AIを使うほど、子どもは本文に戻る──説明文「アップとルーズで伝える」の授業|AI活用100本ノック #039
「現役教員がAI活用を毎日1本書く」と決めた100本ノックの39本目です。
「国語にAIを持ち込むなんて」と、思う先生もいるかもしれません。
子どもが自分で読まずに、AIに読ませてしまうのではないか、と。
その心配は、よくわかります。
でも、私が試したのは逆でした。
AIを使うほど、子どもが本文の言葉に戻っていく授業です。
国語のねらいは「精査・解釈」にある
学習指導要領の国語では、読むことの過程に「精査・解釈」という段階があります。
ざっくり言えば、書かれている言葉に立ち止まり、「なぜこの表現なのか」を考えること。
説明文でいえば、筆者が選んだ言葉、挙げた具体例、文の順序——
そこに込められた意図を読み取る力です。
ところが、この「立ち止まる」が、いちばん難しい。
子どもは「だいたいわかった」で先に進みたがります。
ここに、AIの使いどころがありました。
教材は「アップとルーズで伝える」
4年生の説明文「アップとルーズで伝える」を使いました。
写真や映像には、アップ(拡大)とルーズ(全体)があり、
書き手は、伝えたいことに合わせて、その二つを使い分けている——そういう文章です。
サッカーの場面なら、
ゴールを決めた選手の表情を伝えたいなら、アップ
スタジアム全体の盛り上がりを伝えたいなら、ルーズ
この「使い分けの意図」を読み取るのが、学習のねらいです。
AIに、本文を「要約」させてみる
ここでAIに登場してもらいました。
ただし、答えを出させるためではありません。
本文に戻るきっかけを作るためです。
やったことは、シンプルです。
本文のある段落を、AIに要約させる
その要約と、もとの本文を読み比べる
「AIの要約で、抜け落ちたものは何か」をさがす
「削れたもの」をさがすと、本文に戻る
実際にやってみると、子どもが気づきはじめます。
AIの要約は、こう出てきました。
「アップは細かい部分、ルーズは全体を伝える。場面で使い分ける」
正しい。でも、何かが足りない。
子どもたちが言い出します。
「筆者は『たとえば』ってサッカーの例を出してるのに、要約には入ってない」
「『選手の顔』って具体的に書いてあるから、伝わるんじゃない?」
「『 』(かぎ)の言葉が、ぜんぶ消えてる」
AIの要約は、便利だけど、具体例や、選ばれた言葉が削れている。
その「削れたもの」をさがすうちに、子どもは自然と、本文の一語一語に戻っていくのです。
これはまさに、「精査・解釈」が起きている瞬間です。
AIは、叙述に戻るための「触媒」
国語で大事なのは、本文の言葉に立ち止まることです。
「なんとなくわかった」で済ませず、
「この一語があるから、伝わる」と気づくこと。
AIの要約は、その比較対象になります。
人間の読み(本文)と、AIの読み(要約)を並べると、
本文のすごさが、くっきり見えてくる。
AIは、本文から離れる道具ではなく、本文に戻るための触媒になりました。
評価も「叙述に戻れたか」で見る
この授業の評価は、要約のうまさでは見ません。
筆者が選んだ言葉や具体例に、着目できているか
「なぜこの言葉なのか」を、自分なりに説明できているか
ワークシートの最後は、こう問いました。
「AIの要約に足したい一文は? それはなぜ、大事だと思う?」
ここに、その子がどれだけ本文に立ち止まれたかが、表れます。
専門職として答えるなら
「国語でAIをどう使うのか」と聞かれたら、
「精査・解釈」を促すために、AIには本文の要約を担わせる。
その要約と本文を読み比べ、「削れたもの」をさがす活動で、子どもを叙述に戻す。
AIに答えを出させるのではなく、本文のよさを引き立てる比較対象として使う。
骨格はこの形です。
おわりに
同じAIでも、使い方で正反対になります。
「AIに答えを出させる」→ 子どもは本文を読まなくなる
「AIの読みと本文を比べる」→ 子どもは本文を深く読む
どちらにするかは、授業を設計する私しだい。
生成AIが当たり前になる時代だからこそ、
「自分の目で読む」価値は、もっと上がっていきます。
AIを使って、子どもを本文に戻す。
そんな国語の授業を、これからも探していきます。
100本ノック、明日も続けます。
次回は、「AIに授業を作らせるのではなく、AIと授業を磨く」を書きます。
出典・参考
文部科学省「小学校学習指導要領(平成29年告示)国語」の「読むこと」の指導過程(構造と内容の把握/精査・解釈/考えの形成・共有)を参照しています。
「アップとルーズで伝える」(中谷日出)は、小学校4年で広く扱われる説明的文章の教材です。
本文の授業展開・発問・ワークシートは、筆者(小学校4年担任)が実際に試した実装例です。教材本文の引用・複製の扱いは、各校の方針に従ってください。
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