城を替える勇気。 〜藤堂高虎に学ぶ強みの置き場〜
こんにちは。
株式会社スプリングボード代表の足立晋平です。
先日、BS11の番組『偉人・敗北からの教訓』で、藤堂高虎の回を観ました。
藤堂高虎。
名前は知っているけれど、正直なところ、私の中では少し扱いが難しい人物でした。
なぜなら、どうしても最初に浮かぶのが、
「何度も主君を替えた人」
だからです。
現代で言えば、転職回数がかなり多い人です。
履歴書を見た人事担当者が、少し眉間にしわを寄せるかもしれません。
「この人、また辞めるんじゃないか」と。
でも、藤堂高虎の人生を見ていると、どうもそれだけでは片づけられません。
彼は、居場所を替えただけの人ではありませんでした。
自分の価値の出し方を、時代に合わせて変え続けた人だったのです。
🏯 居場所を替えたのではなく、役割を変えた
藤堂高虎は、若いころから順風満帆だったわけではありません。
浅井家に仕えたあと、いくつもの主君のもとを渡り歩きます。
見方によっては、落ち着きがない。
でも別の見方をすれば、こうも言えます。
自分が活きる場所を探し続けた人。
高虎のすごさは、ただ強い武将だったことではありません。
戦う人から、城をつくる人へ。
城をつくる人から、町をつくる人へ。
町をつくる人から、政権を支える実務家へ。
自分の価値を、時代に合わせて組み替えていきました。
これは、今の私たちにもかなり刺さります。
30代、40代になると、ふと考えることがあります。
「今の仕事、このままでいいのだろうか」
「自分の強みって、何だろう」
「若いころのやり方が、最近通用しなくなってきた気がする」
ありますよね。
私もあります。
朝、コーヒーを飲みながら仕事の予定を見ていると、たまに思います。
「今日もだいたい予定が詰まっている。でも、これは前に進んでいるのか。ただ忙しいだけなのか」
なかなか、朝から重たい問いです。
チョコレートでも食べないとやっていられません。
💡ちょこっと理論紹介💡
🧭 プロティアン・キャリア
プロティアン・キャリアとは、会社や組織にキャリアを預けるのではなく、自分の価値観や強みを軸に、環境に合わせて変化していくキャリア観です。
ひとつの会社に長くいることが悪いわけではありません。 ただ、「この会社にいるから大丈夫」ではなく、「どこに行っても価値を出せる自分をつくれているか」が大事になります。
藤堂高虎は、まさに戦国時代のプロティアン・キャリアの人だったのかもしれません。
🧱 城をつくる人は、石垣だけを見ていない
藤堂高虎は、築城の名人としても知られています。
でも、ここで大事なのは、城をつくるとは、単に立派な建物をつくることではないという点です。
敵はどこから攻めてくるのか。
水はどこを流れるのか。
人はどこを通るのか。
商いはどこで生まれるのか。
町はどうすれば栄えるのか。
城づくりとは、かなり総合的な仕事です。
いわば、戦国時代のプロジェクトマネジメントであり、都市設計であり、事業構想です。
高虎は、城をつくっていたようで、実は人と情報と商いが流れる仕組みをつくっていた。
これ、営業やマネジメントにもそのまま当てはまります。
営業であれば、商品を売るだけでは弱い。
「この商品、便利ですよ」
「コスト削減できますよ」
「今ならキャンペーンです」
これだけだと、どうしてもカタログ説明になります。
でも、顧客の業務の流れ、社員の困りごと、決裁者の関心、現場の手間、将来のリスクまで見えてくると、提案は変わります。
商品を置くのではなく、顧客の仕事が回る構造を設計する。
これは、藤堂高虎の築城に近い発想です。
🚶 人は、仕事との相性で変わる
高虎の遺訓に、とても好きな言葉があります。
少し原文に近い形で紹介すると、こうです。
召仕ものに能者あしき者有間敷也
其人々の得たる所を見立それぞれに召仕へは
人に屑なきなり
得ぬ事を申付るによりて埒あかす
結句腹を立なり
是主人の目かあかさる故なり
現代語にすると、だいたいこういう意味です。
使う者に、有能な者・無能な者があるわけではない。
それぞれの得意なところを見立てて使えば、人に屑はいない。
できないことを命じるから物事が進まず、しまいには腹を立てる。
それは、主人に人を見る眼がないからである。
なかなか、厳しい言葉です。
「部下が悪い」と言う前に、まず自分の見る眼を問え。
そう言われているようで、背筋が伸びます。
これ、管理職研修で話すと、かなり反応があります。
私たちはつい、部下や後輩を見て、
「あの人は主体性がない」
「あの人は考えが浅い」
「あの人は営業に向いていない」
「あの人はリーダータイプではない」
と、ラベルを貼ってしまいます。
もちろん、そう見える場面はあります。
ただ、本当に能力がないのか。
それとも、仕事との相性が悪いだけなのか。
期待されている役割が曖昧なのか。
強みが発揮される仕事に出会えていないのか。
ここを見ないまま「使えない」と決めてしまうのは、少しもったいない。
いや、かなりもったいない。
昔、私がはじめて顧客向けのプレゼンを任されたときのことです。
自治体向けの入札案件でした。
会議室には6人くらいの方が座っていました。
気合いを入れて話し始めたのですが、開始5分ほどで、半分くらいの方が眠り始めました。
なかなかの光景です。
こちらは人生をかけたプレゼンのつもりなのに、相手は夢の世界へ旅立っていく。
「自分はプレゼンに向いていないのではないか」
そう思いました。
でも、今は研修講師を仕事にしています。
不思議なものです。
たぶん私は、かっこよく一方的に話すプレゼンは得意ではなかったのだと思います。
でも、相手の反応を見ながら、問いを投げ、場をつくり、学びを面白くすることには向いていた。
同じ「人前で話す」でも、仕事の中身が少し違えば、まったく違う力になるのです。
💡ちょこっと理論紹介💡
🧩 パーソン・ジョブ・フィット
パーソン・ジョブ・フィットとは、人と仕事の相性のことです。
人の能力や性格が、その仕事で求められる内容とうまく合っていると、成果も出やすく、やりがいも感じやすくなります。
逆に、本人に力がないわけではなくても、仕事との相性が悪いと、本来の強みが見えにくくなります。
「この人はできない」と決める前に、「この人とこの仕事は合っているのか」と考えてみる。
藤堂高虎の「人に屑なきなり」という言葉は、現代で言えば、パーソン・ジョブ・フィットに近い発想なのかもしれません。
⚽ 勝つチームは、配置を変えられる
この話は、スポーツでもよくあります。
たとえばサッカーでは、あるポジションで伸び悩んでいた選手が、別のポジションに移った瞬間、一気に輝くことがあります。
フォワードでは点が取れなかった選手が、サイドバックで走力を活かす。
トップ下では迷っていた選手が、ボランチで視野の広さを発揮する。
控えだった選手が、役割を限定されたことでチームに欠かせない存在になる。
子どもたちのサッカーを見ていても、これは本当によく感じます。
「この子、急にうまくなったな」と思うときがあります。
でも、よく見ると、急に能力が増えたというより、役割と本人の相性が合い始めたのかもしれません。
人は、努力だけで変わるのではありません。
仕事や役割との相性で変わるのです。
これは職場も同じです。
部下が伸びないとき、本人の努力不足だけを責めるのではなく、
⚽ ポジションは合っているか
🧭 期待役割は明確か
🤝 支援者はいるか
🎯 成果の基準は見えているか
🔁 振り返りの機会はあるか
を見直してみる。
それだけで、チームの空気が少し変わります。
🕯 ただし、やりすぎる人でもあった
ここまで書くと、藤堂高虎がとても理想的な人物に見えてきます。
変化に強い。
人を活かす。
仕組みをつくる。
恩を忘れない。
なんだか、完璧なリーダーのようです。
でも、そこが歴史の面白いところです。
高虎には、やりすぎてしまう面もありました。
大坂の陣では、徳川方として戦い、大きな犠牲を出します。
外様大名として徳川家に信頼されたい。
自分の存在価値を示したい。
ここで結果を出さなければならない。
そうした思いが強すぎると、人は踏み込みすぎます。
これは現代の仕事でもあります。
営業で、なんとか受注したくて無理な値引きをする。
管理職が、部下に任せればいいのに全部自分で抱える。
若手が、できないことを「できます」と言ってしまう。
経営者が、引くべき事業から引けなくなる。
責任感は大切です。
でも、責任感が強すぎると、ときに判断を曇らせます。
覚悟と突撃は違う。
ここも、高虎から学べる大事な教訓です。
🎨 強みは、素材ではなく相性で立ち上がる
芸術で言えば、これは絵の具のようなものかもしれません。
青い絵の具は、単独で見ればただの青です。
でも、隣に黄色が来るのか、黒が来るのか、白が来るのかで、まったく印象が変わる。
人も同じです。
おとなしい人が、会議では目立たなくても、資料づくりでは抜群の整理力を発揮する。
細かい人が、雑談では面倒に見えても、品質管理では頼れる存在になる。
勢いのある人が、単独営業では空回りしても、新規開拓の突破口では力を発揮する。
強みは、その人の中に固定されているものではありません。
仕事や役割との相性の中で立ち上がるものです。
藤堂高虎がすごかったのは、自分自身の強みも、人の強みも、固定的に見なかったことではないでしょうか。
戦う場所が変われば、価値の出し方も変わる。
人の役割が変われば、見える能力も変わる。
城のつくり方が変われば、町の未来も変わる。
そう考えると、高虎は単なる築城名人ではありません。
人が活きる構造をつくった人だったのです。
🧭 私たちの「城」はどこにあるのか
30代、40代になると、キャリアの悩みは少し複雑になります。
若いころのように、ただ頑張ればいいわけではない。
経験があるからこそ、変わるのが怖い。
家族もいる。
責任もある。
今さら方向転換していいのか、と考える。
でも、高虎の人生を見ると、少し勇気が出ます。
変わることは、逃げることではない。
居場所を変えることもある。
役割を変えることもある。
価値の出し方を変えることもある。
大事なのは、変わらないことではありません。
変わりながら、何を積み上げるかです。
そしてリーダーとしては、もう一つ。
人を変えようとする前に、仕事との相性を見てみる。
叱る前に、役割の渡し方を変えてみる。
諦める前に、強みが出る仕事を探してみる。
それだけで、目の前の人の見え方が少し変わるかもしれません。
藤堂高虎は、何度も城を替えました。
でも本当に替えていたのは、城ではなく、自分の価値の出し方だった。
そして、彼がつくったのは、石垣だけではなく、人が活きる構造だった。
私たちも、自分の城を守るだけでなく、そろそろ新しい城のつくり方を考えてもいいのかもしれません。
あなたの職場で、まだ仕事との相性が合っていない人は誰でしょうか。
そして、あなた自身の中で、まだ置き場所を見つけられていない強みは何でしょうか。
よければ、コメントで教えてください。
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