーカーとラップを道具のヒントとして出しました。
「これを使ってどんな実験ができるかな?」
班ごとに考えてもらうと,どの班からも,水を入れたビーカーにラップをかける案が出てきました。
ただ,どの班の計画にも,ラップをかけないビーカーはありませんでした。
覆う方はある。でも,比べる相手がいない。
最後に全体で,ラップをかけないビーカーも用意することを押さえました。ここは,子どもたちだけで全部たどり着いた,とは書けないところです。私が補いました。

比較する方法を説明する模式図です。実際の水量を示したものではなく,数日後の結果も描いていません。
ビーカーとラップを出したことで,方法を考える手がかりにはなりました。一方で,ラップをかける案が出たことと,何を比べれば確かめられるかが分かることは,別なのだと思います。
次の時間には,ラップをかけない方も置いた理由を,もう一度子どもたちに返してみたいです。私が説明したことで終わりにせず,何を確かめるための二つなのかを,子どもの言葉で聞いてみたい。
結果は,まだ出ていません
この記事を書いている時点では,実験は進行中です。数日後,どうなっているかを見ます。
ここは,先に教科書で結果を確認するのではなく,自分たちが用意した実物をみんなで見たいと思っています。水はどうなっているのか。何が見えて,何はまだ言えないのか。まず,そこからです。
そして,今回の予想図に戻りたい。
半分を空気中へ動かした子は,実物を見てどう考えるのか。水を消した子は,図を変えるのか。1つにまとめた子は,その1つをどう説明するのか。
最初の図を消して正解に置き換えるよりも,最初の予想と,結果を見た後の考えを並べて残せたら,と思っています。変わったところだけでなく,変えなかった理由も聞きたいです。
Canvaを使ったことで,水の行方が分かったわけではありません。でも,子どもが水の行方をどう考えているかは,言葉だけのときよりも見えてきました。
「水がなくなった」でそろっていたはずの教室に,こんなに違う予想があった。
数日後,ビーカーの中を見るのが楽しみです。その後で,あの水のイラストがどう動くのかも。
※2026年9月10日の授業記録です。会話は授業を振り返って記したもので,逐語録ではありません。掲載した挿絵・図解は記事用に独自作成したもので,教科書・指導書の紙面や図版,児童の作品,Canva素材そのものは転載していません。天秤の挿絵には生成AIを使用しています。
