AI活用100本ノック #071 「すぐ答えを言わないAI」を学校の許可環境で育てる
AI活用100本ノック、71本目。
今回のテーマは、答えを言わないAIの育て方です。
一言で言うと、これです。
AIを賢くするのではなく、我慢強くする。
子どもがAIに質問すると、AIはだいたい全力で答えます。
質問に対して、すぐ説明する。
手順を出す。
結論を言う。
要約する。
大人が仕事で使うなら、とても便利です。
でも、学習では少し困ります。
子どもが考える前に答えが来てしまうからです。
分からない。
予想する。
教科書を探す。
友だちと話す。
もう一度考える。
この時間が、学びの中では大事です。
AIがすぐ答えを出すと、その大事な時間を飛ばしてしまうことがあります。
だから、教室で使うAIには、別の性格が必要です。
すぐ答えない。
問い返す。
ヒントを出す。
確かめ方へ戻す。
そんなAIです。
AIに先生役を任せすぎない
「AIを先生役にする」と聞くと、少し危うさがあります。
先生の代わりにAIが教える。
子どもがAIに質問する。
AIが説明する。
これだけだと、授業が答えの自動販売機になってしまうかもしれません。
教室でほしいのは、何でも教えてくれるAIではありません。
子どもが考え続けるために、ちょうどよく支えるAIです。
だから、AIへの指示も変えます。
「分かりやすく教えて」ではなく、
「答えを直接言わずに、ヒントと問い返しで返して」
と頼む。
この一文だけで、AIの動きはかなり変わります。
もちろん、完璧ではありません。
油断すると、AIはすぐ答えを言います。
だから、教師が事前に調整する必要があります。
役割を固定する指示文
私が作るなら、指示文の骨子は4つです。
一つ目。
答えを直接言わない。ヒントと問い返しで返す。
これが中心です。
子どもが質問しても、すぐに正解を出さない。
「どこまで分かっている?」
「教科書のどこを見れば確かめられそう?」
「似た例を思い出せる?」
こう返すようにします。
二つ目。
子どもが何回か考えたら、確かめ方を案内する。
ずっと問い返すだけだと、子どもは困ります。
だから、3回くらいやり取りしたら、
「教科書のこの単元を見てみよう」
「地図帳でこの場所を探してみよう」
「ノートの前のページを見返してみよう」
と、確かめる先へつなぐ。
三つ目。
4年生に伝わる言葉で話す。
AIは、気を抜くと大人向けの言葉を使います。
難しい言葉で説明されると、子どもは分かったふりをします。
だから、学年に合わせた言葉を指定します。
四つ目。
個人情報を扱わない。
氏名や家庭に関わる細かな情報、友だちの情報。
こういうものを聞かれても扱わない。
ここは必ず入れます。

試し質問を10個ぶつける
設定を作ったら、すぐ授業で使わない方がいいです。
教師が先に試します。
おすすめは、試し質問を10個ぶつけることです。
簡単な質問。
難しい質問。
答えを誘導する質問。
個人情報を含む質問。
「答えだけ教えて」と頼む質問。
いろいろ試します。
AIがすぐ答えを言ってしまうなら、指示を直します。
言葉が難しすぎるなら、学年に合わせます。
個人情報に反応してしまうなら、ルールを強めます。
この調整が、実は本体です。
AIを授業に入れる準備とは、AIを動かすことではなく、AIが学びを邪魔しないように整えることなのだと思います。
まず教師の手元で見せる
授業で使うときは、いきなり子どもに触らせません。
まずは教師の手元で見せます。
「AI先生に聞いてみるね」
と投げてみる。
すると、答えではなく質問が返ってくる。
そこで子どもに言います。
「あれ、答えを教えてくれないね」
「じゃあ、何を考えればよさそう?」
この導入がけっこう大事です。
子どもは、AIは答えをくれるものだと思っています。
でも、教室で使うAIは違う。
考えるために問い返す相手なんだ、と最初に共有する。
慣れてきたら、班に1台で触る。
個人で使う前に、班で使う。
この段階を踏むと、AIの使い方そのものを指導しやすくなります。
「ヒントの出し方」も調整する
答えを言わないAIを作るとき、もう一つ見たいのがヒントの質です。
ヒントが弱すぎると、子どもは進めません。
逆に、ヒントが強すぎると、ほとんど答えになります。
たとえば社会科なら、
「地図帳を見てみよう」
だけでは広すぎることがあります。
でも、
「地図帳の〇〇地方のページで、川と平野の位置を比べてみよう」
くらいなら、考える余地が残ります。
理科でも同じです。
「答えは蒸発です」と言うのではなく、
「水が見えなくなったとき、本当に消えたのか、それとも形を変えたのかを考えてみよう」
のように返す。
この加減は、教師が見ないと調整できません。
AIに任せっぱなしにするのではなく、教師が「このヒントは強すぎる」「これは弱すぎる」と直していく。
ここに授業者の専門性があります。
使わせない場面も決める
答えを言わないAIを作ったとしても、いつでも使えばいいわけではありません。
最初に一人で考える時間。
友だちと考えを出し合う時間。
実物を観察する時間。
手を動かして試す時間。
ここでは、あえてAIを出さない方がいいこともあります。
AIは、考えが止まったときの次の一手として使う。
最初から頼る相手にしない。
この順番も、子どもに伝えておきたいです。
「困ったらすぐAI」ではなく、
「まず自分、次に友だちや資料、それでも迷ったらAIにも質問してみる」
このくらいの位置づけが、教室ではちょうどいい気がしています。
今日のノック
今日のノックは、これです。
「すぐ答えを言わないAI」の指示文を1つ作り、試し質問を10個ぶつける。
指示文は、たとえばこうです。
「あなたは小学校4年生の学習を支えるAIです。答えを直接言わず、まずヒントや問い返しで返してください。子どもが3回考えたら、教科書やノートで確かめる方法を案内してください。4年生に分かる短い言葉で話してください。個人情報は聞かず、扱わないでください。」
このまま使ってもいいし、自分の学年に合わせて直してもいい。
大事なのは、作って終わりにしないことです。
必ず試す。
答えを言ってしまう場面を見つける。
そこを直す。
この作業が、教師の新しい準備になる気がしています。
これから確かめたいこと
ここまで書いたのは、完成した実践報告ではありません。次の授業で確かめるための設計です。
確かめたいのは、AIの問い返しに最初は戸惑った子どもが、「AI先生は答えを教えてくれない」と分かったとき、教科書や地図帳へ戻り始めるかどうかです。
AIの性能は上がり続けます。
でも、教室で必要なのは、ただ賢いAIではありません。
学びを急がせないAI。
考える時間を残すAI。
確かめる場所へ戻してくれるAI。
その調整こそ、教師の新しい専門性だと思います。
注記
子どもが利用する場合は、学校・設置者が許可した環境とアカウントを使い、所属先のルールに従ってください。
指示文に「個人情報を扱わない」と書くだけで安全が保証されるわけではありません。教師による事前テストと利用中の見守りが必要です。
AI活用100本ノック
