介護給付費11.2兆円、被保険者は5万人減でも認定者は12万人増加。福祉用具貸与3,965億円から読む「85歳以上シフト」と次の10年:令和6年度 介護保険事業状況報告(年報)
65歳以上は減少へ、それでも介護は伸びる:令和6年度年報が映した「85歳以上シフト」の実像
福祉用具貸与3,965億円、看護小規模多機能11.2%増:2027年報酬改定へ向けて事業所が押さえたい令和6年度年報の勘所
厚生労働省が2026年8月27日に公表した令和6年度介護保険事業状況報告(年報)。第1号被保険者数が3,589万人から3,584万人へ5万人減少した一方、要介護・要支援認定者は708万人から721万人へ12万人増え、給付費は初めて11兆円台に乗せて11兆1,826億円まで拡大しました。「高齢者総数の増加に備える時代」から「85歳以上人口と医療・介護複合ニーズの増加が需要と費用を押し上げる時代」への移り変わりが、数字にはっきり表れています。年報を横断的に読み、自法人の事業計画、次期報酬改定、地域別の供給体制設計に落とし込むための視点をお届けします。


補足追記
2024年度(令和6年度)の介護保険における保険給付の費用額は、高額介護サービス費、高額医療合算介護サービス費、特定入所者介護サービス費を含めて12兆952億円となり、前年度から3,766億円、3.2%増加。
利用者負担を除いた給付費は11兆1,826億円で、前年度比3.3%増となっています。
厚生労働省が2026年8月27日に公表した令和6年度介護保険事業状況報告(年報)を、机の上に広げてみました。全国の保険者から集めた第1号被保険者数、認定者数、サービス受給者数、給付費、保険料収納額、介護給付費準備基金の一年分の集計。令和6年度は2024年4月から2025年3月までを指します。数字は淡々と並んでいますが、並び方をよく見ると、これまでとは違う顔つきに変わっています。
一年分の集計を眺めていちばん最初に驚いたのは、第1号被保険者が5万人減ったのに、認定者が12万人増え、給付費が11兆円台に乗った、という組み合わせでした。「高齢者が増えるから介護費用が増える」という説明が、今回から通じにくくなっています。今日はこの一年の年報を、事業所の経営判断や地域の供給体制の設計につながる形で、ゆっくりたどっていきます。
第1号被保険者は減ったが、75歳以上は58.6万人増えた
第1号被保険者数は前年度末の3,589万人から3,584万人へ、およそ5万人減りました。制度創設以来ほぼ一貫して増え続けてきた数字が、はじめて反転局面に入ります。ところが、要介護・要支援認定者は708万人から721万人へ12万人増加し、認定率は19.4%から19.7%へ0.3ポイント上昇しました。
内訳を見ると理由がわかります。65歳以上75歳未満は1,571万人から1,507万人へ63.6万人、4.1%の減少。一方、75歳以上は2,018万人から2,077万人へ58.6万人、2.9%の増加です。介護リスクの低い層が抜け、リスクの高い層が積み上がっていく年齢構成の入れ替えが、今回から本格化しました。
全国計Excelの数字から年齢別の認定率を逆算すると、65~74歳は約4.3%、75~84歳は約17.5%、85歳以上は約59.5%です。85歳以上のうちおよそ6割が認定を受けている計算になります。「65歳以上人口が横ばいだから介護需要も横ばい」という見通しは、この時点で成立しません。前期高齢者が何人減っても、85歳以上が積み上がる限り、認定者数、サービス需要、給付費は上向く構造だからです。
事業所側の言い方をすれば、営業エリアの65歳以上人口を眺めているだけでは、次の3年、5年の需要は見えないということです。市町村別に85歳以上人口の推移を確認し、そこに認知症、独居、住まい、医療連携の情報を重ねる作業が、事業計画の初手になります。
補足:「第1号被保険者」とは?
介護保険に加入する65歳以上の人です。原則として、住民票のある市区町村の介護保険に加入します。
対象:65歳以上
介護保険料:年金からの天引き、または納付書・口座振替で納付
サービス利用条件:要介護・要支援認定を受ければ、原因を問わず介護保険サービスを利用可能
利用者負担:原則1割。一定以上の所得がある人は2割または3割
一方、「第2号被保険者」は、医療保険に加入する40~64歳の人です。第2号被保険者が介護保険サービスを利用できるのは、がん末期、脳血管疾患、若年性認知症など、国が定める16の特定疾病が原因で要介護・要支援状態になった場合に限られます。
つまり、今回の年報にある「第1号被保険者3,584万人」とは、全国の65歳以上の介護保険加入者数を意味します。
出典:厚生労働省「介護保険制度について」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/hukushi_kaigo/kaigo_koureisha/gaiyo/index.html
制度創設から給付費は3.45倍、認定率は11.0%から19.7%へ
平成12年度と令和6年度を並べてみます。第1号被保険者数は2,242万人から3,584万人へ約1.60倍。要介護・要支援認定者は256万人から721万人へ約2.82倍。サービス受給者数の月平均は184万人から620万人へ約3.37倍。給付費は3兆2,427億円から11兆1,826億円へ約3.45倍。第1号被保険者1人当たり給付費は14万5,000円から31万2,000円へ約2.15倍です。
給付費が3.45倍に伸びた理由を、高齢化だけに置くことはできません。第1号被保険者の伸びは1.60倍ですが、認定率が11.0%から19.7%へ上がっています。加えて、居宅サービス利用の定着、報酬単価、加算取得、要介護度構成、医療・介護複合ニーズ、居宅・地域密着型・施設サービス間の構成変化などが、いくつも重なった結果の3.45倍です。
なお、この給付費はいずれも名目額です。物価や介護職員の賃金の変動を除いた「実質給付費」ではありません。したがって、サービス量そのものが3.45倍になったと直訳することはできません。名目の伸びには、報酬改定と処遇改善による単価上昇分が含まれています。
今回概要まとめ図
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