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スープストックの「1250円」が安く感じる理由。 ~「機能」ではなく「意味」を食べる時代~

こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。

先日の話ですが、やってしまいました。
今年初めての集合研修の日、意気揚々と会場に向かったのですが、なんと財布を忘れてしまったのです。

最近はスマホ決済ばかりで、財布を持ち歩く習慣が薄れていたとはいえ、さすがに焦りました。結局、お客様にお金を借りるという、講師にあるまじき失態を演じてしまいました…。

人間、焦っている時や疲れている時こそ、「ホッとする場所」を求めたくなるものですよね。
今日は、そんな「ホッとする場所」として独自の地位を築いている Soup Stock Tokyo(スープストックトーキョー) の話をしたいと思います。

実は以前、こちらの記事でもスープストックについて書きました。

この時はスープストックの「戦略」や「在り方」について触れたのですが、今日はまた少し違った視点です。

なぜ人は、1,000円を超えるランチに納得してお金を払い、そこに行列を作るのか?
その秘密を解く鍵となる、「ある不思議なスープ」を、ビジネス理論で深掘りしてみます。



🥣 1250円は安い?

先日読んだ記事に、平日のスープストックの店内が 「女性のおひとり様だらけ」 で賑わっている様子が描かれていました。


そして、かつては「高い」と思われていた価格設定が、今や「適正、あるいは安い」と感じられるようになっているというのです。

たしかに、スープストックの空気って独特ですよね。
私は最近、ガストや宮本むなしで「モツ鍋」を見かけると条件反射で注文してしまうほどのモツ鍋好きなのですが、男一人で鍋をつつくあの「戦闘モード」のような空気感とは、スープストックは真逆にある。

静かで、あたたかくて、“自分の心を整える場所”みたいな感じがする。
この差を決定づけているのが、「ゴッホの玉葱のスープ」
に代表されるような、彼らの商品開発のアプローチです。


🎨 オニオングラタンスープが「作品」に変わる瞬間

スープストックには「ゴッホの玉葱のスープ」というメニューがあります。
これ、物理的に言ってしまえば「オニオングラタンスープ」です。

でも、そこに「ゴッホ」という名前が乗った瞬間、ただの汁物が、ふっと別物になる。

  • だけではなく

  • 背景があり

  • 世界観があり

  • それを味わう時間そのものが、ちょっとした体験になる

つまり、「食べる」が「鑑賞する」に近づく。
ここが、価格比較を無効化しているポイントです。

「オニオングラタンなら他にもあるよね?」が通用しなくなる。
なぜなら、比較対象が“スープ”ではなく、“意味”になってしまうからです。


💡 ちょこっと理論紹介💡
👀意味のイノベーション(Design-Driven Innovation)

イタリアの経営学者 ロベルト・ベルガンティ が提唱した概念。
イノベーションには「技術の刷新(もっと高性能に)」や「市場への適応(もっと安く)」だけでなく、“それが持つ意味を変える” という第三の道がある。

たとえばロウソクは、かつては「照明(機能)」だったが、電球の登場で役割を失った。ところが今は「癒やし・ムード作り(意味)」として再定義され、再び価値を持っている。
つまり、勝負するのは機能ではなく、“解釈(意味)” そのもの。


🍲 スープストックは「意味」を売っている

この理論をスープストックに当てはめると、彼らがやっていることが明確になります。

普通の飲食店は、スープの 「機能(味・量・温度・コスパ)」 で競争します。
でもスープストックは、そこから一段ズラして、「スープを飲むことの意味」 を変えました。

  • Before(機能):小腹を満たす/栄養を摂る

  • After(意味):アートを感じる/物語を味わう/自分を大切にする時間

極論をすれば「ゴッホの玉葱のスープ」を注文するお客様は、オニオンの栄養素にお金を払っているのではありません。
“ゴッホの世界観に触れる体験” にお金を払っている。


だから、他店のスープと比べて「高い/安い」を議論すること自体が、ズレる。
これが、“1250円が安く感じる” 正体です。


🧭 私たちの仕事に「意味」はあるか?

ここ、リーダーの仕事に直結します。

部下に任せる仕事、それは単なる 「作業(オニオングラタンスープ)」 になっていないでしょうか?
そこに 「意味(ゴッホの物語)」 を持たせるのが、リーダーの役割です。

作業として渡す:
「このデータ、明日までに入力しておいて」

意味を持たせて渡す:
「このデータは、来月の新商品開発の鍵になる。君の分析視点が欲しい から、明日までにお願いできるかな?」

同じ“依頼”でも、受け取る側の体験はまるで違う。
人は「作業」では動きません。意味で動きます。

私自身、過去に新規事業で痛い失敗をした時、振り返ると、私はまさに「作業」しか渡していませんでした。

メンバーが求めていたのは、
「なぜこの仕事をするのか」
「この仕事は何につながるのか」
「自分は何を期待されているのか」
その“意味の説明”だったのに、私は答えられていなかった。

だから今は、研修でもよく言います。
「タスクを渡すな。意味を渡せ。」


🏁 まとめ:あなたのチームの「スープ」は?

スープストックの「異様な光景」は、現代人が「機能(お腹を満たす)」以上に、「意味(心を満たす)」 を求めている証拠でした。

商品でも、仕事でも、チーム運営でも同じです。
機能の勝負に入った瞬間、価格競争・消耗戦になりやすい。
でも、意味の勝負に持ち込めた瞬間、比較そのものが消え、価値が立ち上がる。

さて、あなたのチームが扱っている仕事には、どんな「物語」がありますか?
もし今、誰かが“作業モード”に入っているなら、タスクの前に、意味をひと言足してみてください。
それだけで、場の体温が変わることがあります。

…私も次は財布を忘れないように、前夜のうちに玄関に置いておこうと思います(笑)。
それでは、また。


✅ 参考記事・リンク



💬 コメントで教えてください

あなた(あるいはあなたのチーム)の仕事を「ゴッホ化」するとしたら、どんな“意味”を足しますか?
(例:「この集計は、誰のどんな意思決定を助けるのか?」など)


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