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PISA2025、日本は3分野すべてOECD1位。でも読解力だけ13点下がっていた

■ まず、結果です

2026年9月8日、PISA2025の結果が公表されました。

日本は科学・読解力・数学の3分野すべてで、OECD加盟国中1位。調査開始以来、初めてのことだそうです。

科学  538点(OECD平均482点) 1位 −9点・有意差なし
読解力 503点(OECD平均461点) 1位 −13点・有意に低下
数学  525点(OECD平均463点) 1位 −11点・有意差なし


全参加国・地域で見ると、科学5位・読解力4位・数学5位です。

そして今回初めて実施された「ラーニング・イン・デジタルワールド」も、OECD加盟国中1位でした。


■ ただ、「1位」だけ見て閉じると、たぶん見落とす

読解力は、2022年の516点から503点へ。統計的に有意な低下です。


しかも、3分野すべてで低得点層の割合が有意に増えています。


順位は、ほかの国との位置関係です。自分たちが以前よりどう変わったかとは、別の話。

周りが下がれば、同じ点でも順位は上がります。実際、OECD平均は3分野とも下がっています。

「日本はスゴイ」で終えるのも、「もうダメだ」で終えるのも、どちらも少し早い気がしました。

さて。

ここからが、私が知りたかったところです。


■ 「読解力が下がった」の中身を、見てみる

正直に言うと、最初は「またそう言われるのか」と思いました。

ネットでも「デジタルばかりだから考える力が落ちた」という話をよく見ます。でも「考える力」って、かなり抽象的な言葉です。

具体的に、どの問題で下がったんだろう。

資料を読んだら、ちゃんと書いてありました。しかも、思っていたのと違いました。


整理すると、こうです。

読みの流ちょう性(速く正確に読む) 日本=有意に低下/OECD平均=有意に低下
長い課題文・複数の課題文      日本=前回と同程度/OECD平均=有意に低下
情報を探し出す・理解する      日本=前回と同程度/OECD平均=有意に低下
評価し、熟考する          日本=有意に上昇/OECD平均=有意に低下

「評価し、熟考する」は、上がっています。しかもOECD平均は下がっている中で。

長い文章を読む設問も、複数の文章を読み比べる設問も、前回と同程度でした。こちらもOECD平均は下がっています。

下がったのは、「読みの流ちょう性」です。

資料にはこう書かれていました。

「読みの流ちょう性(速く正確に読む)」の正答率の低下が、日本の読解力の平均得点低下に影響している可能性が考えられる。


■ で、その問題ってどんなの?

ここが気になったので、公開されている問題例を見に行きました。


「読みの流ちょう性」の問題は、こういうものでした。

短い文が21〜22文、1文ずつ画面に出てきます。それぞれについて、意味が通るなら「はい」、通らないなら「いいえ」を選ぶ。

例として載っていたのが、これです。

飛行機は犬でできている。

……「いいえ」ですね。

長い文章を書く問題ではありませんでした。私は最初「デジタルで打つのが大変だったのでは」と思っていたのですが、この形式だとタイピングの負担とは直結しません。

一方、上がった「評価し、熟考する」のほうは、こんな問題です。

書評からの抜粋を5つ読んで、それぞれが事実か、意見かを選び、表を完成させる。

研究者のブログ、書評、科学雑誌の記事という3種類の文章を読み比べる大問の一部でした。

……並べてみると、ずいぶん違いますよね。

「速く正確に処理する」は下がって、「読んで判断する」は上がった。


■ もうひとつ。上と下で、動き方が違った

これも気になった数字です。


上位10%の位置 636点 → 631点 有意差なし
下位10%の位置 387点 → 360点 有意に低下
その差     249点 → 272点 有意に拡大

上のほうは、ほぼ変わっていません。落ちたのは下のほうです。

平均点が13点下がった、と聞くと、全体がなだらかに下がった絵を想像していました。でも実際は、そうではなかった。


■ AIの話も出てきました

学校の勉強でのAI利用頻度は、OECD加盟38か国中38位。いちばん下です。


一方で、デジタル環境での問題解決を測る新領域は、OECD1位。

「使う頻度」と「問題を解く力」は、分けて見たほうがよさそうです。

ただし今回の公表は、この領域の一部だけ。自己調整学習を含む全体は2027年公表予定と書かれています。

「AIを使えば学べる」とも「使わないほうがいい」とも、この資料からは言えません。


■ ここから、感想です

ここまでが資料の中身で、ここからは私が思ったことです。

◆ 「考える力が落ちた」では、大ざっぱすぎた

最初に書いたとおり、私も「デジタル世代は考える力が落ちている」という話を何度も見てきました。

でも、今回の結果はそう読めません。

評価し、熟考する設問は上がっている。長い文章も、複数の文章も、前回と同程度。下がったのは、速く正確に処理する部分でした。

これは「考える力が落ちた」とは、ずいぶん違う話です。

もちろん、流ちょうに読めることは大事です。速く正確に読めないと、そもそも判断する土俵に上がれない。土台の部分が弱くなっている、という読み方はできます。

でも、「考える力」とひとまとめにして嘆くのは、やめようと思いました。どこが弱くて、どこが強いのか。それが分からないと、手の打ちようがありません。

◆ 原因は、資料には書かれていませんでした

正直に書いておきます。「なぜ下がったのか」の答えは、この資料にはありません。

OECDは、読解力の低下について単一の原因では説明できず、複数の要因が重なった結果である可能性を指摘しています。次回のPISA2029で読解力が中心分野になるので、詳しい分析はそこで、とのことです。

だから、ここから先は私の推測です。根拠のある話ではありません。

◆ 小学校で、何をするか

15歳の調査なので、小学校の話に直結はしません。それでも考えてしまいます。

思ったのは、3つです。

ひとつめ。音読を、軽く見ない。

「速く正確に読む」は、小学校でずっとやっていることです。音読の宿題、視写、漢字の読み。地味だし、効果が見えにくい。私も正直、優先順位を下げがちでした。

でも今回下がったのは、まさにそこです。土台のところが弱くなると、その上の判断まで届かなくなる。

ふたつめ。「事実か、意見か」を、日常的にやる。

上がっていた「評価し、熟考する」の問題が、まさにこれでした。書評の抜粋を読んで、事実か意見かを分ける。

これ、小学校でもできます。というより、国語でも社会でも、すでにやっていることです。教科書の文章でも、給食の献立表でも、学級だよりでもいい。

「これは本当にあったこと? それとも書いた人の考え?」

この一言を足すだけです。上がっている部分を、さらに伸ばせるところだと思いました。

みっつめ。下がったのは下のほう、というのを忘れない。

これがいちばん重かったです。

上位は横ばいで、下位10%の位置が27点落ちている。平均の話をしているとき、私はたぶん真ん中あたりを想像しています。でも動いたのは、いちばん困っている側でした。

教室に置き換えると、最初の一文で止まっている子です。

「日本は1位だったよ」と伝えても、その子の鉛筆は動きません。

◆ 私が明日やることは、たぶんこれくらい

大きな調査を読んだあとに考えることが、結局こんなに小さいのは少し地味です。

でも、こうかなと思っています。

「読めない」とひとまとめにする前に、どこで止まっているのかを聞く。

言葉の意味が分からないのか。何を聞かれているかつかめないのか。答えは思いついたけど根拠が示せないのか。

全部に「もう一回よく読んで」と返していたら、子どもからすれば「その、どこを?」ですよね。


※この図は、私が授業で見取るときの整理です。PISAの分類を再現したものではありません。

……ただ、これも気をつけないといけません。手助けを増やしすぎて、先生が答えまで言ってしまうこともありそうです。親切のつもりで、考えるところまで持っていかないように。


■ おわりに

3分野すべて1位。これは素直にうれしいです。支えてきた子どもたちと先生方の積み重ねは、ちゃんと受け止めたい。

その上で、下位10%が27点落ちたという数字も、同じ資料に載っています。

両方あるのが、今回の結果でした。

順位表を見たあとに、教室の誰を思い浮かべるか。そこまで戻ってきて、ようやく教師として読む意味があるのかな、と思います。

まずは一人の「その、どこを?」を聞き逃さないところから。

それでは、また!!


■ 参照資料

・国立教育政策研究所:PISA資料一覧
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pisa/index.html
・文部科学省・国立教育政策研究所:PISA2025のポイント(2026年9月8日公表)
https://www.nier.go.jp/05_kenkyu_seika/pisa/pdf/2025/01_point.pdf

数値・設問の説明・OECDの見解は、上記の公表資料に基づいています(主に3・4・18・25・37ページ)。読解力の問題例は、資料に掲載されている2018年調査の公開問題【ラパヌイ島】です。

原因の推測と、小学校での手立ては、私の考えです。資料が示したものではありません。PISAは15歳を対象とする調査で、小学生を直接調べたものでも、ここで挙げた方法の効果を証明したものでもありません。

図表は公表資料の数値をもとに筆者が作成しました。見出し画像はAI生成です。

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