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市場調査の調査設計|新規事業の判断に使える設計書8項目と記入例

市場調査は、アンケートの質問を作るところから始めると失敗しやすくなります。

100人から回答を集めても、その結果によって何を決めるのかが曖昧なら、会議で「参考にはなったが、結局どうするのか」と止まるからです。

先に決めるべきなのは質問ではありません。

  • この調査で何を判断するのか

  • どの結果なら進めるのか

  • どの結果なら条件を変えるのか

  • どの結果なら中止するのか

この4点です。

総務省統計局も、調査を企画するうえでは、何のために調べ、どのような結果が欲しいのかを明確にすることが重要だと説明しています。

この記事では、新規事業の市場調査を発注・実施する前に作っておきたい「調査設計書」の書き方を、8項目に分けて解説します。

質問文の細かなテクニックではなく、調査結果をGO・HOLD・STOPの判断につなげるための設計です。

参考:総務省統計局「調査の企画や設計」

調査設計書は「発注書」ではなく「判断の設計図」

調査設計書とは、対象者、質問項目、調査方法だけをまとめた書類ではありません。

新規事業においては、次の流れを事前に決める設計図です。

調査する
↓
結果を比較する
↓
仮説を更新する
↓
GO・HOLD・STOPを判断する
↓
次の投資額と行動を決める

調査会社へ外注する場合も、社内で実施する場合も、この設計図がないと調査範囲が広がり、費用だけが増えやすくなります。

逆に、判断したいことが明確なら、公開情報だけで済む部分、インタビューが必要な部分、アンケートまで必要な部分を分けられます。

市場調査の調査設計書に必要な8項目

ここからは、完全な架空の新規事業を使って記入例を示します。

架空の事業案:従業員10〜49人の地域建設会社に向けて、見積書の作成時間を短縮するクラウドサービスを提供する。

以下の会社、商品、数値はすべて説明用です。実在する案件や顧客情報ではありません。

1.今回決めること

最初に、調査結果を使って誰が何を決めるのかを書きます。

「市場を理解する」「ニーズを調べる」では広すぎます。投資判断まで具体化します。

【記入例】

2026年10月末までに、3社限定の有料実証を開始するか判断する。
開始する場合は、試作開発費150万円までを承認する。

判断期限と投資上限が決まると、調査に必要な精度も見えてきます。

数千万円を投資する判断と、数社で試す判断では、必要な証拠の量は同じではありません。

2.現時点の仮説と代替手段

次に「顧客が困っているはず」と考える理由を書きます。

ここでは、自社サービスだけでなく、顧客が現在使っている代替手段も仮説に含めます。

【記入例】

仮説:小規模建設会社では、過去案件を探しながらExcelで見積書を作成しており、
見積作成に毎週5時間以上を使っている。

現在の代替手段:

  • Excelの既存様式

  • 過去見積書のコピー

  • 積算ソフト

  • ベテラン担当者への確認

  • 見積作成の外注

  • 対応せず案件を見送る

競合調査で見落としやすいのは、「同じカテゴリーの商品」だけを競合と考えることです。

実際には、何もしない、Excelで続ける、人に聞くといった行動も強い代替手段です。

仮説の立て方から整理したい場合は、新規事業の仮説検証|最初に確かめる仮説を決める5ステップも参考になります。

3.調査対象と対象外

「中小企業」「経営者」「20〜50代」のような広い定義では、回答を集めても結果を解釈できません。

対象者には、属性だけでなく、直近の行動条件を入れます。

【記入例】

対象:

  • 国内の建設会社に勤務

  • 従業員10〜49人

  • 過去3か月以内に見積書を作成または承認した

  • 見積業務の流れを具体的に説明できる

  • 経営者、工事責任者、積算・営業担当者

対象外:

  • 見積業務をすべて本社や外部へ委託している

  • 過去1年間、見積作成に関与していない

  • サービス提供会社、調査関係者、競合会社

BtoB調査では、会社の属性と回答者本人の役割を分けて定義することが重要です。

導入を決める人、実際に使う人、費用を承認する人は、同じとは限りません。

4.明らかにしたい問い

質問票を作る前に、「分析後に答えたい問い」を並べます。

【記入例】

  1. 見積作成は、いつ、誰が、どの手順で行っているか

  2. 最も時間がかかる工程はどこか

  3. 現在の方法で発生した直近の損失や遅延は何か

  4. 既存の積算ソフトやExcelで解決できない理由は何か

  5. 新しいサービスを導入できない条件は何か

  6. 導入判断に必要な機能、証拠、セキュリティ条件は何か

  7. 無料利用ではなく、有料実証へ進む会社があるか

「このサービスを使いたいですか」だけでは、需要は判断できません。

将来の好意的な回答より、直近の行動、現在払っている費用、社内決裁、実証参加といった事実を優先します。

5.調査方法と実施順序

調査方法は、最初からアンケートに固定しません。

分かっていないことの種類に応じて、公開情報、インタビュー、観察、試作品テスト、アンケートを組み合わせます。

【記入例】

第1段階:公開情報

  • 対象企業数の概算

  • 業界構造

  • 類似サービス

  • 法規制

  • 既存ソフトの価格と機能

第2段階:探索インタビュー

  • 経営者または承認者4人

  • 実務担当者4人

  • 直近の見積業務を時系列で確認

第3段階:試作品テスト

  • 5社に同じ見積作成課題を依頼

  • 所要時間、入力ミス、途中離脱、追加要望を記録

第4段階:必要な場合のみ定量調査

  • 困りごとの割合や業種別差を確認

  • 定性調査で判明した選択肢を調査票へ反映

総務省統計局のData StaRtでは、誘導する説明、二つのことを一度に聞く質問、選択肢の不足など、調査票を歪める例が示されています。仮説が曖昧なまま大量の回答を集めるより、少人数の探索で論点を絞り、試験調査で修正してから定量調査へ進む方が無駄を抑えやすくなります。

参考:Data StaRt「演習問題『調査票の修正』」

6.対象者の集め方と件数

回答数だけでなく、どこから、どの条件で集めたかを書きます。

【記入例】

  • 公開情報から候補企業を抽出

  • 既存の知人だけに偏らないよう、地域と業種を分散

  • 経営者と実務担当者を別枠で募集

  • 対象条件を満たすか事前質問で確認

  • 不成立、辞退、未回答も件数を記録

回答者が100人いても、知人、既存顧客、自社SNSのフォロワーだけなら、市場全体の縮図とは限りません。

無作為抽出を前提とした標本誤差を、便宜的に集めた回答へそのまま当てはめることもできません。Data StaRtの標本誤差の解説でも、推定精度は母集団、標本数、比率、信頼度などの前提で変わります。

人数を先に決めるのではなく、「どこまで一般化したいのか」から逆算します。

参考:Data StaRt「標本誤差の計算」

インタビュー対象者の条件設定については、顧客インタビュー対象者の集め方|5人を選ぶ条件と募集文面も参考になります。

7.測定項目とGO・HOLD・STOP基準

結果を見てから基準を作ると、都合のよい解釈が入りやすくなります。

実施前に、何を測り、どの結果ならどうするかを決めます。

【架空の判断基準】

GO:

  • 8人中5人以上から、見積業務が毎週発生する具体例を確認

  • 試作品テスト5社中3社以上が、有料実証の社内検討へ進む

  • 少なくとも2社から、条件付きでも見積依頼または提案依頼を得る

  • 情報管理や既存システム連携に致命的な障壁がない

HOLD:

  • 課題は確認できたが、有料実証の検討が3社未満

  • 経営者と実務担当者で必要機能が大きく異なる

  • 特定業種または企業規模だけに需要が偏る

  • 価格よりも連携機能が導入障壁になっている

STOP:

  • 現在の代替手段で十分に解決されている

  • 試作品を使っても時間短縮が確認できない

  • 有料実証へ進む企業がない

  • 必須連携の開発費が想定収益に見合わない

この件数は市場全体の需要率を証明するためのものではありません。少額の次段階へ進むかを決める、探索段階の基準です。

最終判断では、回答数だけでなく、発言、実際の行動、支払い、社内決裁の進行を分けて確認します。

8.成果物・個人情報・実施管理

最後に、調査後に何を残すかと、データの扱いを決めます。

【記入例】

成果物:

  • 事実と推測を分けた調査結果

  • 仮説ごとの支持・反証

  • 対象者別の共通点と相違点

  • GO・HOLD・STOP判定

  • 未確認事項

  • 次の30日で実施する検証

  • 経営会議用1ページ要約

管理項目:

  • 取得する個人情報

  • 利用目的

  • 閲覧できる担当者

  • 外部委託先

  • 保存場所

  • 保存期間

  • 削除方法

  • 録音・録画の同意

  • 引用時の匿名化方法

アンケートで個人情報を本人から直接取得する場合は、回答を送信する前に利用目的を分かるように示す設計を検討します。「念のため」で不要な個人情報を集めないことも調査設計の一部です。

参考:個人情報保護委員会「個人情報保護法ガイドライン(通則編)」

日本マーケティング・リサーチ協会の綱領も、調査対象者と個人情報の保護、倫理・専門・法的責任を示しています。実際の調査では、対象となる法令、契約、社内規程を確認し、必要に応じて専門家へ相談してください。

参考:日本マーケティング・リサーチ協会「マーケティング・リサーチ綱領」

そのまま使える調査設計書のひな型

以下の8項目を、まず1ページにまとめてください。

1. 今回決めること・判断期限・投資上限:
2. 現時点の仮説と代替手段:
3. 調査対象・対象外:
4. 明らかにしたい問い:
5. 調査方法と実施順序:
6. 対象者の集め方と件数:
7. 測定項目とGO・HOLD・STOP基準:
8. 成果物・個人情報・実施管理:

1ページで説明できない場合は、調査範囲が広すぎる可能性があります。

「市場性を全部調べる」のではなく、今回の意思決定に必要な未確認事項へ絞ります。

調査設計で起こりやすい7つの失敗

最後に、よくある失敗を整理します。

  1. 調査目的が「ニーズを知る」で止まっている

  2. 結果を誰がいつ使うか決まっていない

  3. 「使いたいですか」という将来意向だけで需要を判断する

  4. 既存顧客や知人の回答を市場全体へ一般化する

  5. 回答を見てから成功基準を変更する

  6. GOの基準だけで、HOLD・STOP条件がない

  7. 不要な個人情報まで集め、保存期限を決めていない

調査の品質は、質問数や回答数だけでは決まりません。

「どの事実が分かれば、次の投資判断を変えられるか」を先に決めているかどうかで、大きく変わります。

市場規模の推計が必要な場合は、新規事業の市場規模の調べ方|TAM・SAM・SOMを推計する8ステップもあわせてご覧ください。

外注前に整理すべき範囲は、市場調査を外注する前に|失敗を防ぐ7項目と発注チェックリストで解説しています。費用を比較するときは、市場調査の費用相場|Webアンケート・インタビューの公開料金例と見積比較7項目をご覧ください。

調査設計から依頼したい方へ

FREE LABOでは、経営者の「これを事業にしたい」を、調査から設計、立ち上げまで支援しています。

新規事業リサーチは98,000円〜です。

98,000円でアンケートやインタビュー一式を無条件に含む、という意味ではありません。事業案、判断期限、必要な証拠、公開情報で確認できる範囲、一次調査の要否を整理し、調査範囲と成果物を確認してからご案内します。

事業案がまだ粗い段階でも、最初に調べるべき問いを切り分けます。自社だけで設計できる方は、相談不要です。

相談時に、次の5点をお知らせください。

  • 検討している事業案

  • 今回決めたいこと

  • 判断期限

  • すでに持っている資料やデータ

  • 相談コード:FLM-20260830-DAILY-NTF24

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相談文には記事ID FLM-20260830-DAILY-NTF24 が入ります。表示数ではなく、この記事から相談・受注・売上につながったかを記録するためです。

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