AI活用100本ノック #064 GPT-5.6が出た。教員が見るべきは「性能」より「使い分け」
AI活用100本ノック、64本目。
今回のテーマは、2026年7月の大きなニュース、GPT-5.6です。
一言で言うと、これです。
新モデルの性能に驚くより、「仕事によってAIを使い分ける」時代が本格的に来た。
2026年7月10日(日本時間)、OpenAIが新モデル「GPT-5.6」シリーズを一般公開しました。

このリリース、経緯が少し変わっていました。
発表自体は6月26日。ただし最初は、米国政府と調整のうえ、ごく少数の信頼できるパートナーに限ってのプレビュー提供。そこから約2週間で、一般公開に切り替わりました。
最新のAIが、一企業の新製品というより、政府が関わる社会インフラのように扱われ始めている。
教育とは遠い話に見えて、実はここが一番の時代の変化かもしれません。
3つのモデルが同時に出た
今回のGPT-5.6、面白いのは1つのモデルではなく、3つ同時に出たことです。
・Sol(ソル):最上位。深い推論が得意なフラグシップ
・Terra(テラ):バランス型。前モデル相当の性能を、半分の価格で
・Luna(ルナ):高速・低コスト。大量の処理に向く

高い順に並んだ「松竹梅」ではありません。
用途で選ぶ「役割分担」です。
じっくり考える仕事はSol。
ふだんの仕事はTerra。
量をこなす仕事はLuna。
そして、Solには「max」という深く考えさせるモード、複数のサブエージェントを並列で動かす「ultra」モードも入りました。
つまりOpenAI自身が、「全部を最強AIでやる必要はない。仕事に合わせて選べ」と言っている構成なんです。
これ、教員のAI活用にそのまま当てはまります
実は、この「使い分け」の考え方、前に#059で書いた「設計はいいAI、実行は普通のAI」と同じです。
教員の仕事で考えてみます。
深い推論が必要な仕事。
・単元全体の設計
・評価規準づくり
・複雑な学級の状況を整理して、手立てを考える
・行事や研究の計画を、条件をふまえて組む
ここは、いちばん賢いAIと相談する価値があります。
一方で、そこまで要らない仕事。
・お便りの文面を整える
・ワークシートの類題を量産する
・アンケートの自由記述を分類する
・資料の誤字チェック
ここは、速くて軽いAIで十分です。
これまで私たちは、なんとなく「1つのAI」に全部を投げていました。
でも、モデル側が「役割分担してください」という形で出てきた。
だったら、こちらの仕事も仕分けした方がいい。
AIの進化に振り回されるのではなく、自分の仕事の解像度を上げるきっかけにする。
新モデルの一番の使い道は、実はここだと思っています。
「事務作業ツール」も同時に出た
もう一つ、教員に関係が深いのが、同時に発表された「ChatGPT Work」です。
これは、文書、表計算、プレゼン資料といった日常の事務作業を支援するツール。デスクトップでもWebでもスマホでも動きます。
つまり、AIが「チャットで質問に答える存在」から、「事務仕事を一緒にやる存在」へ、公式に一歩踏み出した。
学校の仕事は、事務作業のかたまりです。
計画書。
たより。
名簿。
集計。
提案文書。
この領域にAIの本体が入ってくる流れは、今後、校務支援システムや自治体の導入判断にも影響してくるはずです。
もちろん、学校で使えるかどうかは別の話。
自治体・学校が許可した環境で、個人情報を入れない。この大前提は、モデルが何世代進んでも変わりません。
値段が下がったことの意味
地味に大事なのが、価格です。
中位のTerraは、前モデル相当の性能を約半分の価格で提供します。Lunaはさらに安い。
「賢いAIは高い」が、少しずつ崩れてきています。
これは、学校や自治体にとって追い風です。
これまで「予算的に無理」だった規模のAI導入が、現実的な選択肢に近づいていく。
個人としても、無理に最上位を追いかけなくても、1年前の最上位級が普段使いの価格帯に降りてくる。
最新モデルのニュースは、「すごい機能」よりも「何が当たり前になったか」で読む。
その方が、現場の判断には役立ちます。
振り回されないための3つの問い
新しいモデルが出るたびに、SNSはお祭りになります。
すごい。
今までのAIはゴミ。
乗り換えないと損。
この空気に、毎回付き合う必要はありません。
私は、新モデルのニュースを見るとき、3つだけ確認することにしています。
自分の仕事の何が楽になるのか(具体的な場面で言えるか)
学校で使える環境に来るのか(自治体・学校の許可、データの扱い)
今使っている道具から、乗り換えるほどの差か
この3つに答えられないうちは、様子見でいい。
AIの世界は、数ヶ月ごとに「史上最強」が更新されます。
その全部に飛び乗るより、自分の使い方の軸を持って、必要なときだけ乗り換える。
教員のAI活用は、それで十分間に合います。
今日のノック
今日のノックは、これです。
自分のAI作業を「じっくり系」と「サクサク系」に仕分ける。
紙でもメモアプリでもいいので、ふだんAIに頼んでいる仕事を書き出して、2つに分けます。
・じっくり系:単元設計、評価、複雑な相談 → いちばん賢いAI(考えるモード)で
・サクサク系:文面調整、類題づくり、分類、チェック → 速くて軽いAIで
分けてみると、「実は9割はサクサク系だった」ということに気づくかもしれません。
だとしたら、最新モデルのニュースで見るべきは最上位の性能ではなく、「軽いモデルがどこまで賢くなったか」です。
モデル名に詳しくなる必要はありません。
自分の仕事を2つに分ける。それだけで、この先どんなモデルが出ても、落ち着いて選べます。
効果と感想
「じっくり系とサクサク系の仕分け」をやってみると、自分がAIに頼んでいる仕事の大半は軽いモデルで足りると分かる。最上位モデルの出番は思ったより少ない。
新しいモデルが出るたびに騒がしくなりますが、教室の一日は変わらず続きます。
道具は進化する。
でも、「何のために使うか」を決めるのは、いつも人間の側です。
GPT-5.6のニュースは、性能に驚くより、自分の仕事を見直す鏡にする。
それが、現場にとって一番実りのある付き合い方だと思います。
注記・参考
・OpenAI「Previewing GPT-5.6 Sol」 https://openai.com/index/previewing-gpt-5-6-sol/
・窓の杜「OpenAI、『GPT‑5.6』を発表~米国政府の要請で限定プレビュー、その後一般提供へ」 https://forest.watch.impress.co.jp/docs/news/2120562.html
・TechCrunch「OpenAI launches its new family of models with GPT-5.6」 https://techcrunch.com/2026/07/09/openai-launches-its-new-family-of-models-with-gpt-5-6/
・日本経済新聞「OpenAI、最新『GPT-5.6』を9日一般公開 米政府が承認」 https://www.nikkei.com/article/DGXZQOGN084IU0Y6A700C2000000/
・Axios「OpenAI releases GPT-5.6 and ChatGPT Work tool」 https://www.axios.com/2026/07/09/ai-openai-gpt-release
・モデル構成や価格、提供範囲は2026年7月11日時点の情報です。変わる可能性があるため、利用前に公式情報を確認してください。学校での利用は、自治体・学校のルールと個人情報の扱いを必ず確認してください。
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