ケアマネは足りないのではない、戻れなかったのだ:2026年6月11日・参議院厚生労働委員会で見えた“眠れる12.5万人”の復職革命
2026年6月11日の参議院厚生労働委員会で、ケアマネジャーの更新制廃止と「特定地域サービス」創設、身寄りなし高齢者支援の制度化が一体で議論されました。報道は「更新制廃止」だけを取り上げがちですが、本筋はそこではありません。試験合格者76.8万人、有効資格者31.1万人、現役従事者18.5万人。この三段の数字の隙間に潜む「眠れる12.5万人」をどう呼び戻すか。そして資格を緩めながら、ケアマネジメントの責任をどう重くしていくか。介護・医療・障害福祉25年以上の現場感覚から、上野厚生労働大臣と黒田老健局長の答弁を、数字と現場の手触りの両方から辿ります。

「76.8万人いるのに足りない」という錯覚
ケアマネジャー不足の議論で、よく目にする数字があります。試験合格者累計76万人超。厚生労働省の第27回介護支援専門員実務研修受講試験の実施状況によれば、第1回からの合格者は累計768,287人とされています(厚生労働省「第27回介護支援専門員実務研修受講試験実施状況」)。
ところが、この数字を「現役の資格保有者」と読んでしまうと、議論はまるごとズレます。
合格者累計には、すでに引退した人、亡くなった人、登録までいかなかった人、更新せずに資格が失効した人がすべて含まれています。
共同通信が47都道府県に行った調査では、介護支援専門員証など有効な資格を持つ人は約31.1万人にとどまることが報じられています。
さらに、厚生労働省の介護サービス施設・事業所調査によれば、令和5年度に実際にケアマネ業務に従事している人は185,174人。内訳は居宅介護支援113,433人、介護予防支援13,219人、その他58,522人です。
つまり、こうなります。
試験合格者累計 約76.8万人
有効な資格を持つ人 約31.1万人
実際に現場で従事している人 約18.5万人
有効資格を持ちながら従事していない潜在ケアマネ 約12.5万人
ここで足を止めたい。
「76.8万人いるのに足りない」ではないのです。
有効資格者31.1万人のうち、18.5万人しか現場に立っていない。
残りの12.5万人は、資格を持ったまま、別の場所で別の仕事をしている。
子育てを優先している人、介護離職した人、施設管理職に上がった人、体調を崩した人、研修日程と勤務が合わずに更新を諦めた人。理由は人の数だけあります。
潜在ケアマネは、有効資格者のおよそ4割。
この4割を、どうやって現場に戻すか。今回の制度改正は、その問いに正面から答えようとする一手です。
更新制廃止の本当の意味
報道の見出しでは「ケアマネ更新制廃止」と短く切られます。
けれども、答弁の中身を読むと、ねらいはもう少し奥にあります。
黒田老健局長は、介護支援専門員証の有効期間を廃止し、交付や更新のための研修も廃止する方向を示しました。
資格の「失効・期限切れ」という概念が基本的になくなる、という整理です。そのうえで、これまでの再研修は廃止し、代わりに「円滑な復職のための簡素な研修」を新設すると説明しています。
現行の再研修時間から大幅に削減し、オンライン・オンデマンドなど柔軟な受講方法にする方針も明言されました。
ここを丁寧に読みほどく必要があります。
旧制度では、研修を受けなければ資格が切れる、切れた資格を取り戻すには重い再研修が立ちはだかる、という構造でした。子育てで3年離れた、親の介護で2年離れた、それだけで現場に戻る扉が二重にも三重にも重くなっていた。
新制度では、設計思想がひっくり返ります。
資格の有効期限はなくす、ただし従事する人には継続研修を求める、研修を受けない人には都道府県知事が受講命令を出せる、命令に従わない場合は1年以内の業務禁止もあり得る。法律案要綱では、ここまで踏み込んでいます(厚生労働省「介護保険法等の一部を改正する法律案要綱」)。
つまり「資格を失わせて質を担保する制度」から、「働き続けられる形で質を担保する制度」へ、土台が組み替えられているということです。
ここに静かな衝撃があります。
今回概要まとめ図
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