ステラーコード:ライトなSFサスペンスミステリー【ネタバレあり感想】
タイトル通り、ネタバレありなのでご注意ください。
また、制作者Fragariaさんの過去作である『カガミハラ/ジャスティス』、『イハナシの魔女』にも触れます。こちらはあまり直接的なネタバレになるような話は避けますが。
体験版時点での感想はこちら。
「ステラーコード」体験版 -伝奇とSFとミステリーの話-|KS
一応ネタバレ無しでも軽く書いておくと、「良作」でした。SFが好きな人、サスペンスが好きな人には特にオススメできるかと思います。
あらすじ
佐藤大地は大学で人工衛星の研究をする四年生。
彼には最近新しい妹ができた。義妹だ。
「瞳」はアメリカ人で、ノーベル賞確実と言われる研究成果の持ち主だった。
ひょんなことから日本にやってきた瞳にバカにされてばかりの佐藤。
不満を募らせていたそんなある日、彼は大学の裏山で円筒状物体を見つける。
それは金属でできていた。
そして、暗号を出力していた。
誰が何のために製造した物体なのか?
暗号の意味は何なのか?
興味本位で調査を続ける佐藤と瞳。
そんな彼らのもとに一通のSMSが舞い込んでくる。
『これは警告だ。あなたがボトルを持っているのなら、それは誰にも見せてはならない』
ボトルを付け狙う組織の存在。
身の危険が迫る中、二人は謎を解くことを選択する。
そして、────。
と言うような話ですね。ネタバレあり感想にあらすじいるか?って気もしますが。
ゲーム的には、謎解き要素のオマケを添えたビジュアルノベルという定義になるかと思います。
まあ一応ゲーム性があるのでビジュアルノベルと呼ぶよりはノベルゲーム、アドベンチャーゲームと呼ぶ方が適切かもしれませんが、「それを目当てに遊ぶようなゲーム」では無いと思うので、ビジュアルノベルで良いと思います。
Steamの紹介ページにも、
プレイヤー自身が謎を解かなければならない場面もあります。
与えられた情報を元に答えを導き出しましょう。
なお、本作におけるインタラクティブな謎解きは、あくまでストーリーをより楽しくするためのギミックという位置付けです。
ストーリーよりも謎解きパズルを重視する方には適していないかもしれません。
とありますし。というか公式もビジュアルノベルって名乗ってるし。
感想
Light(軽い)
公式想定プレイ時間が5~7時間、自分のプレイ時間がデモ版1時間半+本編デモ版部分スキップで3時間なので合計4時間半でした。
よってノベルゲームとしては比較的軽量級のゲームです。
前作イハナシの魔女が公式想定10時間、自分が7~8時間だったので前作と比べてもかなり軽量化されています。
前々作カガミハラ/ジャスティスに関してはSteamに無いため記録も無く3作品に分かれておりかなりの重量級であったため比較は難しいですが…まあこちらは数十時間規模だったと思います。凄い長い。
最初に一番の文句を付けてしまっておくと、「もっと読みたかった!!!」に尽きます。
これはもう完全に自分の好みの問題も入るので仕方ないんですが。
主語をひぐらしの風呂敷くらい広げるとADV、ノベルゲーム好きは好みの話はいくらでもとは言わずとも出来れば20時間くらいは読みたい生き物…
逆に言うとノベルゲーム初心者には、オマケ的な推理要素のインタラクティブ性があるのもあって、Fragariaさんの全三作品の中だと一番勧めやすいゲームかもしれません。
過去作を鑑みれば別に長い物語が書けないとかそんなことは絶対無いであろうため、意図した短さなのでしょうか。
Light(光)
この物語は公式ジャンルがSFミステリービジュアルノベルですが、自分の体感としてはかなりサスペンス要素が強いです。なので記事名にもサスペンスの文字を入れています。
設定やゲームの作りとしては確かにSFであり、ミステリーとも言って良いとは思うのですが、シナリオ的にはサスペンスの色の方がミステリーより強かったのではないかなと思います。
恐らくは短めのシナリオの中で話を転がし続けるためにそうなったのではないかな、と。
サスペンスなので、まぁ~人は死にましたね。と言っても主要キャラではありませんが、主要キャラにもかなり死の恐怖は迫ってましたね。
この辺りの要素はSFそのものはそこまで関係なく、どちらかと言うと「人類の醜さ」的な部分に焦点を当てる要素だったのかなと思います。
一度大きなサスペンス展開が入った後、要するにSERNの襲撃的なやつが始まった後はかなり最後までずっとサスペンスが続くので、「人間さぁ…」的な感想を抱かなくもない、と言うよりも抱くように展開していたと思うのですが、その上でこの話の本質は「光」でした。
要は「性善説」ですね。要はって軽く挙げて良い概念なのか、という突っ込みが入りそうですがまあ無視します。
まず大前提、この物語にそこそこ早い段階で登場するガチ宇宙人のジャバハー星人ですが、めちゃくちゃ良い人です。
作中においての流れで、読者視点で彼らが怪しく見えるシーンは特に存在せず、「なんか普通に良い人そうだなぁ」と思っていたら本当に「めちゃくちゃ良い人達じゃん…」で終わります。
しかし作中でも言及されているように、彼らが「本当に良い人である」という確証は存在しないのです。それはまずシナリオの道中、そして最後の論戦までは間違いなくその通りだし、何なら最後の最後、「めちゃくちゃ良い人達じゃん…」という感想になった後も、100%間違いのない確証かと言えばそうではないでしょう。
最後の論戦において、主人公達が「謎」を解いた後でも、確実に主人公達の主張の方が正しいと言い切ることは不可能でした。
ただ「それを信じよう」という結論なんですよね。
人間の本質が善である、という意味ではなく。
ジャバハー星人の本質が善であることを信じる、つまり性善説を信じた者が勝利した話でした。
過去作含めた三作品どれも、この辺りの「明るさ」は一貫している気がします。
ただどちらかと言うと、イハナシの魔女よりもカガミハラ/ジャスティスのそれに近い印象を受けましたね。イハナシの魔女は小規模な関係性を緻密に描いたセカイ系でしたがカガミハラ/ジャスティスは本当に世界に触れている話だったので。
光と闇のバランスとして、後者の比重が強めであるってことです。
まあカガミハラ/ジャスティスほどでは無いのですが…
SF要素について
短めのシナリオではありますが、その中できっちりと「宇宙スゴイ」や「宇宙コワイ」等、SFに求める味の1つであろう宇宙の深淵に触れさせてもらえました。
推理パートが実質的には宇宙の勉強会に近い面があり、そこで触れた部分も大きかったですが、宇宙人とのコンタクトに成功した辺りの雰囲気やその宇宙人とのやり取りそのもの、そして「謎」の真相に至った所などはきっちりとオリジナルなSFの良さでしたね。
まあ別に自分はSFに造詣が深いわけではないのであんまり喋るとボロが出そうですが…浅い視点で見てSFとしてちゃんと面白かったと思います。
SFアドベンチャーと言えば超代表作、金字塔とでも呼ぶべき『シュタインズゲート』がありますが、体験版の感想でも語った通りシュタゲの序盤部分から得られる栄養素と近しいと思います。
「ループものにならなかったシュタゲ」って感じでしょうか。別にシュタゲに宇宙人なんか出てこないし、ステラーコードに時間を渡る要素はありませんが、雰囲気としては似ていると思います。
結局シュタゲの大半はループものなので総合的に見るとまあ全く別物と言って良いのですが…
サスペンスについて
割と群像劇チックというか、かなりコロコロと視点が変わります。
シナリオとしては短い中で視点がどんどん変わり、キャラもシナリオ量の割には結構多かったですね。
これはまあ多分「黒幕が誰なのか」を誤魔化すために必要だったのでしょう。
実際自分はデルタワンの正体も預言者の正体もちゃんと提示されるまで特に思いついていなかったので、そこの部分の試みは規模の割にしっかり出来ていたと思います。
ヤクザに襲撃されたところが割といい具合にカモフラージュとして効いてますよね。
預言者に関してはなんとなくシュタゲゼロを思い出したり出さなかったり。
ミステリーについて
謎の規模としては割と小規模だと思います。
シナリオ短めなのにそんな複雑なわけも無いのでそりゃそうなんですが。
しかししっかりと必要な伏線を提示して、納得行く「宇宙の謎」を解かせて貰えたと思います。
「ジャバハー星人は何のために地球に来たのか」
究極的にはただそれだけを解くミステリーであり、それを解くためにちょっとした遠回りをさせられる話です。
しかし「地球人類よりも遥か上の技術を持った宇宙人」を提示した後、「更にその上位に居る存在」が解答になるのは割と盲点でしたね。この上位存在も事前にきっちりと提示されていたわけですが。
道中の謎解きパートは、デモ版部分で一個凄くわかりづらいのがあった(修正済みらしい)以外は特に詰まるようなものでは無く簡単でしたね。全体的にデモ版部分より相当簡単…というかわかりやすくなってた印象。良いと思います。
そもそもヒントも答えも貰えますし。
そしてその定期的に挟まるインタラクティブ性のおかげで読者がすんなりと最後の推理で解答に至れるようにできていたと思います。
オマケではあると思いますが、そこそこ肝心なオマケでもありました。
キャラについて
ここに関しては評価を付けようとすると少しマイナス点になってしまいます。
というか「勿体ない」って感じですね。
そもそもの作りとして、前作イハナシの魔女がミステリー要素をオミットしてキャラ掘り下げを全開にしていたのに対して今回はミステリー側を主体にした、とのようなことをあとがきとして書かれていたので、多分前作プレイヤーがこのような感想を抱くのも想定済みな気はするのですが。
根本的なテキスト量が前作よりも短い上で、キャラ描写にあまりテキストを割かずにミステリー・サスペンス要素を描き、更にそのために群像劇レベルで描写を散らしていたので、キャラの掘り下げは前作に比べるとかなり浅くなってしまったと思います。
ちなみにカガミハラ/ジャスティスは今作より更にサスペンス・ミステリーの規模が大きいのですが、テキスト量の暴力で解決していました。
個人的にはそのように「全部盛れるだけ盛って欲しい」と言わざるを得ないのですが、その辺りゲーム制作者様側の事情を知らないので少し心苦しい所…多分意図的な規模の小ささでもあるだろうし…
特に影響が大きいのはやはりボーイミーツガール要素が薄れてしまったことですかね。間違いなくこの物語もボーイミーツガールではあるのですが、主人公・ヒロイン共にあまり掘り下げ…というかそもそも描写自体もそこまで多くないために、感情移入しづらい面がありました。
ヒロイン側に関しては多少ありましたが、イハナシの魔女のサブヒロインに至るまでの濃厚なヤツを味わった後だと…もっとああいうの摂取してえなぁ~~~~~と言う感情になってしまう…
カガミハラ/ジャスティスも前述したようにテキスト量の暴力でかなりキャラ描写は深いですからね。
ボーイミーツガールとして一番完成度が高かったのはやはりイハナシの魔女だと思いますが。
最後大地と瞳がくっつくに至るのもやっぱちょっと描写が足りなくない?と思ったり。別にあんな体験したらくっつくのもおかしくは無いんですけど。
まあインモラル義兄妹の雰囲気は好きだし瞳は可愛いので幸せならOKです。
「描写が足りない」というだけで、設計は良かったと思います。メインヒロインの瞳も、サブヒロイン?の桃ちゃんも可愛いです。
会話のノリも相変わらず良くて、好きです。
持論ですが、日常会話を書くのが上手いライターさんは滅茶苦茶強いと思っています。
単なる小説以上にノベルゲームってテキストにおける会話の占める割合が凄いので。
ある意味の極致がQruppo。
ただ一つ気になるんですが、このタイプの子を負けヒロインに据えるのは作者さんの性癖なんでしょうか…いや桃ちゃんは明確に好意を描いてたわけではないけど…いやでもあるよな…
まあカガミハラ/ジャスティスの方の負けヒロインさんはイラストが多分別の人なのもあって印象は違いますけど…でもやっぱ属性は近い気がするな…相棒属性というか…
主人公とヒロインが明確にくっつかない感じの話なら別に負けヒロインっぽい子が居ても気にならないんですけど普通にくっつく感じの話で負けてる子を見るとちょっと心が痛むんですよね…毎回居るんですけど…
アカリちゃん系ヒロインがメインになる話も読んでみたいですね。
結論として、あまり「キャラ描写目当て」に読む感じのシナリオでは無いかな~と思いました。別に悪いわけじゃないんですけど。
その他、願望・まとめ
ちょっと文句的な感じになってしまいます。
主観。
最初に言った通り「もっと読みたかった」に終始してしまうんですが、一つあとがきを読んでいて気になったのは「イハナシの魔女って個人的には十分ミステリーの味したんだけどな…」って点ですね。
「ステラーコード」体験版 -伝奇とSFとミステリーの話-|KS
まぁ~創作者でも何でもない自分が偉そうに語るのもどうかと思いますが、個人的にビジュアルノベルにおける「ミステリー」に求めているものって、「謎解き」ではなく「謎」そのもの、つまり「先が読めないこと」だと思うんです。
より突き詰めると「先を予想させること」かもしれません。
だから伝奇要素、例えば因習村の風習とかに急に直面した場合、その時点でミステリーが発生していると思うんですよね。極論言えば伝奇要素のあるビジュアルノベルって大体それだけでミステリ要素含んでるんじゃね?みたいな。
イハナシの魔女では因習の裏側についてもきっちりと明かされましたし、十分その面ではミステリーしていたと思うんですよね…
あとそもそも一応現実に沿った舞台で、魔法を使う謎の美少女ってそれもうミステリー存在ではありますよね。ミステリアス。
この辺は元々ミステリー要素をぶち込んで作っていたところからそれをオミットしたことによる名残的なものなんですかね?
ただ個人的にはその、「話の本筋はキャラを掘り下げるボーイミーツガールだが設定部分でしっかりと謎を用意しており、話の裏側・外側で答え合わせが為される」というイハナシの魔女の設計は、意図したものなのかはわかりませんが10時間前後規模のビジュアルノベルの作りとしては非常に秀逸だと思いました。
単に滅茶苦茶自分の好みだったというのはあるんでしょうけど。
でもやっぱり、「小規模なビジュアルノベル」には「キャラの掘り下げに特化すること」が割と必要性が高いんじゃないかと思いますね。
ドキドキ文芸部とか、飢えた子羊とか。
要素だけで分解すれば自分は伝奇もSFもミステリーもサスペンスもボーイミーツガールも全部好きなのですが、総合的な満足度ではイハナシの魔女の方がステラーコードを大きく上回っています。
そして自分はどちらかと言えばシナリオ>キャラ派なのですが、ステラーコードはシナリオ寄り、イハナシの魔女はキャラ寄りであると思います。その上で、後者の方が満足度が高いんですよね。
これに関してはやはり、設計や質の問題では無くボリュームの問題だったのではないかと思います。イハナシの魔女は10時間分のテキストをキャラ達にがっつり振り分けたことで、ビジュアルノベルのプレイにおいて最も重要な要素の1つである感情移入させる能力がかなり高められたのではないかと。
逆にステラーコードは、良質なのは間違いないのですがボリューム不足によって各々の要素が少し物足りなく感じてしまったのだと思います。
キャラ描写は特にそうなのですが、シナリオ展開も終着点・結論自体は別にあれで全然良いんですけどもうちょい道中に一捻り、二捻りあるとより楽しめたのではないかと。
ループとまでは言わずとも、もうちょいSF現象がサスペンスに介入してたら更にハマれた気がするんですよね。イハナシの魔女では実際ファンタジーがガンガン介入してました。
今回は最後以外ほぼほぼ介入してない人間同士の争いなので。
実際、桃ちゃんパートで選択肢間違えた時に入った特殊描写とかすっごいワクワクしました。結局のところ別にシナリオ的になんかあるわけじゃ無かったんですけども。
一応説明付けるなら例の上位存在の介入だったとかなんですかね?
カガミハラ/ジャスティスがゴツ盛りだった前例もありますが、あそこまでとは言わずともボリュームが2~3倍あればとんでもなく(自分が)楽しめる話になったのではないかと思い、「惜しい」と思ってしまいました。
イハナシの魔女より短い話でしたが、イハナシの魔女より長めのボリュームで書いた方が向いてる話だったんじゃなかろうか、って感想です。
まあ、完全に消費者側のワガママですね…
そもそも多分短い方が一般的には売れやすいんだろうし…
個人的にはすっごい応援している制作者さんなのであんまり主観的なケチを付けるのもなぁとも思ったのですが言いたいこと言っちゃいたい欲が上回ってしまいました。
「悪い」ではなく、「惜しい」。
過去作知ってるのでキャラ描写がっつり掘り下げさせたらめっちゃ良いもん出てくるのがわかっているからこそ…!!もっと読みたかった…!!
2倍お金払うから2倍読ませて欲しい。
ううん、やはり消費者のワガママ…
質は良いです。間違いなく良作です。買って後悔無し。当然短いのもありますが、普通に深夜にぶっ通しでプレイしてクリアしました。
別に2000円未満ならボリューム的にもそこまで低いわけでは無いでしょう。たまに狂ったコスパのゲームが存在するだけで…
ただやっぱり、自分の中での良作を越える秀作の最低要件に、(キャラ描写に特化していない場合は)ある程度のボリュームは存在するかなぁ、と思った作品でした。
次回作もめっちゃ期待してます。
あとこのゲームやる人はイハナシの魔女は大体プレイ済みな気がしますがカガミハラ/ジャスティスもかなり良いゲームでボリューム凄いのでやった方がいいと思います。
もしもイハナシの魔女未プレイでボーイミーツガール好きなら絶対そっちをやりましょう。
大将!次はボーイミーツガール『気持ち多め』で頼むよ!

